第5話【わたし視点】ビー玉さんのおうち
ビー玉さんは、泣くのをやめると、わたしを宝物みたいにそーっと、両手で抱き上げてくれた。
あったかい。
なんだか、すごく懐かしい温かさだ。前のわたしは、誰かにこんな風に抱きしめてもらったことがあったっけ……?
うーん、思い出せないや。
でも、すごく気持ちいいことだけはわかる!
わたしは嬉しくなって、彼女の手の中でぷるぷると震えた。ビー玉さんは、そんなわたしを見て、また少しだけ涙を浮かべながら、ふわりと優しく笑った。
わあ、笑った顔は、もっとキラキラしてて、太陽みたいだ!
黒騎士さんは、さっきまでの痛そうな顔が嘘みたいに元気になって、わたしをじーっと見つめている。ちょっと怖い顔だけど、嫌な感じはしない。むしろ、守ってあげなきゃ!って思ってくれているような、真面目な匂いがした。
しばらくしたら、鎧を着た人たちが合流してきて、全部で11人になった。それからビー玉さんたちは一緒に歩き出した。わたしはビー玉さんの腕の中!
翼さんは、わたしの近くを飛んだり歩いたりして、ずっとついてきてくれる。大きな体だけど、すごく頼もしいボディーガードだ!
森を出て、村に着いたらみんな馬に乗った。私はここでもビー玉さんと一緒。
それからしばらく馬を走らせたら、古いけど大きい建物が見えてきた。これが、ビー玉さんのおうちみたい。
でも、なんだか、ちょっと寂しい感じがする。お庭のお花は元気がないし、壁も少しだけひび割れている。
中に入ると、ビー玉さんのお兄さんらしいひとと、お母さんらしいひとが出てきた。
お兄さんは、背が高くて細くて、なんだかずっとため息をついてるみたいだから『ためいきさん』だ。
お母さんは、ベッドから出てきたみたいで、顔がしょんぼりしてるから『しょんぼりさん』にしよう。
ためいきさんもしょんぼりさんも、わたしと翼さんを見て、腰を抜かさんばかりに驚いていた。ビー玉さんが一生懸命何かを説明すると、二人は恐る恐る、わたしに近づいてきた。
わたしは、しょんぼりさんの元気がなさそうなのが気になった。
だから、ころころと彼女の足元まで転がっていくと、その手にぴょんっと飛び乗ってあげた。
そして、わたしの体の中から湧き出てくる、キラキラしたあったかい力を、少しだけ分けてあげる。
すると、しょんぼりさんの顔に、ほんの少しだけ、ぱあっと明るい色が戻った気がした。
しょんぼりさんは、ぽろぽろと涙をこぼしながら、わたしのぷるぷるの体を、何度も何度も優しく撫でてくれた。
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