第36話【わたし視点】みんな、どうしたの?
最近、なんだか街の空気がへんてこだ。
翼さんの背中に乗ってお空をお散歩していると、下のひとたちが、前みたいに手を振ってくれなくなった気がする。
みんな、わたしたちのことを見つけると、ひそひそ何かを話して、おうちの中に隠れちゃう。
どうしてだろう? わたし、何か悪いことしちゃったかな?
気になったわたしは、ビー玉さんに「あっちに行きたい!」ってアピールして、いつものごちゃごちゃした街に降りてもらった。
でも、街の様子も、いつもと違った。
あんなにたくさんいた子供たちの姿が見えない。大人たちも、わたしを見ると、なんだかすごく怖いものを見るみたいな目で、遠巻きに見てるだけ。
前は、わたしが来ると駆け寄ってきてくれたのに。
なんだか、すごく寂しい。
しょんぼりしながら、わたしが広場の隅っこで丸まっていると、茂みの影から、小さな女の子が、おそるおそる顔を出した。
あ、この子は、いつもわたしの体をびよーんって伸ばして、縄跳びをして遊んでくれる子だ!
わたしが、ぷるん、と体を揺らして挨拶すると、女の子は、周りをきょろきょろ確認しながら、わたしのところに駆け寄ってきた。
そして、小さな声で、何かを一生懸命話しかけてくれる。わたしにはわからないけど、すごく心配そうな、悲しそうな音がした。
その時、近くのおうちの扉がぎいって開いて、女の子のお母さんらしいひとが、すごく慌てた顔で飛び出してきた。
そして、女の子の手をぐいって引っ張って、わたしから引き離そうとする。
女の子は嫌がって、泣き出しちゃった。
お母さんは、わたしに向かって、すごく怖い顔で何かを叫ぶと、女の子を無理やりおうちに連れて帰ってしまった。
ばたん、と閉められた扉を見つめながら、わたしは、胸のあたりが、きゅーって、すごく痛くなった。
わたし、みんなに嫌われちゃったのかな……。
すごく痛くて、すごく悲しい。
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