くさくさ虫さん

山岡裕曲

第1話 2階に潜むくさくさ虫さん

僕の名前は田中海斗。今年小学3年生になった。

夏休み、お盆時期になると大阪から広島のおじいちゃんの家に遊びに行く

おじいちゃんは優しくておもしろい。他の家の子と遊ぶのも楽しい

だから毎年楽しみにしてるんだ


「え!?今年は『アレ』がいるの?えーじゃあいくのやめようかな」

お母さんが何か携帯で話してる。相手はおじいちゃんのようだ

「え、やだやだ!おじいちゃんと遊びたい!」

僕は思わず割って入る。

おじいちゃんはいつもどおりの優しい声でいった。

「そうかそうか、かいとは今年もきたいんだね」

「うん!おじいちゃんだいすきだもん!」

「ありがとう、じゃあおじいちゃんと約束できるかな?」

「なあに?」

「2階にはいかないこと。あそこはエアコンがなくて暑いしくさくさ虫さんが出るんだよ」

「くさくさ虫さん?」

「そう!くさくさ虫さん。きもちわるくてこわーい虫さんがいるんだよ。だからそこに入らないなら今年もきていいよ」

「うん、やったあ!」

「じゃあママに代わってくれるかな?」


ママはおじいちゃんといろいろ話し込んでる。僕は大好きなおじいちゃんに今年も会えると思いうれしくなった


島行きのフェリーに僕たちが乗る車も詰め込まれた

海と自然豊かなおじいちゃんの実家、今年はどんなことがあるのかな?

くさくさ虫さんってなんだろう、そんないろんな気持ちを抱えながら島に近づいていった


おじいちゃんは今年も笑顔で迎えてくれた

「かいと!よくきたの!」

おじいちゃんは痛いくらいぎゅっと僕を抱きしめる

「おじいちゃん、くるしい」

「おっと、ごめんごめん」


今年もおじいちゃんといっぱいお話をした

「ぼくかけ算も余裕なんだ!」

「そうかそうか、かいとはお勉強も得意なんだな!おじいちゃん鼻が高いぞ!割り算で躓くおバカさんにはならないでなハッハッハ」

そんなおじいちゃんの笑い声のすぐあと


ヴヴヴヴヴ!フスードンドンドン!


変な音が2階から聞こえた

「え!?おじいちゃんなに?こわい!」

「前話したくさくさ虫さんじゃな。紗英、蚊取り線香もっていってくれんか」

お母さんは蚊取り線香とバールのようなものをもって2階にいくと


ドゴッ!キャケロビャ!みじを…


変な音がまた聞こえてから静かになった

「お待たせ、これで3日はおとなしくしてると思うよ」

「おおそうか、わるいな。さて、こんなのがいるから2階には…」

「いっちゃだめなんだよね!ぼくおじいちゃん大好きだからいかない!」


えらいぞー!とまた強めに抱きしめられくるしいけど嬉しい時間がきた


こうしてぼくの夏休みがはじまった。

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