第45話 食われていく

──深夜の新宿。

照明を落とした部屋で、ルナはノートPCを開いていた。

いつものように配信アプリを立ち上げ、マイクのスイッチを入れる。


「こんばんは。キャバクラで売上を作るには――」


そう口を開いた瞬間、コメント欄に奇妙な反応が走った。


〈あれ?さっき秋ちゃんも同じこと言ってた〉

〈テンポまで月子さんそっくり〉

〈月子式が二人いる?〉


ルナの指先が止まった。

急いで画面を分割し、同じ時間帯に配信している秋のチャンネルを開く。


そこには、整った顔立ちで微笑む秋がいた。

タイトルは《キャバ嬢×マーケティング論》――自分とほとんど同じ。

使う言葉も、数字の公式も、間の取り方までも。


(……全部、私のコピー)


だが、コメント欄の熱は圧倒的に秋の方に傾いていた。

「秋ちゃん可愛い!」

「わかりやすいし癒される」

「これが月子式ってやつね」


視聴者数:50→120→650

——検索1位:秋「キャバ嬢×マーケ」


秋の配信画面。コメントを見ながら笑う。

「え?“月子式”?そうです、

私の“師匠”の理論です。

すごく勉強になってて――」



──閉店後のバックヤード。

佐川が売上表を持って店長の前に立っていた。


「……なぁ店長。月子と秋、配信のネタってやってること全く同じだよな?」

「同じだな。数字の出し方も、配信のネタも。」


「じゃあ、なんで秋の客が増えるんすか?」

「お前、コンビニで缶コーヒー買うとき、どうやって選ぶ?」

「……なんとなく、手を伸ばした方」


店長は笑って肩をすくめた。

「同じ味なら、最後に決めるのは“印象”だ。

見た目とか、雰囲気とか。

理屈より先に、手が動く。」


「…ここに来て、“秋の見た目の良さ”って事か」


佐川は黙り込む。

モニターのグラフ。赤い線が、青に呑まれていく。


ルナは机に突っ伏し、唇を噛む。

胸の奥で小さく崩れる音がした。


【現在ステータス】

資金:365万円

残り:635万円/222日


──ルナが家を出て4か月と20日経過

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