勇者が魔王に限界!ガチ恋!!同担拒否!!!

かんぽうやく

第1話

「魔王!ファンサお願いします!!」

「え無理、こっわ」

 魔王城の最深部。王の間に今日も勇者が単騎で襲来していた。物々しい玉座に着く魔王は、勇者の奇行にドン引きしている。

 魔族の国センタルの女王、ホマニ・モッウ=ワルデスヤァン。紫肌に金髪ロングが美しい長身巨乳の美女。いかにも魔族らしいボンデージ風の甲冑を身にまとっている。

 相対する勇者、ゴリツヨ。人類最強の男。今日の装備はジャージに無許可で作成した魔王フルグラフィックTシャツと、非公式サイリウム二刀流である。大男の大胸筋で、シャツが張り裂けそうになっている。


「あー塩対応!安定の塩対応ありがとうございます!!」

 勇者は魔王の反応に満面の笑みで悶えている。


「…、ソーヴァ、今日の被害は?」

 魔王は勇者を無視して、片目隠れボクっ娘悪魔の側近ソーヴァに現状報告を聞いた。

「えー、門番…は危機を察知して逃走、のち生存報告済み。地下一階から四十九階まで計二百八十七体に被害報告有り」

 ソーヴァは冷静に数字を読み上げた。

「前回の襲撃より被害率は低下したものの、ここまでの到達時間も早くなってますね」


「罠増やそうか」

「火矢も毒矢も効果ないんですよねぇ、不死の呪い持ちはこれだから」

「落とし穴作ったら底のスパイクごとぶち抜いてショートカットするし…」

 魔王と側近はブツブツと作戦会議に入る。ふいに魔王が勇者に呼びかけた。


「おいゴリツヨ」

「やだ名指し?!認知来た!!ありがとうございます!!」

「貴様、何の罠なら効果がある?」

「何?欲しいグッズ?」

 勇者は話を聞いていない。


「等身大の抱き枕カバーが欲しいですよろしくお願いします」

「つまり、魔王様の抱き枕カバーを吊るしてまとめてどっかに閉じ込めれば足止めに?」

「あーキモいキモい無理無理無理」

 願望を語る勇者、雑な提案をする側近、鳥肌をさすりながら却下する魔王。


 しょうもないコントの最中、乱入者が現れた。

「おのれ勇者め!、人間が魔族に敵うか!、魔王様から離れ──」

 勇者の襲撃を逃げ延びたモブ魔族が一体、玉座の間まで追いついた。仕える主を護るため、長剣を手に勇者へ飛び掛かる。


「勇者パンチ」

「ぶぉっ?!」

 ゴリツヨは特に声のする方向を見るでもなく、虫をはらうように適当に殴って魔族を撃退した。握りこんだサイリウムには、光の妖精の加護が付属しており、魔族に致死効果があった。殴られた魔族はピクリとも動かない。

 その光景を見届けていた魔王は心の中で謝罪し、側近は手持ちの書類の被害報告数をひとつ追加した。


「カバーの表情は『くっ…!人間風情が…!』の抵抗顔と『まったく貴様は…』の恥じらい顔でお願いします!下着は清楚なやつがいいです!!」

「すいませーん、もう時間なので帰ってくださーい」

 妄想を垂れ流す勇者を、側近が引き剥がしにかかる。魔王は多忙で、こんな変態にいつまでも時間を使うわけにいかなかった。多少構ったら帰るので、握手会にくる厄介客みたいな扱いだった。



 変態は帰った。

 ストレスによる魔王の偏頭痛はしばらく治らない。

 あと三日後くらいにまた来た。


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