本当に悪夢?

「お嬢様!?どうされました!?」

「ニコラ?ニコラ……!!ごめんなさい私のせいで……!!」


 牢屋にいるときに看守が話していた。


 私の無実を訴え続けたニコラは殺されたのだ。


再調査を何度も依頼したけど聞き入れてもらえず、私との面会も拒絶された。


 私は……アリアナ・ローズは未来永劫語り継がれる悪女。侍女如きが会えるわけがないだろう、と嘲笑っていた。


 ニコラは複数の男に乱暴と暴行を受けたのちに、裸で広場に吊るされ死しても尚、辱めを受ける始末。


 ニコラの体はとても魅力があるのか、日に何度か看守が入れ替わることもあった。


 私の数少ない理解者。ニコラさえも無慈悲に殺させてしまったのだ。


 まだ幼い妹と弟がいたのに。仲の良い姉も。


 死別させてしまった。


 なんと詫びればいいのか。


「落ち着いて下さいお嬢様!怖い夢を見たんですか?」


 夢だったらどれほどよかったか。残念なことに全て現実に起きたこと。


 愚かな私のせいで招いてしまった悲劇。


 私は地獄に落ちても仕方ないけど、優しいニコラが私と同じ場所にいるのは納得いかない。


 なぜなの。ニコラの魂は在るべき所に還るべきはずなのに。


 この世に神が存在しないのだと、思い知らされてしまった。


「緊張してるのはわかりますけど早く準備しましょう。旦那様がお呼びです」

「お父様も死んだの?」


 血の繋がった親なのに悲しくないどころか笑ってしまう。


 国王になった途端エドガーに見切りをつけられ暗殺でもされたのね。あのお父様が。


 野心を抑えきれなかったか、エドガーにとって必要なのは愛する人だけだったのか。


 ──どちらにしてもいい気味だ。


「本当に大丈夫ですか?」


 心配そうに顔を覗き込んだ。


 ニコラはいつもそうだ。同じ歳なのに私を妹のように心配し、本当の家族以上に私を理解してくれる。


 死後の世界でも体は透けたりしないんだ。感触も温もりもまるで本物の体みたい。


「ニコラ。もしかしてこれって現実?」

「そうですね。お嬢様は怖い夢から目が覚めて起きていらっしゃるので。あんな悲鳴を上げるなんてどんな夢だったんですか」

「それは……」


 口にするのも怖い。目の前のニコラを抱きしめた。


 温もりがあって触れても壊れない。虚像なんかではなく紛れもなく本物。


 そうか。方法はわからないけど過去に戻ってきたのか。


 私の無念を晴らすために神が……。いや、私の許したくない強い意志が再びこの世に生を授けた。


「ところでさっき。お父様がどうとか言ってなかった?」

「そうです!のんびりしてる場合じゃないです!早く行かないと!!今日はディルク様とエドガー様がお見えになるんですから」


 運命の分岐点。


 過去、私はお父様に言われるがまま政略結婚のためにエドガーと婚約した。


 その前にお父様の執務室に行き念を押される。


 絶対にエドガーを選べと。

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