第36話

それにしても思った以上に梨紗には嫌悪感を感じたな。それだか梨紗は俺にとっては終わった人なんだろう。恋愛を今後できるか分からないくらいのダメージを受けたくらいだしな。これが癒される日が来るかは分からない。俺は今まで梨紗が全てだった。梨紗が女優になりたいと言ったから、小説も書き始めた。梨紗が高級ブランドのものがほしいというから、早めに売れてやると色んな本を読み構想を固めて、売れる小説を書いた。


「だがそれも結局意味のないものになったんだよなぁー」


俺はそう本千葉までの道のりでそう呟いた。


「それなら今度は私を女優にするつもりで、書いてみない?」


その声で俺は後ろを振り向くと、るなもが目を細めた笑顔を浮かべて、バックを後ろに持って、膝をおって、上目遣いのような感じで、俺を見ていた。そんな仕草アニメでしかみたことないんだが。萌えすぎた。


「るなもか、書く理由もなくなったし、それもいいかもな。そうすればモチベーションを保てる」


それにるなもへの恩返しにもなるはずだ。それなら実写化を本気で目指してみるのもありか。俺は再び小説でさらに売れることのモチベーションができた。


「んふふ頑張ってね。透先輩ならきっともっと言い小説が書けるよ。私は定期的に透先輩の書いた小説を読んでるけど、まだまだ成長しそうな感じがするしね。今の段階でも面白いんだけど」


まさか俺の小説を読んでいるとは思わなかった。梨紗ですら、ラノベだから読まないみたいな感じだったからな。リア充であるるなもがラノベを読むのは予想外だった。


「ラノベも読むんだな」


「私だって大事な先輩がプロの作家やっているなら、その作品を読んだりはするよ」


オタクに偏見を持たなかったり、ほんといいアイドルだ。アイドルとしてこれだけ応援できることはゆいぽんとるなもくらいだろう。ゆいぽんはアイドルとしてのプロ意識が高いからな。恋人の影もない。


「そうか、それじゃこれからも頼むわ」


そんなことを話していると、本千葉駅に着いた。俺達は電車に乗り、千葉駅に向かう。たしか孝哉が言っていたが、流鉄はアニメの声が流れるらしい。羨ましい限りだ。千葉駅はJRででかい会社だから、流鉄みたいに私鉄じゃないから、流れることはない。そんなことをしなくても乗客はたくさんいるしな。


「あ、そうだ。ちょうど透先輩の書いた本を持ってきてるから、サイン書いてよ」


まさか有名なアイドルに自分のサインを書く日が来ようとは。俺はサインをお渡し会とかあったりしたのですらすらと書いた。


「もっと私だけのサインを書いてほしい」


るなもだけか、それならと思い、いつもありがとなるなもは俺にとって大切な後輩だと書いた。るなもはそれを見て嬉しそうな笑顔を浮かべた。これであっていたようだ。


「これ大事にするね。家宝レベルだよ」


俺のサインにそこまでの価値はないと思うが。まぁ本人が大切にすると言うなら、それを言っても仕方ないだろう。るなもは大事そうに本をしまうと、俺の手をニギニギしてきた。不思議と嫌悪感は感じなかったが、いきなりこんなことをされて驚いた。


「なにやってるんだるなも?」


「お礼に手を握ってるんだよ。ほら今握手会とかないでしょ。だから特別感を出すために、やっているの」


アイドルの握手会がなくなったのは確かにショックだったし、こうやって美少女と手を握る機会はなくなった。だからるなもに手を握られるのは嫌悪感を感じず、嬉しさがでてきた。信用している証だろう。まぁこんなんで好きになったりはしないが。むしろあんなことがあったのに、これで好きになっていたら、ちょろすぎだろう。


「そうか、久しぶりにアイドルと握手できて、嬉しいぞ」


「ふふそれならよかった」


るなもは手を握りながら、目を細めた微笑みを俺に向けた。可愛すぎる。るなものファンでよかったわ。ファンなのにリアルでも交流あるとか、他のファンに刺されそうだが。


それから電車を降りるまで、手をニギニギして、千葉駅に着くと、俺達は手を離して、家に向かい歩き出した。


「そういえば、るなものお兄さんには感謝したいんだが。暴力を振るわれそうなところを助けてくれたんだよ」


「あ、それ聞いたよ。お兄ちゃんがやっと恩を返せたと言っていたよ」


俺はあくまで女子の嫌がらせを止めただけで、いじめを止めた訳じゃないんだがな。まぁいじめの一歩手前ではあったが。一軍であるトップの女子の援交の証拠を撮って、それで脅しただけなんだが。まぁ結局なにかをしてくる可能性もあったから、それを学校に提出して、転校をさせたが。


「そこまでのことはやってないがな」


「私にとってはあのとき透先輩は救世主で、王子様だったんだよ。アイドルをやるとなったのも透先輩がアイドルが好きだったからだし。輝きたいっていうのもあったけど」


それでアイドルになったのか、それなら俺がるなものアイドルをやる理由になれたってことか、嬉しい限りだな。


「そうか、るなもだから心配入らないと思うが、不祥事だけは起こすなよ。るなもが輝いている姿を俺はまだまだ見たいからな」 


するとるなもはうんと言うと笑顔を見せた。やっぱりるなもは可愛いな。アイドルになるべくしてなったやつだろう。るなもならトップアイドルを目指せる。そう思っていると、るなもの家に着いた。


「それじゃ今度は来週だな。じゃあな」


「うん、じゃあね」


俺達はここで分かれた。それじゃ家に帰るか。るなもを見送った後、俺は自分の家に向かって歩き出した。














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