第21話 新たな魔法少女?

「はあっ!」


 綾部の攻撃がリーシアの触手に命中する。攻撃を受けた触手は元気そうにピンピンしている。

 今日は土曜日。綾部との戦闘訓練がある日だ。本来なら俺と綾部だけで良いのだが……リーシアも付いてくる事になり、三人で訓練をしている。三人で訓練と言っても主に綾部だけだ。


「あのー……お兄ちゃん」

「どうした?」


 隣に座っているリーシアが話しかけてくる。


「なんで私の触手ちゃんをサンドバッグにしてるの?」

「そっちのほうが楽だからだ。別に良いだろ?」

「良くないよ!私の可愛い触手ちゃんが何もできずに倒される姿見たくないよ!」


 そ、そんな事言われてもなあ。

 今、綾部はリーシアの能力で出した触手をサンドバッグにして、攻撃魔法の練習をしている所だ。

 触手の代わりに俺がやっても良かったのだが……割と疲れるんだよな。

 日に日に綾部の魔法の威力が上がっており、最初と比べると随分と見違えた。そう、綾部の魔法を喰らうと痛いし、避けるのも疲れる。この訓練にリーシアが付いてきてくれて良かったのかもしれない。


「ああー!私の触手ちゃんがー!」


 当の本人は不満そうにしているが……これは仕方の無い事だ。

 俺がそんな事を考えている内に綾部の魔法によって触手が倒される。


「今の魔法、どうでしたか?」


 綾部が俺の方に近づいてくる。テトテトと言った感じで愛くるしい歩き方だ。


「おう。悪くは無かったぞ」

「あ、ありがとうございます!」


 綾部がニッコリと笑う。中々に眼福だ。

 向こうの方ではリーシアが「私の触手ちゃんー!」と言って涙を流している。


「一旦、休憩にするか」

「はい」


 綾部が休憩しようとした、次の瞬間、聞き覚えのある声が聞こえる。


「綾部ー!ただいまっすー!」


 どこからともなく、小さいモフモフした何かが綾部に突っ込んでいった。綾部はそれを抱きしめるようにして受け止める。


「ウールー!?」


 そう。この小さいモフモフはウールーと言い、綾部の羊型のナビだ。数週間前、急に家を飛び出して、姿を消してしまった。


「もう……私、心配したんだからね」


 久しぶりにウールーに会えたので、綾部が涙ぐんでいる。


「ご、ごめんなさいっす……」


 綾部に心配されたせいか、ウールーが少し、シュンとしている。


「ところで……上司に相談って言ってたけど、何を相談していたの?」

「それなら――」

「おーい!ウールー殿ー!」


 聞き覚えの無い声がウールーの言葉を遮る。俺は敵かと思い、身構えたが……ウールーの関係者なら大丈夫だろと思い、警戒を解いた。

 ホントは……魔法少女相手に警戒を解いたらダメなんだがな。俺は綾部の前だと、少し緩んでいるのかもしれない。


「おーい!……あー、いたいた」

「置いて行って申し訳ないっす」

「いやいや、大丈夫だ。こうして、追いつけたわけだしな」


 俺達の前に姿を現したのは、綺麗な女性だった。身長は俺と同じくらいで、金髪……というよりかはブロンドに近い感じの髪色をしており、目の色は美しい碧眼へきがん。頭の後ろら辺にお団子の様に髪をくくっている。外国人の様な顔だちをしており、可愛いと言うよりかは綺麗が近い。


「む?この人達は?」


 金髪の女性がこちらを睨む。


「あー今から紹介するっす!」


 ウールーは張り切って、俺達の自己紹介をしてくれる。

 何故、ウールーが張り切っているのかは謎だが……。


「ふむふむ……綾部殿にアレス殿か……」

「よ、よろしくお願いします」

「ああ。よろしく」


 綾部と俺が順番に挨拶をする。すると、後ろの方から、リーシアが走ってくる。


「あれー?いつの間にか知らない人達がいる……」


 不思議そうにリーシアは首を傾げる。


「丁度いい。ほら、お前も挨拶しろ」


 肘で軽くリーシアをちょんちょんと小突く。


「ええ……急だなあ……まあいいか。私はアレスお兄ちゃんの妹のリーシアです。よろしく!」


 右手でピースをし、軽く挨拶をする。前の派手な挨拶は空ぶったから、今回は控えめにしたんだろう。


「自分はウールーっす!よろしくっす!」


 ウールーが宙で回転しつつ、挨拶をする。テンションでも上がっているのか?


「では、そろそろ私の方も挨拶をしよう。私の名は【カレン・ステファニー】だ。気軽にカレンとでも呼んでくれ。改めてよろしく」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る