豊穣の国へ

@jamNo1

第1話 ①スキルは〇×△操作

 バタバタと坂を走って、教会のドアをたたいた。ドアはホワイトオークでできていてとても頑丈だが、どんどんとたたいた後、手で押すと軽くスムーズに開いて中に入れた。


 シスターのアンナが振り向いて、

「あら、マルちゃん、どうしたの」

「マルコです。はーはー、ボク、朝生まれたんです」

 頭の上に、ピコンと!があらわれ、

「あれね、5歳になったんだ。司祭さんを呼んでくるわ」


〇×△


 僕の手を取って奥に進んだアンナは、女神像のあるすぐ横のドアをコツコツとたたいた。ブラック・ウォールナットの床がきしむ音を、出さないか、ぼく軽いもんね。


「トランプ司祭、マルコちゃんが祝福を受けに来ました」

「もう5歳になったのか。そこのドアの前に行って」

 司祭と僕はその女神像の下にある小さなドアを開けて中に入った。壁際には、大きな人の顔ような石板が樫の木の丈夫な机の上に置いてあって、

「その口みたいな穴に手を突っ込んでね。肘まで入ったら、手のひらを開いて、女神さまにお祈りをするの」


 なにやら、手のひらがしびれたような気がするけど、

「えーとスキルは〇×△操作で、魔法は土魔法レベル1だね。これ、ご両親に伝えてね」

「あの-、土魔法はわかるけど、〇×△操作ってなんですか」

「わからん、私の記憶にもないね。王都に出かけたときにでも記録係に調べてもらうよ」


〇×△


 小さなドアから出たら、アンナが待っていて、にこにこしている。

「素敵な祝福をもらったのかな?おめでとう」

「土魔法はブドウ園の畑仕事に生かせるからうれしいよ」

 アンナは僕の両手を握って一緒に飛び跳ねてくれた。


「いたた」

「どうしたの、指の先から血が出てる」

「さっきバラを摘んでたら、とげに引っ掛けたのよ。いつものことだわ」

 僕は、いつも使っている塗り薬を出して、アンナの指に塗ってマッサージをした。こうすると、早く薬がしみ込んで止血できるそうだ。


「ありがとね。こっちにきて」

 アンナは、北側にあるドアの外に連れて出て、

「いま、新しいバラの接ぎ木をしてるの。いつも、女神アンジェリーナに、四季咲きになるように、トゲがなくなりますようにとお祈りをするの。

 でも、信心が足りないのか、実現したことはないの」


「それじゃー、僕もトゲがなくなりますようにってお祈りするね」


〇×△


 僕は教会の畑を出て、坂道を上がって自宅に着いた。

 家族や近所の人たちはブドウの収穫を終え、宴会の用意を始めている。今日はブドウの収穫の最後の日だ。なので、教会に両親は忙しくて一緒に来てくれなかった。


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