13話 作戦会議
「お、お邪魔します」
ロミオは、昼間と同様に遠慮しがちに玄関から入る。
「今日からここに住むんだ、そこはただいま、でいいんじゃないか?」
「う、うん、そうなんだけどね……慣れる気がしないよ……」
「そうか、……まあゆっくり慣れていけばいいさ」
「うん、ありがとう、ユーリ」
ロミオはそういって笑顔を見せた。
「さて、晩飯でも作るか、何かリクエストあるか?」
「いや、特には、じゃなくてユーリ、その前に1つ提案があるんだけど……」
「提案?」
ロミオは少し申し訳なさそうに話す。
「……家の中での決まり事を決めない?」
決まり事?
勝手にお互いの部屋に入らないとかそういうのか?
まあ、もともと人の部屋に無断で入るつもりはないんだが。
「具体的にはどんなのだ?」
「えっとね、僕からは2つあるんだけど、まず1つは……互いの入浴の時間を決めない?」
「別に俺はどっちでもいいんだが、どうして時間を決めるんだ?」
「ど、ど、どうして!? ってどうして!?」
ロミオは顔を赤くし、動揺していた。
えっと、俺が質問したんだが。
「お風呂が空いているときに、適当に入ればよくないか? それに俺たちは男同士なんだし、別に風呂がかぶったって俺は気にしないんだが」
家の風呂は余裕で4人くらいが同時に入れるだけのスペースがある。
シャワーだって2つ取り付けられているし、別にお風呂の時間がかぶってしまっても問題はない。
「い、いやいやいや、ダメ! 絶対ダメ!」
ロミオは慌てながら両手でバツを作り、首を横に強く振る。
ここまで拒否されると少し悲しくなってくるんだが。
よっぽど、俺と一緒に風呂に入りたくないのだろうな。
「そ、そうか……悪い」
「い、いや、違うよ。別にユーリと一緒が嫌ってわけじゃなくて……って、僕は何を言っているんだ。と、とにかく、入浴の時間と、もう1つは」
ロミオは、スーハーと一呼吸おき
「ユーリさえよければ、これから晩御飯は僕に作らせてよ」
「え? ロミオが作ってくれるのか?」
「うん、こう見えて僕は、お屋敷で料理を作っていたからね。ある程度のものは作れると思うよ」
ロミオは上着の上からぐっと力こぶを作る仕草を見せた。
「普段は自分が作ったものばかりだから、人が作る手料理は久しぶりだ」
旅の最中も、シルバーはからっきし料理がダメだったので、俺が食事を作っていた。
人が作った料理はほんとに久しぶりでワクワクするぜ。
「そ、そんな期待されると、少し緊張するけど、……精一杯頑張ります……」
ロミオは顔を赤くし、下を向きながらごにょごにょと話す。
「それじゃあ、晩飯はロミオに任せるぜ!そのかわり、朝飯は俺が作るよ!」
「うん、お願いするね」
「おう!」
俺たちは笑顔を向けあった。
その後、ロミオが作ってくれたパエリアとコーンスープをご馳走になった。
ロミオから俺が普段食べないものを聞かれ、このメニューになり
俺は人生初のパエリアを食すことになった。
そして……味は最高に美味しかった。
それはもう、度肝を抜かれるくらいに。
ロミオの料理の腕は、俺の想像をはるかに超えていて、これは料理屋を開けるレベルじゃないだろうか、と思ってしまうほどだった。
そんな、ご馳走を腹いっぱい食べ終え、俺たちはいまリビングでお茶を飲みながらロミオと作戦会議をしていた。
議題はもちろん、上級クラスを俺たちのパーティーに引き入れる件についてだ。
「ロミオ、2年と3年には上級クラスは何人いるんだ?」
「えっと、2年生は3人だね、……3年生は確か7人だったはずだよ」
「思っていたより少ないな」
もっといるものかと思っていたが。
「そうかな? だいだい、学年で上級クラスが5人いればその年は優秀だって言われるくらいだよ」
「そういうものなのか? ……それでいうと、今いる3年は優秀ってことか」
「そうだね、3年生はとても期待されている世代だね。……それに、3年生の上級騎士で騎士生徒会長を務めている人は、次の特級騎士候補だって周りから言われているくらいすごい人なんだよ」
「そんなやつがいるのか……、というか騎士生徒会長って何だ?」
「えっとね、騎士生徒会長っていうのは、いえば僕たち生徒の代表みたいなものだね。生徒会っていう、イベントの管理や、学校の問題を解決したりする、学生の組織があるんだけど、その生徒会には騎士生徒会と魔法師生徒会の2つがあってね」
ロミオは一呼吸おき、続ける。
「その騎士生徒会長、アラン・ファルガレスさんは、いま特級騎士に最も近い人だって言われていて、特級クラスの人たちからも注目されているすごい人なんだ。なんでも特級騎士のレオさんと同じように、あの神器を扱えるっていう噂もあるくらいだからね」
「その会長のアランってやつは強いんだな」
「そうだね、学校では間違いなく1番の実力者だと思うよ」
レオたち特級クラスに最も近い実力者。
俺はその騎士生徒会長とやらに興味がわいてきた。
「その生徒会長とはパーティーを組めるのか?」
「組めないことはないと思うんだけど、おそらくは無理だと思うよ。生徒会のメンバーは会長に限らず多忙で、あまりクエストには行けないみたいだからね。それもあって生徒会メンバーは、特例としてクエストの必修単位は免除されているんだ」
「そうなのか」
生徒会に入れば、進級は確実にできるってことか。
その騎士生徒会長とやらとパーティーを組めば、手合わせができると思ったんだが。
……だが、本来の目的を忘れてしまってはいけないな。
俺は特級騎士になってS級クエストに行く
これが1番の目的だ。
次の試験で特級試験を受けるために、上級クラスをパーティーに入れてA級クエストを5回クリアする。
これが最も優先すべきことだ。
可能性が薄い騎士生徒会長をパーティーに誘うことよりも
少しでも入ってくれる可能性がある上級クラスの人に声をかける方が断然いいだろう。
まあ、もちろん誰でもいいというわけではないが。
「とりあえず、2年を当たってみるか」
「うん。でも相手にしてもらえるかどうか……」
「まあ、考えるより行動だな!よし、明日は2年を順番に偵察していくぞ!ロミオ、案内よろしく頼むぜ!」
「うん、……何事もなく穏やかに済めばいいんだけど……」
ロミオは少し不安そうな表情をしていた。
こうして作戦会議を終え
俺たちはロミオと話しあったように時間を分けて
風呂に入り、それぞれ自分の部屋で就寝した。
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