第3話 やれること
ラスボスくんの事情に関わると言っても、残念なコトに俺はただの子供なのでね、正直根本的な部分をどうこうするってのは難しい。
人には人の事情ってのがあり、ソレに首を突っ込むのは容易ではない。
そもそも現状一番の問題点は父親なのだ。
正確にはただの同居人だけど、呼びやすさを考慮して父親と呼ぶことにする。
さて、ただの同居人を父親って呼ぶところから分かる通り、そもそも俺と同年代の子供が親でもない男と同居してる事もそうだが、ラスボスくんには中々面倒な事情がある。
原作の一読者としては物語としてへぇで読んでいたが、いざリアルとして認識すると本当に厄介なことになっている。
面倒というか、そこまでするかというか、原作者はラスボスくんを気に入ってたんだろうなって感じの事情。
実の母親も、この同居人の父親も、作中で実際に描写されてたけどキャラデザがいい感じだったんだよな、実の父親はいなかった。
ラスボスくんの過去編は本当凝ってたというか、乗ってたんだろうな。
まず、ラスボスくんには現状親がいない。
否人間である以上母と父は存在するし、その二人が死んだという情報は原作には全くなかったので、この世界のどこかにはいるんだろうけど。
兎に角ラスボスくんの周りにはいない。
では今どこで生活しているのか。
勿論知っている、ラスボスくんの母親がちょっと前まで交際していた男の家だ。
何故そんなことになってるのか。
母親が置いていったのだ、その男の家を出ていくときに。
つまりは、元カレの家に自分のガキを捨てて行ったってワケ。
そもそもの話、父親に育児義務はない。
なら出て行った女が自分の家に置いてった子供を施設に預ける、は手続きとか面倒だし他人のガキにやってやる義務はないだろうけど。
どっかに捨てるなりしても良かったと思うんだ、育てる気ないくせに態々家に置いておく必要は絶対ない。
でも父親はなんだかんだ一年以上は追い出してはいない。
食事は出さなくとも勝手に何か食べようが何も言わないし、他の女とか友人が家にいる時は外に閉め出すけどそれ以外は家に置いてる。
何というか、最低限そこにいることを容認しているのだ。
そしてラスボスくんもそこにいて何も言われないからずっとそこにいる、暫く出て行けって言われたら出ていくけどしばらくしたら戻っていくって感じ。
マァそこ以外に行くところを知らないからだろうけど。
ね、厄介というか、面倒というか、兎に角関わりずらいことになってるでしょ。
もし必要なかったら関わりたくないくらいには何とも言えない状況。
残念ながら俺には、いい感じの解決策は浮かんでこない。
***
さて、原作でラスボスくんが街を壊滅させるのは能力の暴走によるものだと言ったが、では能力覚醒した時どのような状況だったのか。
まず季節は冬、コレは確定だ、だって雪が降ってたから。
雪の降るような寒空の下、父親が女を家に連れ込み、ガキが邪魔だったから外に出そうとした、けど雪が降るような状況で子供が外にいると不審に思われると思ったのかベランダに閉め出した。
そしてベランダに閉め出されたラスボスくん、寒さに意識が遠のき死を意識し始め、そのタイミングで能力が覚醒。
暴走した結果父親と女が死んだ。
ここまでは事故、本人の意思は多分なかった、無意識下ではあったかもしれないけど。
ただしその先、能力の影響範囲が街全体に及ぶまでの間に父親が自分の能力で死んだ姿を見てラスボスくんが笑う姿があり、それから街全体が描写された。
こんな感じで、何というか、事故と言えば事故だったし、故意と言えば故意だった感じの暴走なんだよな。
別に俺はラスボスくんが父親を殺したことについては何も言う気はない、そもそも関係ない事だし。
あの父親はラスボスくんの命を脅かした、生きたいという意思があるんなら、その障害となる相手は殺してしかるべきであったとも思う。
畜生でも死にそうになったら抵抗するのだ、生きるか死ぬかって状況で面倒な事を考える余裕なんてない。
ここで問題なのは、ラスボスくんが父親を殺した後、ついでのように能力の範囲を街に広げるとこだ。
原作ではモノローグでこうすればいいのかとか、楽しいとか、色々書かれてたわけで。
つまり何というか、事故による暴走ではあったんだろうけど、完全に本人の意思に反しての暴走ではないのだ。
そも、ラスボスくんは原作じゃ特に勉強とか訓練とかしてないのに能力を使いこなしていた。
つまり状況が違えば、暴走すらしなかった可能性もあるんじゃないかな。
だからこそどうにかできる可能性がある、逆に完全に本人の意思が介入する余地のない暴走だったらどうしようもなかったね。
じゃぁ俺が何をするべきなのかについて。
コレは単純に原作のラスボスくんの覚醒のタイミングの介入、じゃぁない。
そもそもの話、覚醒の正確なきっかけが分からないのだ。
果たして死にかけたことによる生存本能なのか、それとも寒くて意識がもうろうとした中で見た雪だったのか、それとも自分がこんなことになっている原因である父親への何かしらの感情だったのか。
全部かもしれないし、俺が予想できないことかもしれない。
これはもうどうしようもない、だって正解が描かれたなかったんだから。
だから俺がするのは単純、止るための理由作りだ。
さっきも言った通り、俺はラスボスくんが父親を殺そうが別にいいのだ。
だから家庭環境をどうにかしようとか、父親をどうにかしようとか、そんな事は思ってない。
というか無理。
家庭環境はラスボスくんが生まれてきた時点で手遅れだ、父親も間違いなく死ぬまでそういう人間だ。
人は変わるというけど、歪んだ人間は歪んだ時点でどうしようもない。
そして例えばラスボスくんを父親の元から引き離したとして、それで安全なのかっていうと、正直何とも言えない。
ラスボスくんの能力はいずれ覚醒してただろうし、その時のラスボスくんの状況は確認のしようがないから原作通り街を壊滅させるかもしれない。
物語でも良くある通り、未来を知っている状況で何かを変えたいのなら、そこに至るまでの大筋を変えるのは不確定要素が多くなりすぎてよろしくない。
変えるのはきっと、ほんの少しでいい。
俺は別に、ラスボスくんを助けたいわけじゃない、ただこのまま放置して起こる事を阻止したいだけ。
だから俺は、ラスボスくんが父親を殺した後、ついでに街も滅茶苦茶にするのを止める、その理由を作ろうと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます