第2話 二人の騎士
午後の陽が傾き始めた頃、村の広場はいつも
よりざわついていた。
見張り役の少年の知らせにより、村人たちは
遠くの山道を見つめている。
「おい、あれは……」
銀色に輝く鎧を身にまとった二人の騎士が、
確かにこちらへ近づいてきていた。
そのうちの一人は礼儀正しい青年、ガレス。
もう一人は無骨で横柄な雰囲気を
漂わせる男、バルド。
二人が村へ足を踏み入れると、
村長が迎えに出た。
「騎士ガレス、そして……バルドか」
「はい、村長殿」ガレスは丁寧に頭を下げる。
「我々は王都騎士団の巡回隊です。
巡回と情報収集のため参りました」
バルドは腕を組み、村人たちを
冷たい目で一瞥した。
「こんな辺鄙な村に魔族が来るはずもないと
思っているが、念のためだ」
その言葉に、村人の一部から眉を
ひそめる者もいた。
リアンは目を輝かせ、バルドに近づいて
声をかける。
「おい、バルド! 俺、騎士団に入りたいんだ。教えてくれよ!」
しかしバルドは鼻で笑い、軽く突き放すように言った。
「お前のような田舎者に騎士の務まると
思うなよ」
リアンは一瞬、言葉を失ったが、すぐにまた
意気込みを見せる。
それを横目に、カムイはため息をついた。
夕暮れが訪れると、ガレスは村長と密かに
話し合っていた。
遠く離れた広場の片隅で、その様子をカムイは偶然目撃する。
「……何の話をしているんだ?」
会話の内容は聞き取れなかったが、
その真剣な表情から、何か重大なことが
動き出しているのだと感じた。
一方、バルドは村の酒場で酒をあおり、
村人に絡んでいた。
その冷たい態度と粗暴な振る舞いに、
村人たちは身を引きながらも不安を隠せなかった。
夜が更けると、村の外れの山道でガレスだけが、
不自然な獣の咆哮を耳にした。
その声は、闇の奥から忍び寄る何かの気配を
告げているようだった。
まだ村は平穏に見えたが、確実に変わり
始めていた。
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