第20話 獅子は兎を狩るにも全力を尽くす

【パトカー・社内】


 立てこもりを解決したなんでも課の五人。彼等は勝利に酔っていた。


「いやー。良いチームワークだったなー」

「俺の交渉がなかったらあそこまでスムーズにいかなかったな」

「ウチがおったからね」

「でも私が引き立て役をやらなかったらああはならなかったと……」

「俺は有栖ありすの交渉中、雰囲気に吞まれるようにドラマチックな曲を流してた」


「ったくしょーがねーなお前等はぁ!! とある筋から臨時収入が入ったから二番手共に少し奢ってやんよッ。アッハッハッハ」

「「「さっすが黒波くろは~~~!!」」」

「分かりやすいですね」


 そこで凛虎りんこは思いついた。したり顔で言う。


「過去に戻れるならそれを増やせませんかね!! 正攻法の投資とかで!!」


「うわやべーな。真仮まかりの倫理観……新人にどういう教育してんだ有栖ありす

「すまんマジか。俺の予想を余裕で飛び超えてくるヤバさだったとは……」

「ドン引きやわ……」

「インサイダーマウンティング。マウントでの不当な金稼ぎは罪を問われる事もある」


「えええええ!! まさかこの面子に罪と倫理観を同時に問われるとは思いませんでしたよっ!!」

「上層部は黒波くろはのマウント知っている。隠し通せるわけないだろ」


「あとな小さい頃試したが、時間を戻してもマウントで消滅した金はその時期になったら必ず消える。まあ未来は一応変えられるようだがな」

「今さらっととんでもないこと言いましたね!?」


 その後、課長も呼んで、黒波くろはのおごりで回らないスシを食べた。



―――――――――――


【なんでも課】


 事件が起きて一週間後、聖魔ひじりま部長が表彰されていた。なんでも助けた女子は相当凄いお偉いさんの娘だったらしい。彼は五百万以上の見えない利益を得たのである。


 黒波くろはがその情報を知って叫んだ。


「ふぁーッ!!! ありかよそんなの!?」

「まあまあ。きっと機密事項だったんですよ」


「あ、ちょっと秘密の交渉に行きますわぁー。野生の賢者の石サンジェルマンゲットしたなァ!!」

「駄目ですよ。てか何時いつか捕まりますよ」


「……そう言えば真仮まかりって改めて見ると性格良いし美人だよな~」

「え? えへへへ。よく言われる気がします!!」


「それでさ。今お腹空いててさー。給与日までちょっと貸してくんない?」

「あれもう使ったんですかっ!!?」

「いや、使ってない。謎なんだが、あれから二日目の朝に全て消滅していた。恐らく寝マウントしたんだろう……」

「絶対一日目になにか良からぬ事してますよ!!」


「まあまあ。きっとそれがお金の運命だったんだよ」

「……取りあえず千円で良いです?」

「はぁ?」


「えー。じゃあ~」

「そんなに良いのかよッ。マジで最高の女だな!! これで五日は持つぜ!!」

「……ある意味で金銭感覚バグってますね」


 黒波くろはは部屋から出ると何処どこかに行った。有栖ありすが言う。


「いっぺんに与え過ぎだ。あいつには百五十円づつでいんだよ」

「遠足より少ないじゃないですか。ていうか有栖ありすちゃんもお小遣いあげるんですね。意外……」

「あいつが酔っているうちに調子に乗せて金を預かってる。で、預かった分を渡してるから俺に損害はねぇよ」

「ただの親じゃないですか」


 そこから時間が経過した。鳴瀬なるせは相変わらず無駄にデカイノートPCをカタカタしている。上翔かみしょう課長は書類に目を通して適切な処理をしている。咲草さくは動物図鑑を見たり紙粘土で動物を作っている。マウントをより洗礼させる訓練とされている。有栖ありすはM字に脚を広げて寝ていた。


 凛虎りんこはスパッツ等の動き易い恰好になり、署内のジムで筋トレをして汗を流していた。彼女は汗をかくのが好きである。そして最後にシャワールームに入る。


「ふぁぁぁ~。やっぱり一杯汗かいた後に流すのが最高ぉ!!」


 課に戻ると有栖ありすが起きていた。真剣そうに金属を三つ置いて眺めていた。


なにしてるんです?」


「嗚呼、これは……いや、真仮まかりにはまだ早いか。話しても仕方ねェ」

「むっ。これでも金属のプロですよ!!」

「はー。じゃあ完璧な球体を二つ作れるか?」

「楽勝です!!」


 金属に触れるとかなり精密な球体を二つ作り出す。ドヤ顔になる。


「どうですか!?」

「見事なもんだな。じゃあ試験管を作れるか?」

「金属で実験できなくないです? ガラスはマウント適応外ですし」

「できねェのか? だから早いっつたろ……」

「できますよ!!」

「めんどいだろうからメモリはいらねー」

「ははー。それなら簡単ですよー」


 試験管を再現する。凛虎りんこがドヤ顔をした時に有栖が言う。


「エレファントだ凛虎りんこ


 咲草さくも近寄ってきた。


「白昼堂々卑猥なの作るとか。さすがはエレファント凛虎りんこ。引くわー」

「ああああ!!!」


 試験管を拳でぐしゃりと潰す。勿論筋力ではなくマウントを使って。鳴瀬なるせ上翔かみしょう課長が急な痛みを共感し前屈みになると机に頭をぶつける。


なにやらせてるんですか!?」

「先を読む力がまだまだだな……だからあの金髪に良いようにやられるんだ……」

「は!? まさかそれを伝えるために!!」

「そんなはずあらへんやろ。遊ばれてるだけやろ」


 そんな時、クラシックな曲が流れた。


『害獣事件が発生。脅威CΚカッパ。なんでも課のクソ共。至急出動せよ。繰り返す。害獣事件が発生。脅威CΚカッパ。なんでも課のクソ共。至急出動せよ。以上だ公安の害獣共』


『訂正。脅威CΚカッパ。モンスターハント課が出動可能。なんでも課のクソ共は待機でも可。繰り返す。脅威CΚカッパ。モンスターハント課が出動可能。なんでも課のクソ共は待機でも可。以上だ。あと金返せ』


 凛虎りんこが言う。


「最弱判定の害獣ですね。範囲が広いのがあれですけど、モンスターハント課が動くならなにもしなくても大丈夫そうですね。準備して現場到着した頃にはいないとおもいますよ」


 そこで怒りに燃える男が叫んだ。


「総員……直ちに出撃しろッ!!? より迅速にっ!! そして害獣は一匹たりとも残すなッ。街を害獣どもから守れェェぃ!!」

「「「ハッ!!」」」「え?」


 上翔かみしょう課長の命令と共に全員はきびきびと動き出す。凛虎りんこ咲草さくに引っ張られるように外に出た。


「いや。流石に戦力過剰では……」

「馬鹿野郎。一匹でも逃したら永遠にカッパコールが流れる……」

「あっ……そういう事でしたか!!」


「恐ろしわぁ」

「てか、目の前に居ない時は冷静なんだな凛虎りんこさんは」

なにがです?」


「この際、暴走して街を破壊するのは仕方ない。全力で狩るぞ」

「とんでもない事言ってません!? 絶対暴走していでくださいよ皆さん!!」


 三人と実体鳴瀬なるせはキレつつ沈黙した。



☆彡☆彡☆彡☆彡




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