Act.2 転職したら青色のユニットになっていた件

 ――地球。

 某極東の大きな山(富士山と言うらしい)の麓にある地球防衛軍秘密研究基地。

 地球防衛軍司令部、特殊収容区画。真っ白な小部屋の中、そこに拘束された侵略少女が二人、大き目なベッドで寝転がって天井を見上げていた。


「ユティ~、急に画面が暗くなったら、ここに場面が切り替わったんだけど」


「地球側もテレポート装置を持っていたってこと? わからないけど……それを不思議だと思わないのも、どうしてなんだろう」


「まっいっか! ここは地球側の施設? みたいなとこだし! ふわぁ、ねむ。これ、ふかふかしてきもちい~」


 大きな欠伸をして、ごろんとユティに背中を向けるように寝返りをうつ。


「メルピ。練習、しよっか」


 何やら熱っぽくメルピの背中を見つめるユティ。


「……ブレないね」


 ガシィィィン! ガシィィィン!


 何やら重厚な足音が響いた。音は少しずつ大きくなってきており、こちらに近づいてきているようだ。


「なになにっ!」


 ユティの抱擁を抜け出したメルピが、一面透明な壁に貼りついて音の方を見ようと顔を半分埋める。


 ガシィィィン! ガシィィィン!


 一定のリズム。全く同じ音。


「うわああああ!!」


 素っ頓狂な悲鳴を上げ、メルピが飛び跳ねて、空中で走るようにユティの背中に隠れた。


「侵略者たちよ。博士がお前たちが所持していたデバイスを解析したことにより、言語翻訳が可能になった。これで会話が可能だ。転職希望……間違いないな?」


 現れたのは全高およそ三メートルのロボだった。言葉を発する度に目がチカチカと点滅している。ちなみに、機械獣はだいたい二十メートルくらいで、地球ロボはそれよりも少し大きい。


「ちちち、地球人ってロボだったのーー!?」


「えっ、違う! ロボ×ロボなんて見たことない!」


 白と赤を基調としたシルエットは変わらないが、よく見ると金色の角が無かったり、顔が少し丸かったり、そもそも体が縮んでいる。あと、胸に肉食系の動物の顔をモチーフにしたような意匠が施されている。


「私は地球人ではない。人々の愛と勇気と希望を護る、義勇者ロボだ」


「勇者?」


 メルピが首を傾げる。ツインテールが?の形になった。目がチカチカ光って眩しいし、どこから声が出ているのか謎だったが気にしてはいけないと感じた。


「義勇者だって」


 そのツインテールをくしゃくしゃにして念のため訂正しておくユティ。


「ん? まずは自己紹介といこう。私の名前はアーク。お前たちの名前は?」


 その言葉に反応したユティはベッドの上に立ち上がり、敬礼してみせる。


「私は第六戦術生体兵装侵略部隊、隊長のユティ・ティング=タングス。TN-3F級巡洋艦オーバーラップに配属されておりました。こっちは副隊長の……」


「メルピだよっ、よーろぴっ☆ ねー、ロボくんー。メルピのシュークリーム返してほしいなーだめ?」


「ちょっとメルピ、黙ってて! 今たぶん面接中なんだから! 失敗したら司令官のところに帰されちゃうよ!」


「ロボ……くん……違う……わ、私はアーク」


 何やらアークの細いサングラスのような瞳が真っ赤に染まっている。そしてその後青に変化した。なぜかテカテカしている。また、後ろのヒートシンクのような排熱機構も熱を帯びてきているようだ。僅かに煙が立ち上っていた。


「ローボくんっ♪ メルピ、シュークリーム、食べたいの~。ふわふわでぇ、とろとろのぉ、ほしいの」


 困惑しているロボに近づき、首を傾げながら顔を見上げ、両手で軽く作った拳を口元に添えて懇願するメルピ。相当お腹が空いているようだ。


「ロボくん、違う、私は、アーク……シュッシュッシュッ!」


「あれ、大丈夫かな? 変になっちゃったロボくん! なんか可愛い♡」


「待って! 私たちもなんか変だよ!」


 違和感。ユティの頭の中で何かが開きそうだった。

 インター……、インターミ……。


 そのとき――

 基地全体に猛々しい警報が鳴り響いた。至るところに黄色い「CAUTION」のホログラムが浮かび上がる。


『基地上空に空間跳躍の反応多数! 識別コード不明! 新手の侵略勢力と推定!』


 続いて、大人びた女性の声がアークの体内から発せられる。


『アーク、どこ!? 緊急出撃だよ! コード:インフィニティ!』


「博士! ――コードインフィニティ! レディー!」


 ガシィィィン! ガシィィィン!


 回れ右して走り去ろうとするロボ。


「ちょ、ちょっと待って下さい! 侵略なら私たちの仲間かもしれません! 私たちも連れて行って下さい!」


「ええ!? しれーかんが来たってことぉ?」


 ガシ……。アークの足音SEが止まる。


「……信じていいんだな?」


「はい!」 


「大丈夫だよー、ロボくん! メルピたち、しれーかんとはぜっこーしたから!」


「ロボくんは……や、やめてもらいたい。じ、時間がない、付いてくるんだ!」


 ウィィィンと、透明の壁の一部が開かれる。アークとユティとメルピは格納庫へ向かって走り出した。



 > > >



 地球防衛軍極東支部 上空―― 

 格納庫に映し出される巨大スクリーン。既に基地は攻撃されていて、シールドで防いでいる状態だった。映っている数十にも及ぶ黒い人型の機械。羽もないのに空を飛び、手に持っているライフルがレーザーを放っている。


「なにあれ! オーバーラップにあんなのいないよ!」


 格納庫には例の地球ロボ、そしてなぜかユティとメルピが乗ってきた機械獣、ここで正式名称を紹介するが汎用侵略用戦闘怪獣サンシキ、通称「サンシキ」が格納されていた。元々赤色だった関節部分などが、青色で塗り替えられている。どうやってここに運んだのかは場面が暗転した以上不明だ。


「ならば、新手の勢力か……!」


「え、うそっ! クロスオーバー侵略!?」


 別のスクリーンには、未知の形状の艦隊が三隻、地球へ向けて降下している様子が生配信されている。


「いくぞ!」


 アークがアクロバティックな跳躍を決めると、地球ロボ(インフィニティ・アークと言うらしい)の胸部が誘導灯で光り、アークを包み込んでいく。


『急げアーク! もうバリアが持たない!』


 基地を守るバリアが明滅を繰り返し始める。

 出撃が先か、バリア破壊が先か、ユティが生唾を飲み込んだその瞬間。


 別方向から、蒼い閃光が空を裂いた。

 その光は青白い軌跡を描きながら、基地を襲っていた黒い機体を次々と撃ち落としていく。爆発音とともに、すべての敵影が一瞬で消えた。


『……ヴァルファー、空間転移完了。これより当該領域を制圧する』


 弧を描くような青色の軌跡が、目にも止まらぬ速度で旋回している。その動きはまるで空を滑り、踊っているかのようだった。そしてぴたりと空中で制止し浮遊する姿は、地球ロボ(インフィニット・アークとか言うらしい、ん? どっちだ?)とは、まったく別物と言っていいほどかけ離れている。

 骨格が浮き彫りになるほどの細身で鎧のような装甲を最小限に身に纏う機体。そして背中には、煌めく光翼が四枚――羽ばたくたびに空間が虹色に染まる。

 インフィニティ・アークとはまた違うBGMが聞こえてくる。女性コーラス付きの流れるような高音の旋律が印象的な曲だ。サビに近づくにつれ、アップテンポでベースラインが激しく強調されながら、コーラスと共に盛り上がっていく。


「わー!! しれーかんの言う、主人公みたいなの来たーー!!」


「待ってメルピ。画面の上下が黒帯になってきてる!」



 速報!


 ――私が終わらせる。ヴァルファーとなら……!


 参加勢力紹介!


 ――黎明のヴァルファー



「ほら!」


「また暗転だー!」





 つづく……!



────────────────────


あっ、待って下さい! ユティです。

暗転の前に、オヤクソクのアレをやれと誰かに言われた気がします。


インター……インターミ……。

じゃなくて、

フォローや☆評価、コメント下さると練習用の資料が増えるかもしれません。

https://kakuyomu.jp/works/16818792438581256814


おっとこれは、私が切実に望んでいることですね。


ええと、次回予告?

空気にならないよう、一生懸命練習します!


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