過去へ
暗闇の中、ポッドは低い唸りを上げていた。
やがて金属の軋みが混じり、耳障りな音が響き始める。
――ギィ……ギギギ……ッ!
蓮は異変を感じて目を見開く。
「おい……今の音、なんだ……?」
仲間の誰も答えられない。
重力がぐらりと傾くような感覚に襲われ、体が引き裂かれるような圧力に押し潰されそうになる。
――ドンッ!
突然、内部に警告灯が点滅し、真っ赤な光が狭い空間を照らした。
「重量オーバー……?」
白神が低く呟いた直後、機械全体が大きく震えた。
――ゴゴゴゴ……!
激しい振動と共に、外の景色が信じられない速度で流れていく。
それはただの加速ではなかった。
色が滲み、形が崩れ、音と匂いすら混ざり合う。
空間そのものが、壊れていくようだった。
「やばい! このままじゃ――!」
蓮は本能的に、足を振り上げた。
――ガァンッ!
分厚いガラスを蹴破る。
破片が四散し、冷たい風が吹き込んだ。
次の瞬間、彼の視界に飛び込んできたのは――
見知らぬ世界だった。
さっきまでの研究施設は跡形もなく消え失せている。
代わりに、広がっていたのは果てしない草原。
遠くには歪んだ城壁のような岩山が連なり、紫色の雲が渦を巻いていた。
空気は澄んでいるのに、どこか甘い匂いが混ざり、鳥とも獣ともつかぬ鳴き声が空を渡る。
「……な、にこれ……」
蘭華の声が震えた。
蓮はポッドから這い出し、膝をつく。
そこにあったのは、乾ききった大地。
ひび割れた土の上には、白く風化した骨が散乱していた。
人間のものか、動物のものかすらわからない。
けれど、ただ一つ確かなことがあった。
――ここは、もう“あの世界”ではない。
神谷も、白神も、鷹真も、それぞれのポッドから這い出し、言葉を失って立ち尽くす。
「……施設は? あいつは?」
鷹真がかすれた声で問う。
だが返ってくるのは、吹き荒ぶ風の音だけだった。
蓮は呆然と周囲を見渡す。
遠くの地平には、巨大な遺跡のような建物が影を落とし、その屋根の上には翼を広げた異形の生物が止まっていた。
その姿は龍を思わせるが、鱗はなく、燃えるような光が体内から漏れ出ている。
「……夢じゃ、ないよね」
白神が乾いた笑みを漏らす。
だが誰も笑えなかった。
彼らはただ、呆然と立ち尽くし、息を呑むしかなかった。
ポッドの暴走が、彼らをどこに連れてきたのか。
時間が歪んだのか、空間が裂けたのか。
ここは、まるで異世界ファンタジーのような世界。
そして、あとになって気づくことになる、世界の真実を。
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