第3話:異世界で再会した君は美人だった

 白い眩い光の中、転送が終わると…そこは…


 ただの森だった…


「チキショウ、あの神、騙しやがったな!美女なんていやしねえじゃねぇか!」


 柔らかな木漏れ日が、俺の顔を照らしている。だが、森の木々の間から見える空の色がどこか違う。青というより、淡い紫が混じっているような……。 鳥の鳴き声も、聞いたことのないリズムだ。


 どうやら無事に転生はできたらしい。


 自分の手足を確認する。うん、ちゃんと元の身体だ。 ……だが、隣にいるはずの“美女”がいない。


「おーい、ファカ!どこ行ったー!?」


 返事はない。


『まさか、俺だけ転生したとか言わないよな!?』


 とにかく、じっとしてても仕方がないので、しばらく歩いてみることにした。植物も生き物もやはり俺がいた世界のものとは違っている。


 遠くに人影


『助かった。とにかく近くの町まで案内してもらおう』


 が、いたのは盗賊といった風貌の三人組。


『よかったぁ、いきなり声かけなくて』


 ここは見つからないようこっそり逃げるのが正解だな……と、思ったのも束の間。


 ん?美女と一緒?

 いや、違う、襲われているんだ!


 クリムゾンレッドの髪に山吹色の瞳の女性。

『もしかして、あいつがファカか!?』


「よし、助けるか!」


(って、俺が出ていってどうなるというんだ。相手は三人。しかも武器まで持っている。殺されるだけじゃないか…って次死んだらどうなるんだ俺?)


 悠長な事を考えている間にも事態は悪化していく。


「へっ、いいカモだな。奴隷にすりゃ高く売れるぜ」

「その前に楽しませてもらうがな」


 野卑な笑みを浮かべる山賊たちに、山吹色の瞳が冷たく光る。

「はぁ……脳みそ、干物にでもされたのかしら? その醜悪な欲望にまみれた思考回路を、毒まみれにして差し上げますわ」


「なんだ、この女。いたぶってひん剥いてやれ!」


 次の瞬間、ファカの姿が残像になって消えた。信じられない速度で山賊の懐に飛び込むと、ファカの拳が白く輝き、皮膚の下から紫色のトゲがメリケンサックのようにせり出す。


「棘手・麻痺拳(パラライズフィスト)!」


『ガッ!』鈍い音と共に、拳が山賊の顎を打ち抜いた。


 紫色の霧がトゲの先端からふわりと広がり、山賊は「う…あれ…足が…」と力なく膝をつく。全身が小刻みに痙攣し、そのままピタリと動かなくなった。


「な、なんだこいつ!?」


 残る二人が恐怖に後ずさる。


 斧を構えた山賊に向け、ファカが低く構える。その腕から、バラのトゲを思わせる紫黒のツルが、シュルル…と音を立てて伸びた。


「棘手・薔薇縛り(ローズバインド)」


 ツルは鋭いトゲをきらめかせながら蛇のようにうねり、山賊の首へ一気に巻き付く。「ぐっ…!」と苦しむ山賊の顔を、ファカが冷たい瞳で見据える。


 次の瞬間――ツルの節々から淡い紫色の毒霧が「ぶほっ」と噴き出し、山賊の顔を包み込んだ。毒が肌と粘膜に染み込み、山賊は目を見開いたまま力なく膝をつく。


 首を絡め取ったツルがするりとほどけると、彼は滑り落ちるように地面へ崩れ落ちた。その場に、花の香りと血の匂いが入り混じったような、甘く危うい空気が漂った。


 山賊はその場でガクンと崩れ落ち、痺れた体を必死に動かそうとするが、指一本すら動かない。


 最後の剣の山賊は恐怖に顔を歪ませ、後ずさりする。

 美女はそんな山賊に歩み寄ると、優雅に、しかし冷徹な笑みを浮かべた。


「テトロドトキシンですわ。青酸カリの1000倍の毒性よ。死になさい」


 山賊は「ひっ…」と喉を鳴らすと、剣を取り落として逃げ出そうとした。


「おやおや……逃げるなんて、可愛くないですわね」


 しかし、それを許さない。

 彼女は一瞬で山賊の背後に回り込むと、開いた掌を山賊の背中に押し当てた。


「私に歯向かうなんて、ホントいい度胸していますわ。」


 その掌から、淡い紫色の霧が噴き出し、山賊を包み込む。

 山賊は咳き込み、膝をつき、顔面蒼白に。


「ぐっ…痺れて体が…動かねぇ…!」


 冷徹な笑みを浮かべたまま、とどめを刺すように言い放った。


「安心しなさい、毒は死なない程度に弱めてあります、まぁ三日程度は動けませんけど♡」


 俺は慌てて駆け寄る。


「おいおい、何その毒姫スタイル!? 俺が育てたフグ、どこでそんな必殺技覚えたんだよ!」


 俺の顔を見た途端、まるで性格が変わったように甘えた声で叫んだ


「ご主人様っ!」

「本当にお前があのファカなのか!?」


 ファカは「はい!」と元気よく頷くと、

 感極まったのか、なぜかぷーっと頬を大きく膨らませてみせた。


(可愛い……カスタマイズ画面で見た時より、実物の方が可愛くなってないか?)


 ファカはくるりと振り返り、満面の笑みで俺に抱きついてきた。


「ご主人様のため、これからずっとお供いたしますわ♡」

「うわっ、ちょっと離れてくれ」

 俺がカスタマイズした胸が当たってくる。


「つれないですわ、せっかくこうしてお会いできたのに。わたくしのこの完璧な体がご不満とでも?」


(いや、俺好みにカスマイズしたんだからめちゃ好みだよ。っていうか実物を眼の前にすると何も出来ないもんだな。フグだとわかっていても)


「しかしファカ、強いな…、それより【毒】って何だよ!? フグの名残か!?」


「ふふ、ご主人様のために進化しましたの。わたくしは『毒使いの格闘魔術師ファカ』。猛毒の戦華、ここに爆誕ですわ♡」


 こうして、俺とファカの冒険が始まった。

 これは、猛毒美女と歩む異世界の旅路。


 そして――俺のハーレム6人のうち、最初の“爆誕”である。次に出会うのは、炎を操るツンデレ魔導士か、それとも氷の微笑を持つ暗殺姫か――


 俺の第二の人生、波乱しかない。

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