中継3 長身長打

 早瀬光がピッチャーライナーを受けて倒れました。

 大丈夫でしょうか?

 背中を丸め右手のグローブを大事そうにかかえています。

 おっと、いま立ちあがります。

 1塁塁審にグローブの中身をみせました。

 ボールがすっぽりとおさまっています。



 アウトォ!


 

 1塁側の応援スタンドから一際おおきな歓声が沸きあがります。

 ナインがマウンド中央に集まってきました。

 これを早瀬が手を振って下がらせます。

 大丈夫だ、守備位置につけといってるようです。

 解説の荒木田さん、一瞬ひやっとしましたね。


 そうですね。それにしても素晴らしい反射神経です。よく捕りました。見事です。


 今夏、西東京大会決勝戦のこの試合、12ー11と乱打戦になっています。両チームとも控えのピッチャーはすべて使い果たしました。ここで早瀬が倒れたら、もう稲城台は投げる投手がいなくなるところでした。


 両チームとも二桁得点の打撃戦ですからね。まさに総力戦といった様相を呈しています。


 陸王、代打攻勢がつづきます。ネクストバッターズサークルからゴキュージャーの2番手・青柳佑真あおやぎ・ゆうまが左バッターボックスに向かいます。

 なにはともあれ、稲城台はランナーなしでワンアウトをとりました。あと二人、悲願の甲子園初出場を手に入れたいところです。


 甲子園出場にすべてを懸けているのは常連校の陸王も同じですよ。彼らには甲子園大会初優勝という悲願があります。毎回、出場を果たしていますが、いずれも3回戦どまりですからね。だから幾多の非難を跳ねのけて代打専門部隊ゴキュージャーを結成したのですから。


 その青柳が左バッターボックスに入って構えます。190センチ97キロという長身。長い手足でアウトコースの球も楽々スタンド入りさせることができる長距離バッターです。

 早瀬、青柳に向かって第1球、投げました。



    中継4につづく

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