第37話:「断る」俺の力は、俺と俺の大事な女の子たちのために使う

ライブラから語られた、壮大すぎる俺の使命。


宇宙の調和を守るための、生体インターフェース。その言葉の響きは、聞こえはいいが、要するに、この聖域に縛り付けられ、宇宙のメンテナンス係として一生を終えろ、と言っているのと同じだ。


冗談じゃない。


俺が過労死してまで手に入れたこのセカンドライフを、そんな馬鹿げた理由で、再び誰かのための社畜として捧げてたまるか。


俺は、ゆっくりと立ち上がった。


心配そうに俺を見つめるアステラ、リーベ、オリビア、そしてカリスタ。彼女たちの顔を一人一人、順番に目に焼き付ける。


そうだ。俺がこの世界で手に入れたものは、チート能力だけじゃない。この、かけがえのない仲間たちだ。


俺は、静かに佇むライブラに向き直り、はっきりと、そしてきっぱりと告げた。


「断る」


その一言は、神聖な静寂に包まれた大聖堂に、場違いなほど乾いた音で響き渡った。


仲間たちが、息を呑むのがわかった。


ライブラの感情のない瞳が、初めて、わずかに揺らぐ。


『……聞き間違いでしょうか、勇者。貴方は今、自らの使命を、拒否すると?』

「ああ、そうだ。拒否する。却下きゃっかだ。そんなクソみたいな業務内容、誰が引き受けるか」


俺は、前世で何度も口にした、プロジェクトの無理な要求を突っぱねる時と、全く同じ口調で言い放った。


「宇宙の調和? 星の民の計画? 知ったことか。俺がこの力を使うのは、ただ一つ。俺と、俺の大事な仲間たちが、毎日楽しく、面白おかしく、そして何より楽をして暮らすためだ。その目的を達成するためなら、どんなことでもしてやる。だが、それ以外の理由で、俺の貴重なリソースを割くつもりは、一切ない」


俺のあまりにも自分勝手な宣言に、仲間たちは呆気に取られている。


だが、俺は構わずに続けた。


「勘違いするなよ、ライブラ。俺は、お前たちの計画に乗ってやるつもりはない。俺の計画に、お前たちを利用させてもらうだけだ」


俺は、不敵な笑みを浮かべて、この聖域の管理AIに、堂々と交渉を持ちかける。


「結果的に、俺たちの行動が宇宙を救うことになるなら、まあ、協力してやらんこともない。だが、それはあくまで、俺たちのスローライフのついでだ。俺は勇者じゃない。俺は、俺の仲間を率いる、ただの冒険者だ。そこのところ、よく覚えておけ」


押し付けられた運命など、クソくらえだ。


俺の人生の主導権しゅどうけんは、この俺が握る。


もう二度と、誰かの決めたスケジュールや、理不尽な仕様変更に、俺の魂をすり減らされてたまるか。社畜として死んだ俺が、異世界でまで、誰かの都合のいい駒になってたまるか。


俺は、自分のエゴを、欲望を、何一つ隠すことなく、この宇宙の中心で、高らかに宣言した。


その瞬間、俺の魂は、真の意味で、誰からも自由になったのだ。


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