第56話 観光問題解決?



「おお、お戻りになりましたか」



 ターセン達の所へ戻った。


 あれからミスティとはほとんど会話は無かった。


 というか何を話せばいいのか分からない。



 ミスティを信じるとは言ったものの、うやむやなままだ。


 ミスティが俺を嫌いではないというのは分かった。


 だがそれでどうして目を合わせないのかは分からない。


 頭を捻ってもしかして何か呪いでもかかっているのかと考えたが、たまに目が合っているしそれは無いだろう。



 それ以外にもいくつか理由を思いついては矛盾に行きつき潰えていく。


 結局の所、ミスティの本音が分からない以上。これまでの様に遠すぎず近すぎずの距離感でいるしかない。


 なんか、喉の奥に小骨が刺さっているようなスッキリのしなさだが、こういうので焦ってもろくなことにならなそうなので、そのままにしておく。



 日本にいた時に恋愛漫画とかでどうしてもっと白黒はっきりしないんだと漫画の中のキャラにキレていたが、実際自分がそのキャラクターになってみたら踏み込めないよな。



「ん、どうかしましたか? お二人の表情が」


「いや、何でも無いよ。ねえ?」


「はい、何でもありません」


「……そうですか」



 ターセンが俺とミスティを交互に見つつ、口を閉じた。


 何かあったっぽいと気づいていながらもあえて触れない大人で助かる。



「それより今はどうなってる?」



 見れば人数が半分位減っているが、どこかへ行ったのだろうか。



「そうでした。元気な者達は小隊長二人に率いさせ調査に行かせました。また主のようなモンスターに襲われても困りますから」



 見れば怪我をしていたテッド等は手当後ここに待機していた。



「大丈夫?」


「はい、問題ありません!」



 テッドは元気に言うけど巻かれた包帯から血がにじんできてるの見えたけど本当に大丈夫なんだろうか。



「それにしてもミスティ様の魔術は凄かったですね」


「いえいえ、大したことじゃないですよ。役に立って良かったです」



 謙遜しているがあんなに暴れているでかいモンスターを止めたのは凄いと思う。


 闇魔術じゃああいうの出来ないからなおさらだ。


 ……あれ、もしかして剣の届かない長距離で戦ったら俺ミスティに完封されるのでは?


 いや、絶対戦わないけどね。だから負けることは無いよ……うん。


 でももうちょっと俺も今まで以上に鍛錬頑張っていこうかな。


 現状に満足しないでね。



「ターセン隊長補佐」


「ん」



 早速兵士が走ってきた。



「モンスターはおりませんでしたが、ちょっと……とにかくすぐに来てください」



 森の奥へ進んでいくと異臭がした。


 更に進むと途端に森の木々が少なくなり、開けた場所に着いた。


 森の奥にある山が見えたが、所々黄色くなっていていくつか生えている木々が枯れているように見える。



「ふん。ジーク様達も来ましたか」


「むう、面妖な……一体どうしたことだ」



 デブトとガリムが唸っていた。


 彼らの目の前には広く浅い穴とそこからは煙が出ている。


 兵士達はわらわらとその周囲に集まり、ああでもないこうでもないと議論している。



「何でしょうあれ」



 ミスティが後ろで聞いてくるが、俺は何となく分かりつつも一応ターセンに尋ねた。



「ターセン」


「何でしょうか?」


「この辺って火山とかってあるの?」


「火山ですか? いえ……ですがあの目の前の山は太古の時代に火を噴いていたという話は聞いた事がありますね」



「ふん。それに関しては俺も知っています、確か火の神様が住んでいると子供の頃に聞かされました」


「む? 火の妖精じゃなかったか?」


「ぼ、僕は美しい火の女神さまと」


「何で全員言ってる事違うんだよ」


「あの……私も火の化身がいると父様から……」



 ミスティまで手を挙げた。


 皆真剣な顔をしているしボケてるわけじゃなさそうだ。


 ともかく、俺は周囲の確認をしてからその煙の元へ近づく。



「ジーク様、危ないですよ!?」


「大丈夫」



 煙の下、お湯に気を付けながら手を入れてみる。


 沸騰していなかったから大丈夫だろうと思っていたが、やはり火傷する程は熱くない。


 異臭に関しても硫黄の臭いだ。



「ターセン」


「何か分かりましたか?」


「うん、だからすぐに戻ろうか。報告しなければならない」



☆☆☆



「温泉か」



 王宮に戻った俺は、早速仕事モードの父様と相対していた。



「確か文献によると私達の国は、観光という面で弱かったと記憶しています。ここに建物を作り、国がしっかり管理する事で訪問者が更に増えるのではないでしょうか?」


「ふむ、確かに温泉が湧いたのは朗報だ。近隣だけでなく遠い国からも旅人が訪れるようになるだろう。すぐに大臣を呼んで予算を捻出させよう。よくやった」


「はい、ありがとうございます」


「…………」



 父様は机の上で両手を組み、睨むような表情で俺をまっすぐに見てくる。


 仕事モードの父様は、はっきり言って相当怖い。


 普段と違って冗談とか一切効かないのだ。



「ところで、聞いたぞ。騎士団だけでなくクラウディア家の令嬢も連れて行ったそうだな」



 ん? 何だろうこの問いは。危険だろうっていうお叱りかな。



「連れて行ったというか付いて来たというか……一応その、もし何かあっても私が守るつもりでしたので」



 結果的には俺が守られた形になったけど、その辺は黙っておこう。



「…………」



 無言が怖いよ。何か言ってくれないと俺分からないよ。



「えっと……何かありましたか?」



 父様が立ち上がり、手を後ろ手にしながら窓の方へ歩き出す。



「数日以内にお前の停学は終わる予定だ、学校の準備をしろ」



 え、早くない? 急だな。



「わ、分かりました。準備いたします」



 返事をすると父様は一度頷いただけでそれ以降は窓の外を眺めている。


 もう話す事は終わりって事かな。


 俺は立ち上がり、一礼する。



「では失礼します」

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