8月16日の食事
夏に食べたいものは沢山ある。多くありすぎて選ぶのが惜しいほどだ。
強いて上げるなら、かき氷やアイスクリームやゼリーなどの、ひんやりとして冷たい甘いものだろうか。
縁日で食べるかき氷の、シャリシャリとした触感と爽やかなシロップの風味。
汗だくで疲労が溜まっている中で味わう、冷たくて濃厚なアイスクリーム。
冷えた部屋で食す、つるんとして具だくさんのゼリー。
どれも良きものだ。どの季節でも美味いが、夏だと特に格別である。
私が今食べているのはプリンの容器みたいなのに入ったティラミスとヤクルトである。さっきまで書いていたものは何だったのだ?絶対どれか食べる展開だろうに、選ばれたのはティラミスとヤクルトである。
甘いものは好きだが量は食べられない私としては小さめのティラミスは最適なデザートだ。すっきりとした甘さとほろ苦さは黄金律だと思う。ヤクルトは酸味のある甘さで、ついつい手に取って飲んでしまう。少量であることも手軽さを助長させている。つまり美味である。
本題に入ろう。
夏に食べたいもの、すなわち夏野菜である。トマト、ナス、キュウリ、ピーマン、他。夏野菜を食べると体が内側から適度に冷え、なんかいいらしい。栄養もたっぷりで、特にトマトを用いた料理はあっさりして食べやすいこと間違いなしだ。
今日の夕飯はナスとピーマンの炒め物を考えていたが、トマトが参戦したことで全く違うものが出来上がった。
鶏むね肉を一口大に切ってフォークで滅多刺しにする。「柔らかくなれこの野郎」と軽く殺意を込めると力が入って柔らかくなる。そして適量の料理酒で揉む。「揉んで♪揉んで♪」というネットミームを思い出しながら揉むと楽しくなる。
色々とした肉をフライパンで油とにんにくで炒めると香ばしい匂いがしてくる。食欲をそそる匂いは夏の食欲減退の時期には特に重要なのだ。
トマトは8つあった。4つを切って入れた時点で嫌な予感がした。路線変更の瞬間である。肉をトマトで煮ている間にナスとピーマンと玉ねぎを切って入れ、その時点で大量の汁気が出ていた。
「あーいつもの展開だよ」と思いつつ煮込んだものをかき回しながら洋風に味付けすれば「夏野菜のトマト煮込み」の完成だ。油断すると私はトマト煮込んだものができあがる。致命的欠点だ。トマトを使わなければいい話だ。
その出来上がったものは味は良かったらしく、家族には好評だった。特に普段無口な姉が「美味かったよ」と言ったのは驚きだった。
姉は、歳は近いが家族の中で一番遠い存在だ。価値観や生き方が全く違う。そして年子だったからこそ、姉は姉であろうとして私に厳しくしていたのだ。だから私は正直姉のことが苦手である。無口であるのは気まずく、だが何を話したらよいのか分からない、気まずい存在なのだ。
故にだ。近いようで遠い姉に褒められると私は嬉しいのだ。少しだけ距離が縮まった気がするから。
昼ごはんを食べずらそうにしていた姉が、夕飯の私の料理をおかわりして食べていた。姉としてはなんてことないことだろう。
私がどれほど嬉しく思っているかなんて、私だけが知っていればいい。
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