4月10日 大友誠司による独白

 今日は委員会決めだった。推薦で満場一致で塚本いつきと栗原陽奈はるなが学級委員に決まった。そこからは全部塚本が仕切ってくれた。途中、希望が通らなかった丸山みどりが文句を言ったが、塚本がうまくたしなめたらすぐ大人しくなってくれて助かった。

 丸山はスイって自分のことを言ってるし、仲良いやつもスイって呼ぶんだな。本当はミドリのはずなんだが、本人なりになにかこだわりがあるのかもしれない。まあ翡翠ひすいの翠をミドリと読むのが流行はやったのは俺ら世代で、最近だとスイ読みが流行ってるらしいから、本人も流行りに乗りたいのかもしれない。

 丸山、あれ絶対髪、染めてると思うんだよな……昨日ちょっと聞いたらはぐらかされたけど。うーん、でもまあ地毛だと言い張られたらそう見えなくもないレベルだし、初めまして早々で生徒と揉めるのも避けたいしな……丸山は友人関係が広いようだし、他の生徒巻き込んで攻撃されたらかなわない。

 去年の大林先生は大変だったらしいからな。

 とりあえず今は様子見かな、と思う。おれも今度休み時間にでもスイさんって呼んでみるか……いや、まだキモイか?


 それにしても秋本は、ウワサには聞いていたが困った生徒だった。開始三日目にしてなんか、大体わかってしまった。

 まず、開始早々他の生徒を押しのけるようにして黒板まで行き、生活委員のところに名前を書いた。名前書きは早いもん勝ちでもないしそもそも自分から生活委員を第一希望とするやつも珍しいんだから、焦ることないのだが。なんか、自己アピールしたいのかなとか、穿うがった味方をしてしまう。ジャンケンで負け続けて生活委員にならざるを得なかった丸山が目の前で「秋本さんと一緒はいやなんですけどー」とか言い出した時はヒヤッとしたが、当の本人は気にしてませんみたいな顔でツンとそっぽを向いていた。まあ、生活委員は三人だから大丈夫か……三人目の山中泰誠たいせいって子のことはまだあまりわからないが、特に問題も聞かないし。誠って字が名前に入ってるってだけでなんか、勝手に親近感わくな。

 気になっていた支援級利用の戸田結香も、あっさり図書委員に落ち着いた。図書委員のメンバーは他には大人しめの山田心結みゆとゲームオタクの森村りょうだから、まあ多分、あからさまに邪険にされたりはしないだろう。図書委員は去年もこのメンツだったらしい。戸田はたくさん字を書くのは大変だろうが、図書だよりを作る時には参加できていたのだろうか?山田も森村も積極的に他人の世話を焼くタイプでもなさそうというか、自分の世界に入りこんでいくタイプのようだから、戸田が置いて行かれてないかだけ、時々様子を見ておこう。

 その他は……そんなに印象に残ることはなかったかな。

 とにかく塚本がいてくれて、本当に助かった。思ったより前期は安泰かもしれない。

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