診療記録(第3回)

診察日:2025年4月25日(金)

担当医:高城 祐一(精神科医)


患者番号:#44216

氏名:瀬戸 和樹

性別:男性

年齢:48歳


主訴:「眠れるようになった。前よりは楽です」


経過:

前回処方したゾルピデムおよびエチゾラムの併用により、入眠・中途覚醒ともに改善傾向。睡眠時間は6時間前後で安定。日中の緊張感も軽減しており、外出や軽作業も再開しているとのこと。

ただし、前回から言及のあった「気配」に関して、「一度だけはっきり見た」との発言あり。詳細は後述。


精神状態所見:

表情はやや柔らかくなっている。思考内容に飛躍や不整合はなく、現実検討能力は維持されている。受け答えは丁寧かつ端的。身体症状訴えなし。ただし、視線は頻繁に室内を巡っており、会話中にも一瞬だけ医師の背後を凝視する場面あり。


診断(暫定):

神経症性不眠および不安症(継続)

一過性の視覚的誤認の可能性を含め、引き続き経過観察とする。


治療方針:

処方継続。エチゾラムは隔日服用へと減薬方針とし、依存性の観点から段階的調整を説明。必要に応じて非ベンゾ系抗不安薬へ移行検討。


診察記録:

患者は「眠れている」「散歩もできるようになった」と語り、前回より口調がやや明るくなっている。ただし、話題が診察室に及ぶと表情が変化。

「先週ここで、はっきり見たんです」と静かに語り出す。

患者によれば、前回の診察中、医師がカルテに記入している際、書棚の前に「誰かが立っているのが見えた」とのこと。女性のように見えたが、すぐに消えた。

「一瞬だったので気のせいかも」と苦笑しつつも、「でも、たしかにそこにいた」と繰り返す。

医師は「過覚醒状態では視覚情報が混線することもある」と説明し、患者も理解を示したが、再び書棚の方を見て、「今はいませんね」と一言だけ付け加える。

診察後、退出前に再び室内を一瞥し、「あの、本当に、先生しかいないんですよね」と確認。

医師が頷くと、短く頭を下げて退室。扉が閉まる寸前、廊下から小さな声で「やっぱりいたんだ」とつぶやくのが聞き取れた。

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