部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜
ウエス端
プロローグ
バシィーンッ!!
ボールを叩き潰したような強烈な打球音が球場内に響き渡る。
右中間方向へと放物線を描いて飛んでいった打球は、浜風の逆風をものともせずにあっという間にライトスタンド上段に突き刺さった。
「ホームラン! 特大ホームランだ! スゲえぞ兄ちゃん!」
オレは嬉しさのあまり思わず両拳をぐっと握りしめながら兄ちゃんがベースを1周するのを見つめている。
兄ちゃんの一発で1点リード、後はそれを守りきるだけだ。
そしていつの間にか敵チームの9回の攻撃もツーアウト。
打席にはいかめしい顔つきで筋骨隆々の大男が右打席に立ち、兄ちゃんが今度はマウンド上で対峙している。
「おりゃっ!!」
雄叫びと共にその右腕から投げ込んだ豪速球が決まり、ツーストライクと追い込んで……。
ブンッ!!
空を切り裂く風切り音が観客の耳をつんざき、間髪入れずにバシッとキャッチャーミットから小気味よい捕球音が球場内に轟いた。
最後は兄ちゃんの決め球……ホームベースを横切って大きく変化するスイーパーに、大男が渾身の力でスイングしたバットが空を切ったのだ。
これでスリーアウト、ゲームセット!
「うおおおーっ!!」
兄ちゃんが帽子を投げ捨てて叫びながらチームメイトたちと抱き合っている。
遂に……遂に兄ちゃんが優勝したんだ! 夏の甲子園で!!
「やっぱ、兄ちゃんが最強だーっ!」
オレは自分の大声にハッとした。
そして目に映ったのは自分の部屋の天井の模様だ。
あれは夢、だったのか。
そりゃそうだよな、だって兄ちゃんは……。
それにしても最後の打者の顔、どこかで見た記憶があるんだが思い出せない。
いやコイツだ。オレはベッドの近くに転がっているゲームソフトのパッケージの絵を見て思い出した。
昨晩ようやくクリアしたゲームの登場人物……ラスボスの魔王だった。
それにしてもあんな夢見るなんて……もしかしたら。
いや期待するのはよそう。これまでも同じようなことがあって、何度裏切られたか。
「オージロウー! 早く起きないと遅刻するわよー!」
姉ちゃんの声だ。そんなに急かさなくてもまだ余裕があるのに。
とりあえず起きてリビングに行くと既に姉ちゃんの姿は無かった。
何がそんなに忙しいんだか……オレは朝食を口に詰め込むと少し急ぎで支度をして、若干早足で道を歩いていく。
ふあー。今日も授業を受けて、終わったらすぐ家に帰って……まだクリアしていないゲームでも解こうかな。
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