『あやかしアプリ』~ 来宮くんは友達になりたがらない。えっ⁉ なりたいのは友達じゃなくて、恋人なの⁉

和希

第1話 プロローグ

 人の数だけ出会いがあり、別れがある。

 結ばれたい縁があれば、断ち切りたい縁もある。


 つながりたい人、つながりたくない人。

 友達になりたい人、友達にはなれない人。

 ずっと仲良しでいたい人、仲良くなれそうにない人。


 中学生のこばとには、人間関係ってまだ難しくて。

 教室でも時々トラブルに巻きこまれては、ゆううつな気持ちに沈んだり、なんだか具合まで悪くなってきて、学校に行きたくなくなったり……。みんなもこばとと同じ気持ちになったこと、ある?


 でも、なかにはね。運命の出会いと呼べるような、素敵なご縁もあったりして――。


 あの子と友達になってみたい。放課後の教室で楽しくおしゃべりをしたり、お休みの日には一緒に街まで出かけて遊んでみたい。

 ……なんて、そう願わずにはいられないような、不思議な引力を持った男の子との出会いに、胸をときめかせたりもする。


 でも、どうしてだろう?

 この春、教室で初めて出会ってからまだ日も浅く、会話だってろくに交わしたことないはずのあの子に、こばとはどうしてこうも心を引かれてしまうの?


 理由はこばとにも分からない。


 ただ、教室で彼の姿を目にするたび、ほっと癒されるような、心がぽわっと温かくなってくるような、この気持ちだけはたしかなものだから。

 廊下ですれ違うたびにドキドキして、思わず声をかけずにはいられなくなったりするんだ。


「はっ、はじめまして! 来宮きのみやくん、だよね? わたし、同じクラスの――」


 おかしいよね。

 ただ声をかけるだけなのに、顔を真っ赤にして、必死でさ。


 でも、来宮くんはそんなこばとのことを少しも笑ったりせず、ちゃんと正面から受けとめてくれて。

 その眼差しは包みこむように温かく、表情は柔らかく、口元に浮かんだ微笑はさわやかで。

 彼のまっすぐな瞳に見つめられると、こばとの体温はたちまち急上昇して、ますます焦っちゃうんだ。


 人生は毎日がスタートラインで、世界は最初の一歩をふみ出す機会に満ちあふれているというのなら。

 こばとの青春は、きっと今日、この瞬間から始まるんだって。

 頭上に広がる澄みわたった青空が、こばとにそう教えてくれている気がした。




 でも、この時のこばとには、まるで思いもよらなかった。

 来宮くんにあんな秘密があっただなんて――。




 来宮くんと友達になりたいと願う少女、竹嶋こばと(13歳)。

   ×

 誰とも友達になりたがらない不思議な少年、来宮狐白こはく(13歳)。



 これは、そんな少年少女ふたりが織りなす、【あやかし】×【恋愛】学園ストーリー。


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