第4話 パラレル完結編予定4
夏。灼熱の太陽がアスファルトを溶かしかねないほどの猛暑が続いていた。都会の隅、路地裏の古びたアパートの屋上に、白美(しろみ)が佇んでいた。彼女は人間の女ではない。顔無雪女(かおなしゆきおんな)だ。その名の通り、顔は存在しない。代わりに、真っ白な肌が滑らかに連なり、眼の位置には淡い青の光が点在し、口の位置には柔らかな赤い線が浮かび上がるのみだった。それでいて、その姿はこの世とも思えないほど美しく可愛かった。真っ白な髪が風に舞い、雪のように白い衣装がその巨乳を際立たせていた。母性本能が高まるほど乳は大きくなるという設定だが、今の白美はすでにそれを超える程の大きさで、優しさに満ちた雰囲気を醸し出していた。
彼女は何も食べず、排泄もしない。生理などという人間の煩わしさからも解放されていた。それでいて、この世の暑さを感じ取り、「涼しくなろう」というテーマを心に秘めていた。白美の目的は、人間を辞めたい女、あるいは人間の男を辞めて女、それも顔無雪女になりたい人を、同じ姿に変えて仲間を増やすことだった。もちろん、強制ではない。相手の意思を尊重し、来たい人だけを受け入れる。それが彼女の原則だった。
ある日のことだった。白美は都会の公園で、太陽の下でうなだれている若い女性を見つけた。その女性は、名前を結衣(ゆい)という。二十代半ばで、オフィスワークに疲れ果て、人間関係のストレスに喘いでいた。「もう、こんな毎日…」結衣はつぶやき、地面に頭をつけた。
白美は静かに近づいた。その優しさが結衣の心を引き寄せたのだろう。結衣は顔を上げ、白美の姿に驚いた。「顔…ない?」「私は白美。顔無雪女よ。」白美の口の位置に浮かぶ赤い線が動き、柔らかな声が響いた。「あなた、人間を辞めたいの?」
結衣は一瞬、その問いに当惑した。しかし、その後、彼女は深く息を吸い込んだ。「…はい。もう、この世のルールに縛られたくない。何も食べなくていいし、排泄もないし…そんな存在になりたい。」白美の設定を聞いた結衣は、目を輝かせた。「でも、本当にそんなことができるの?」「もちろん。でも、決めるのはあなたよ。来たいと思うなら、私の手を取って。」白美は手を差し出した。その手は冷たく、雪のようだった。
結衣は迷いもなく、その手を握った。すると、白美の体から白い光が湧き出し、結衣を包み込んだ。光の中で、結衣の姿は変化していった。真っ白な髪、顔のない容貌、そして巨乳へと…。数分後、光が収まると、もう一人の顔無雪女が誕生した。「わ…わたし…」結衣、いや、今は雪乃(ゆきの)と名付けられた新しい仲間は、自分の体を見て驚いた。「これが…顔無雪女?」「うん。これからは一緒に、涼しく過ごそうね。」白美は優しく笑った。雪乃の母性本能も少し湧いてきたようで、彼女の乳は白美ほどではないが、かなりの大きさになっていた。
このように、白美は仲間を増やしていった。次に出会ったのは、男性だった。健太(けんた)という名の、三十代のサラリーマンだ。しかし、健太はずっと、自分は男ではなく、女であると感じていた。それも、普通の女ではなく、何も食べなくていい、排泄もない、生理もない…そんな存在になりたかった。そして、ある日、健太は白美と雪乃を公園で見かけた。「あの…あなたたちは…顔無雪女ですか?」健太は緊張して尋ねた。「私も…女になりたい。顔無雪女になりたいのです。」
白美と雪乃は交換を見た。「男から女、それも顔無雪女になりたいのね。」白美は確認した。「はい!それが私の本当の願いです!」健太は力強く答えた。「では、手を取って。」美は手を差し出した。健太はそれを握り、再び白い光に包まれた。変身が終わると、健太は健(たけ)と名付けられ、美しく可愛い顔無雪女の姿になっていた。乳はまだ小さめだったが、母性本能が湧いてくるにつれて大きくなるだろう。
仲間は白美、雪乃、健の三人になった。彼女たちは、人里離れた山の中に隠れ家を作り、毎日を過ごしていた。暑さを感じない彼女たちは、外で遊んだり、助けを必要とする人を助けたりしていた。ある時、山道で足を怪我した老人を助けたり、子供が迷子になっていたら保護して警察に連れて行ったり…。それぞれの母性本能が高まるにつれ、彼女たちの乳はどんどん大きくなっていった。特に白美は、もはや普通の人間の常識を超える程の巨乳になっていた。
しかし、彼女たちの存在は、やがて世間に知れ渡ることになる。ある日、健が町に出かけた時、偶然、カメラに写ってしまったのだ。その写真がネットに流出し、「顔のない女」「雪女のような存在」などとして話題になった。警察も、この「異常な存在」を追跡し始めた。彼女たちの行動は、人間の社会秩序を乱す「犯罪」だとみなされたのだ。
「白美さん…警察が来てるみたい…」雪乃は慌てて白美に報告した。隠れ家の周りに、赤いライトが回っているのが見えた。「どうしよう?」健も不安そうに尋ねた。白美は冷静だった。「心配しないで。私たちは悪いことはしていない。でも…もしかしたら、この世では、私たちの存在が許されないのかもしれないね。」彼女は優しく、二人の頭を撫でた。「でも、私たちは助け合ってきたんだから、大丈夫。」
警察は隠れ家を包囲し、スピーカーで「中にいる者は降伏しろ!」と叫んでいた。白美は、仲間たちを引き連れて外に出た。「私たちは、人間を辞めたい人たちを、自発的に仲間にしただけです。強制はしていません。」白美は警察に向かって話した。しかし、警察は彼女たちを「危険な存在」として扱い、逮捕を試みた。
その時、突然、空が暗くなり、大きな嵐が来るような予感がした。白美は、何かが起こることを感じ取った。「みんな、抱きしめて!」白美は雪乃と健を抱きかかえた。すると、再び白い光が彼女たちを包み込んだ。でも今度の光は、前の変身時の光とは違って、より強く、温かかった。
光が収まると、そこにいたのは…白美、雪乃、健ではなかった。代わりに、三人の普通の人間の女性がいた。白美は、もともとの名前を思い出した。「私…結花(ゆか)だった…」雪乃は「結衣」に、健は「健太」に戻っていた。顔があり、髪の色も黒く、乳も普通の大きさになっていた。「な…なんで…?」結衣は困惑した。
警察は、その場で呆然としていた。「顔のない女たち…消えた?」「でも、この三人…何者だ?」混乱の中、結花(元白美)は話し始めた。「私たちは…ただ、暑苦しい世の中から逃れたかっただけです。でも、やっぱり、この世にはまだ、私たちがやるべきことがあるのかもしれません。」彼女は、仲間たちを見て、優しく笑った。
警察は、彼女たちを「事件に関与した容疑者」として一旦留置したが、証拠がないため、その後釈放された。結花、結衣、健太は、それぞれの人生に戻った。でも、彼女たちは、顔無雪女だった頃の記憶を持っていた。その優しさ、その涼しさ、そして巨乳だった頃の感覚…。
それから数年後。結花は、動物保護施設で働いていた。結衣は、オフィスを辞めて、カフェを開いていた。健太は、自分の性自認を受け入れ、女性としての生活を始めていた。三人は時々会い、「あの頃」の話をして笑った。「あの時、本当に涼しかったね…」「でも、今も、自分たちで涼しく過ごせるように頑張ってるからね。」結花は優しく言った。
それが、顔無雪女たちの物語の結末だった。無理やりハッピーエンドだが、少なくとも、彼女たちは再び人間に戻り、それぞれの道を歩んでいた。そして、心の中には、いつまでも、あの白い光と、涼しい風の感覚を忘れないだろう。
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