第二話 宇宙恐竜ってすごい!
まるで博物館からぬけ出してきたようなホネのすがたをしたティラノサウルスが、ぼくとカノちゃんの前に立つ。こうして目の前で見るとすごい大きさだ。飲みこまれてしまいそう。
ホネの恐竜は、大きな口を開けて声をかけてくる。
「二人とも、ケガはないか?」
「う、うん、だいじょうぶ」
「あたしもだいじょうぶです。あの、さっきのトリケラトプスやあなたは何者なんですか?」
ホネの恐竜はどことなく安心したように見えた。助けてくれたし、きっといいやつなんだと思う。
「わたしは遠くはなれた星からやってきた宇宙恐竜のティラノだ。そしてきみたちをおそった三本ツノは宇宙恐竜のトリケラー」
「「宇宙恐竜⁉︎」」
「そうだ。わたしは悪い心をもってしまったトリケラーのあとを追ってこの地球までやってきたのだ」
目の前のティラノサウルスはティラノ、そしてあの黒いトリケラトプスはトリケラー。ぼくたちが知ってる恐竜の名前と大きなちがいはないみたいだけど、宇宙に恐竜がいるなんてびっくりだ。
「ねぇねぇ、宇宙恐竜ってティラノみたいにホネのすがたがふつうなのかしら?」
「ぼくもそれは気になってたんだ。黒いトリケラー? は、ホネじゃなくて肉体のあるすがただったし」
「うむ。わたしも本来のすがたはトリケラーと同じように肉体をもっていたが、わけがあってこのような、ホネのすがたになってしまったのだ」
わけってなんだろう? 宇宙の恐竜……。ぼくたちが知ってる恐竜とのちがいが気になって仕方ない。
「そうだったの……。でも宇宙恐竜ってすごいのね。ツバサがないのに飛べたり地面にもぐったりできるなんて。正人もそう思うでしょ?」
「う、うん」
それにしても、ティラノの身体ってどうなってるんだろう。ホネしかないのに、おかしも食べれるし、ナゾだらけで頭がパンクしそう。でも、これは現実なんだよね。
「ねぇねぇ、ティラノも空を飛べるの?」
「わたしたち宇宙恐竜にできるのは空間移動――つまりワープだけだ。地面にもぐることができたのはおそらく悪い心のチカラだろう」
ワープってぱっと移動できるあれだよね。家から学校とかだがし屋さんにワープできたらすごく便利だろうなぁ。
「宇宙恐竜ってすごい!」
「ただ、ワープにはものすごくエネルギーを使うからくり返してやるのはかなり大変だ。おかげでトリケラーと組み合ったときに、チカラが出なかった」
そういうことだったんだ。あれ、でも……。
「トリケラーも急に空からあらわれたし、ワープでエネルギーを使ってたんじゃない?」
「うむ、その通りだ。どうしてあんなにもエネルギーが残っていたのか……。あやうく負けてしまうところだった」
たしかに、トリケラーだけが元気なのはおかしい。
「なんでだろう。カノちゃんはどう思う?」
「うーん。あ! もしかして」
カノちゃんは目をキラキラさせてクッキーを出して見せる。
「ティラノはこれを食べたら元気が出たでしょ? きっとだがしでエネルギーがかいふくするのよ!」
「うむ、たしかにそれを食べたら、すごくチカラがわいた」
そう考えると、だがしに特別なチカラがあるのはまちがいない。
「トリケラーはカノちゃんが投げたドーナツを食べたから、エネルギーがかいふくしたんだ」
「じゃあ、あたし、ダメなことしちゃったのかな?」
「いや、きみたちのおかげでわたしは助けられた。ありがとう」
ティラノはホネの頭でぺこりとおじぎをした。
「そうよね! どういたしまして!」
「カノちゃんは調子いいなぁ」
「べつにいいでしょ!」
「アッハッハッ」
ティラノが大きく笑うとカノちゃんはほおを赤くして口をとがらせながらそっぽを向いてしまった。
それにしても、トリケラーはどこへ行ってしまったんだろう。またあらわれたら大変だ。
「そういえば、二人のことをどうよべばいい?」
ティラノに聞かれて、じこしょうかいをしてなかったと思い出した。
「えっと、ぼくの名前は久竜正人、小学四年生です! 正人ってよんで」
「あたしは倉骨カノ! 同じ小学四年生! 正人よりちょっとお姉さんだけどね! カノでいいよ」
「なんだよ、少したんじょうびが早いだけじゃないか」
「ふふーんだ」
すぐに弟みたいなあつかいをしてくるんだよなぁ。ぼくより数日だけたんじょうびが早いだけなのに。
「正人にカノ、いい名前だ。ここで出会ったのはなにかのえん。二人とも、トリケラーから悪い心を消すため、わたしにチカラをかしてくれないか?」
「え? ぼくたちが?」
「そうだ」
「でも、ぼくたちが恐竜と戦うなんてムリだよ」
「そんなことはない。たとえばさっき正人がくれたもの。あれを身体に取りこむと不思議とチカラがわいてきた。あのチカラがわたしには必要だ」
「あたしたちはだがしでティラノにエネルギーをあげて協力するってことかしら?」
ティラノはカノちゃんの言葉にゆっくりとうなずいた。
でも、どうやってトリケラーを見つけたらいいんだろう。次、どこにあらわれるかなんてわからないよ。もしかしたら急に目の前へあらわれるかもしれないし。
「正人、急に考えこんでどうかしたの?」
「うん。トリケラーが、またすぐにあらわれるかもしれないと思って」
「それならだいじょうぶだ。トリケラーはすぐにはあらわれない」
「よかったぁ、正人、だいじょうぶだって!」
どうして言いきれるんだろう。
「うーん……。ティラノ、理由をくわしく聞かせてよ」
「うむ、トリケラーはわたしのこうげきで大きなケガをした。それがかいふくするまではおとなしくしているにちがいない。ケガをしたままわたしとは戦いたくはないだろう」
「そうよね、ティラノの大きな歯でかまれたんだもの。正人、いまは心配いらないんじゃない?」
でも、ケガが治ったら、次はどこにあらわれるんだろう。全然、そうぞうできないよ。
「うむ、正人の心配もわかる。いまはだいじょうぶだが、ケガが治ったらおそらくまたここへやってくるだろう」
「どうしてわかるの?」
「トリケラーは、わたしと同じようにエネルギーのもとになるだがしを食べた。それなら、そのチカラを求めて、必ずここへ来るはずだ」
たしかにこのあたりだと、カノちゃんが投げたヤンチャドーナツはだがし屋さんにしか売ってないかも。
「ねぇ、それってだがしを食べにくるってことよね?」
カノちゃんが不安そうな顔で問いかけた。
「そうだ。あれは、わたしたち宇宙恐竜に不思議なチカラをあたえてくれる。トリケラーにわたしてはいけない」
「そう、よね……」
カノちゃんはうつむいたままじっとしてる。気のせいか顔色がさえない。もしかしたらドーナツをトリケラーに食べさせてしまったのを気にしているのかもしれない。
「いまの話だと、だがし屋さんがあぶないってことよね?」
「う、うん……。そうなるかも」
「それってあたしのせきにんだよね。トリケラーにドーナツを食べさせなかったらだがし屋さんがあぶない目にあわなくてすんだのに。どうしよう……」
やっぱりドーナツのことを気にしてたんだ。でもカノちゃんが悪いわけじゃない。
「カノのせいじゃない。むしろきみの行動がひがいを出さずにすんだ。そうでなければトリケラーはもっとあばれていただろう」
そうだ、ティラノの言うとおりカノちゃんはだがし屋さんを守ろうとした。なやむことなんてないんだ。
「ティラノ……。ありがとう」
「カノちゃん、ティラノといっしょになんとしてもだがし屋さんを守ろう!」
「うん! 正人もありがとう」
こわいけど放っておくわけにはいかない。……守りたい! だってだがし屋さんはぼくらの居場所だから!
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