第16話 触手

 リーシアは謎の決めポーズと共に自分の能力を発動させる。

 すると、リーシアの背中から、謎の何かが生えてくる。それはタコやイカの足に似ている。言うなれば触手だ。


「な、なに……あれ?……」


 綾部が驚いている内にも触手が奇妙にうごめき、どんどんと肥大化していく。触手の本数も次第に増えていく。


「やっぱ近くで見ると中々にグロいな……」


 俺はリーシアから生えてきた触手を間近で見る。

 これを見るのは久しぶりだ。


「ちょっとー!グロいって何よ!私の能力に失礼じゃない!」


 リーシアがプンスカ怒り、俺の方を睨む。

 触手の方は成長が止まり、一定のサイズを保っている。長い触手はリーシアの身長の二倍分はあり、太い触手もあれば細い触手もある。触手の個々に対して大きさが違うのだろう。


「さーてと……魔法少女狩りと行きますか!」


 リーシアはニヤニヤ笑みを浮かべながら綾部を見る。


「っ!」


 綾部は疲労している体に鞭を入れ、警戒態勢に入る。


「いけっ!私の触手テンタクル達!」


 リーシアが綾部の方向に指を指すと、触手が伸縮し、一斉に襲い掛かる。

 綾部は魔法陣を出現させ、魔法で応戦する。


「このっ!」


 お得意の魔法で触手達を攻撃し、撃破していく。意外に耐久性は無いらしい。


「こ、これなら!」


 綾部に希望が見える。このまま撃破していけば、触手は全て無くなるだろう。


「ふっふっふっふ……甘いねぇ」


 リーシアが少しネットリした声で言う。すると、リーシアの背中から触手が複数、生えてくる。


「なっ!?」

「ざーんねーん!私の触手テンタクルちゃんは再生しまーす」


 綾部が動揺を見せるとリーシアは、すぐさま煽っていく。

 コイツの悪い癖だよな。


「でも、まだ諦めない!」


 綾部は己を鼓舞するかのように言い聞かせる。

 諦めない心には感服するが、勝敗は決まったようなものだ……。


「さすがだね。魔法少女さん……でーもー……」

 

 勝ちを確信したリーシアは綾部に対して嗜虐的な笑みを浮かべる。まるで、獲物をじっくりと追いつめている捕食者のようだ。

 綾部は諦めずに触手を魔法で撃破し、撃破しきれない触手は回避していく。

 

「もう、私の勝ちだね!」


 リーシアがそう言うと、綾部の立っている地面から触手が出現する。


「えっ!?きゃあっ!」


 咄嗟とっさの事で反応できなかった綾部は触手に足を絡めとられてしまう。他の触手も綾部の体に絡みついていく。最終的には綾部の四肢を触手が絡みついて拘束する。


「えっへへー。魔法少女捕獲完了ー!」


 リーシアはご機嫌そうに言うと、謎の決めポーズをする。


「くっ……」


 対する綾部は悔しそうな顔をしている。

 これは……しょうがないか。実際、勝敗がわかっていた勝負でもあった。

 俺がリーシアに近づこうとすると、急に足が動かなくなる。


「ん?……」


 俺は不思議に思い、足元を見てみると、いつの間にか触手が絡みついている。

 なっ!?いつの間に?


「おい。リーシア、これはどういう事だ?」

「あ。お兄ちゃんはそこでジッとしててねー。私のお楽しみタイムが始まるから」

「お楽しみタイム?」


 リーシアが訳の分からない事を言い始める。綾部も会話を聞いていたようで首を傾げる。


「むっふっふっふ……魔法少女が触手に捕まったら……されることはただ一つ!」


 ビシッと指を立てるリーシア。


「それは触手でエロい事をされるのだ!」

「はあ?……お前何を言ってるんだ?」

「まあまあ、見ててよお兄ちゃん。今から負のエネルギー溜めるからさ」


 最後の一言は俺に聞こえるような声で言った。俺達の本来の目的は魔法少女の堕天化だ。魔法少女は負のエネルギーを溜める事によって堕天化する。


「でも、どうやって負のエネルギーを……まさか、お前……」

「そう。そのまさかさ!」


 俺の嫌な予感が的中する。


「え?……なんか触手が動いて……」


 綾部が不安そうに触手を見つめていると……突然、触手が一斉にうごめき、綾部の体に触れ始める。


「きゃっ!?」


 可愛らしい悲鳴が聞こえる。その悲鳴を聞いて、リーシアは目を光らせる。


「さーて……お楽しみタイムの始まりだ!」


 ま、まずい……俺の足に絡みついている触手を早く引き剥がさないと大変な事になる!

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