第4話

4 異世界からのお客様

それからは、3日置きに異世界からお客様が来るようになった。結構せわしない。


二十四時間滞在するので、布団を敷いたり上げたり。


シーツを洗って乾かしたり。買い物をして置いたりと殆ど休み無しだ。


家の掃除も毎日しなければならない。何時も同じ食事というわけにも行かず、メニューを考えるのも大変だ。偶に楽をしたくてレトルトを大量に買い込んでおく。カップラーメンや袋麺。冷凍食品の為に大型の冷蔵庫に変えたりもした。本も古本屋で充実させた。


今日のお客はどんな人だろう。


この間は神官服を着た、中年の渋い叔父様だった。


「神は我々に成長の機会を与えたもうた。神がこの世界と私達の世界を少しの間、つなげていてくれたのだ。神に感謝を。」


両手を合わせ、お辞儀の動作を3回する。釣られて私もお辞儀する。


色んな職種がある物だ。あるときは


「俺は冒険者のトップランカーだ。俺の右に出る奴はいない。だがまた強くなれる機会に恵まれた。もう世界で向かうところ敵無しだ。がははは。」


少しウザかったので、金属バットで小突いてやったら、消えて居待った。


力など入れなかったのに。あれで、世界一だなんて、考えられない。弱すぎだろう。


次の日また来て、少し謙虚になっていた。良い事だ。慢心は良くない。


彼はビクビクしながら、金貨を5枚置いて消えていった。


消えた回数によって金貨の枚数が変わるわけでも無いのか?


何にせよ大もうけだ。慢心した野郎や高飛車な女は積極的に矯正してあげよう。




今日はかわいらしい子供だ。


七歳くらいの綺麗な顔立ちをしたお坊ちゃん。


「我は、サブスクリュウ国の第十二王子だ。貴様のような下賤の身で我の世話が出来るのは名誉なことであるぞ。心して我の世話をせよ。」


またこんなのが来ちゃったよ。折角可愛いのに、このまま大きくなったら、面倒くさい男になりそうだ。


おでこをピンと中指ではじいてやったら、消えて仕舞った。


可哀想な気もするが、指で小突いただけだし。性格が矯正出来たなら良いけど、泣いていないかな。


次の日王子様が、ぶすっとした顔でまた来たので、


「余り威張っていると仲間はずれになってお友達からはじかれちゃうぞ。可愛い顔しているんだからニコニコ笑って。はい、チョコレート。美味しいよ。」


チョコを食べてビックリした後、何とも言えないくらい可愛い顔で笑った。おめめがくりくりで睫の長いこと。羨ましい。王子様とは色んな話をした。今悩んでいることとか、兄弟との軋轢とか。


王子様も大変なんだね。だから、足下をすくわれないように何時も気を張っていたのか。


王子様は3日滞在して、寂しそうに帰って行った。金貨10枚を置いて。


二十四時間って決まってなかったの?


何にせよ大もうけだ。老後の資金まで貯まりそうな勢いだ。




それからはお客様の来る頻度が少なくなった。


一ヶ月に一人か二人。やっとゆっくり出来る。


忙しかったから、ヘアーサロンにも行けて無かった。予約を入れて、久し振りにゆったりした気持ちになり、髪を綺麗にして貰う。


「小泉様。随分久し振りでしたね。ご旅行でも行かれました?」


「まあ、そんなところね。」


「若返って綺麗になりましたね。」


うそー。言うに事欠いて、若返るは無いだろう。まあ、リップサービスは、客商売なのだから仕方がないか。でも、確かにこの頃、お肌の調子も、身体の切れも良くなった。異世界のお客様効果かな。


サロンの帰り道、元彼が家族を連れて、歩いていたのに出くわした。


奥様はでっぷりと太った人だ。こんなに太っていなかったはず。子供が居ると色々大変なんだろうな。いくら太っていても、幸せそうだ。


私はこそこそと物陰に隠れて彼等をやり過ごした。何も悪いことなどしていないのに、変な感じだ。

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