第31話【わたし視点】ぴかぴかのおうちと、おそらのさんぽ

おおきなしろひげさんが、すごく大事なことを決めたみたいで、わたしたちはお引越しすることになった。

今度のおうちは、きんぴかさんのおうちみたいに豪華じゃないけど、すごく静かで、空気がぴーんとしてて、なんだか背筋が伸びる感じがする場所だった。壁も床も柱も、全部真っ白な石でできてて、ぴかぴかだ!


ここでの生活は、きんぴかさんのおうちより楽しいかもしれない!

ふかふかのクッションの山はないけど、翼さんとのお空のお散歩は、今でもできる!

前みたいにごちゃごちゃした街にも行けるし、たくさんのひとが手を振ってくれる。白い服を着たひとたちが遠くから見てるけど、前よりずっと自由だ! やっぱりお空は最高に気持ちいい!


お散歩以外の時間は、しかくさん(審問会にいた、眉間に皺が寄ってるひと)が、毎日わたしのところにやってくるようになった。

しかくさんは、すごく分厚い本を開いて、真面目な顔で、ずーっと何かをぶつぶつ言っている。わたしにはさっぱりわからないけど、なんだかすごく大事なことを教えてくれているみたい。

でも、ずーっと同じ場所にいるのは、つまんない!

わたしが、ぷるぷる体を揺らしたり、ころころ転がったりしてると、しかくさんは、はあーって、ためいきさんみたいな音を出した。ごめんね、しかくさん。わたし、じっとしてるの苦手なんだ。


ビー玉さんは、前よりももっと難しい顔をするようになった。

お部屋の窓から、遠くのお城をじーっと見つめていることが多くなった。なんだか、すごく心配そうな、寂しそうな匂いがする。

わたしが、彼女の足元にころころ寄っていくと、はっとした顔でわたしを抱き上げて、ぎゅーってしてくれる。

大丈夫だよ、ビー玉さん。わたしがいるよ!


ある日、わたしはまた、ぼうけんに出かけることにした。

このぴかぴかのおうちも、探検したら面白いものが見つかるかもしれない!

ビー玉さんがお勉強に夢中になっている隙に、そろーっとお部屋を抜け出す。

ひんやりした廊下をころころ転がっていくと、下へと続く、暗い階段を見つけた。


くんくん、くんくん。

階段の下の方から、すごく、すごく、からそうな匂いがする!

今まで食べた、どんなものよりも、もっと凝縮されたような、ぴりぴりした匂い!

これは、極上のご馳走に違いない!

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