壊れてゆく

 箱に人形が一体

 人形は一体きりの箱の中で一体何を思うか

 誰の預かり知るところでもなく

 人形さえ知り得ない

 人形には今や情緒などはない

 だが人形にも感じることはあり

 人形にも心があった

 人の形を取った小琴が

 箱の中で空気を震わせる

 伝わる音は澄んだ水のよう


 いつしか箱はビリビリに破け

 今にも壊れ去りそうなほどである

 箱を壊す誰かは楽しげに事もなさげに

 ただ接近してくるだけなのに

 箱は絶えず自壊してゆく

 人形がまた音を奏でた

 

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