6月15日 木村家
――ああ、先生……今日はありがとうございます。
すみません、あの子の父親は、まだ受け止めきれていないようで。そんなばかな、そんなばかなとばかり言って何もできないので、家に置いてきたのですよ。そりゃわたしだって信じられないですよ……受け入れられないですよ。母親ですもの。だけど誰かがやらなくちゃ、葬式の手配も、ごあいさつも。
脳出血だなんて、信じられないと思いません?まだ11歳の子どもなのに。
ええ、けれど、お医者様が言うにはね、血管のかたまりとか奇形?というものが、生まれつきある子もいるんですって。あとは血管の
それを聞いて素人ながらに思ったんですけど、お医者様は関係ないとおっしゃっていたけれど、あの子柔道習っていたでしょう?気づかないうちに頭の中に血が出ていたとか、そういうことはないかしら。わたしはそれだけが心残りで……あの子がやりたがって始めた柔道だったけれど。
けれどね、それもこれも憶測で。なにしろあまりに脳が血だらけでパンパンに腫れてしまって、詳しいことはわからなかったのだそうです。
せっかく、本当はいやだったけれど泣く泣く、あの子の頭を開けて、解剖してもらったのに、わからないなんて……けれど、解剖せずに後から後悔するよりはいいのかしら。わからないですね、正解なんて。
先生、あの子は、学校では、どんな子でした?
……そう、そう。給食が大好きでね。
ケンカらしいケンカもしないし、優しい子でした。買い物に行くと、いつも袋を持ってくれて……ああ、これから、買い物に行くたびにわたし、あの子のことを探すんだわ。
……ねえ、先生。
あの子、なにか、だれかにひどいこととか……していませんよね?
いえ……あの、先日、小林
あの頃から、夜中に泣いて起きては、ごめんなさい、ごめんなさいと言うことがたびたびあったんです。どうしたの、と聞いても話してくれないんですけど。お友達があんな風に突然亡くなったから、不安定になってるのかなって思ってたんですけど……
けれど、何かにおびえているような感じが、わたしずっと、気になっていたんです。
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