第8話

「あれは今から十二年前、俺が五歳の頃…」

「は?ゴリさん十七?」


 ゴリツヨとマジーナは街をぶらついていた。オタクでも、推しが遠征や出張の日などはごく普通に過ごしている。当たり前ではある。

 末期の同担拒否を拗らせたゴリツヨは、どうにも友達が少ない。それでも、知り合いから暇つぶしに誘われたら乗るぐらいの社交性はあった。

 雑談として自分の来歴でも話そうとした矢先、まず年齢をツッコまれた。


「えー年上だと思ってた」

「じゃあナっさんは?」

「十九だが」

「ニコ上…?」

 ちなみに魔道学園の平均卒業年齢は五十前後である。


「あ、話戻していい?」

「うん」


 遡ること十二年前。当時五歳だったゴリツヨは、魔王の手によって窮地から救われた。

「俺はその日から背の高い巨乳のお姉さんしか愛せなくなった」

「いろんな意味で大変すぎん?」


 助かったはずの息子が、突然「魔王様に仕えたい」と言い出し、両親は困惑した。

 村の長老に相談したところ。

「この子は魔族に魅入られた、この村から離し、東の山の中腹の里で心身を鍛えなおせば助かるやもしれん」

 との決断が下された。


 長老の親類を師と仰ぎ、ゴリツヨは己を鍛えた。山を登り、谷を駆け、兄弟弟子と死闘を繰り広げ、幾度となく死んで蘇った。

「あんまりにも死にすぎて蘇生の女神にウザがられ、それ以来蘇生も死も無効になった」

「あっ、不死の呪いってそういう…」

「慣れると便利だぞ」

「おもろ」

 マジーナは大いに笑った。


 そこから十年が過ぎた。

 ゴリツヨは2メートルはあろうかという筋肉ダルマに育ち、見事に師匠の最終試験を突破した。

 師匠が弟子のゴリツヨへ向けて最後に授けた言葉は、「何食うたらそんなに育つねんお前」だった。


「そして俺は魔王城のすぐ近くのこの街に越してきて、今の推し活ライフに至る」

「魅入られたの全然治ってなくて草」


 与太話の片手間、マジーナは延々とヤァン様缶バッチを自作していた。

「ヤァン様痛バ、次の襲撃ライブに間に合うかな。メンカラー何にしよ」

「紫一択」

「それだ」

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