第18話 ふわもこヒーローズ誕生と父さんの早すぎる帰宅

 それはショッピングセンターへ買い物に行った2週間後、突然もたらされた。


 この日俺たちは、朝から家でゆっくりしていて。俺はクルルたちのヒーローショーを見ていたよ。買い物の後、やっぱりというか何というか、ヒーローなりきりセットでヒーローごっこと。ファッション小物詰め合わせで、可愛いを楽しんでいたクルルたち。


 でも、よくよく考えたら、ヒーローセットのサイズが合うのが、クルル、ピィスケ、くまチョコ、ランガ、ぽん吉でさ。他の子達じゃダメじゃんと気づき。

 もう1つ同じヒーローセットを買いに行って、クルルたち5匹分のヒーローなりきりセットは全て揃え。他のヒナタたちの分は、俺と母さんでで手作りする事に。


 だから買い物に行ってから1週間は、訓練以外は裁縫作業と工作で忙しかったよ。でもなんとか作り終えると、2日間、俺と母さんから離れないほど、みんなとっても喜んでくれてさ。大変だったけど、作って良かったよ。


 そうしてその後は、みんなヒーローごショーをじいちゃんたちに見せるんだと、ヒーローショーの練習をしているところで。俺がそれをチェックする係りらしく、毎日ショーの練習を見させられている。


『くるくるふわもこクルルぷー!!』


『コロコロふわもこくまチョコくま!!』


『モコモコふわもこランガなんだな!!』


『ふ、ふんわりふわもこピィスケです!!』


『ぽんぽこふわもこぽん吉だぬ!!』


『『『5匹合わせてふわもこファイブ!!』』』


『おお~!! なかなか良いね』


『それぞれ違う可愛い登場も良いけど、私たちみたいに、5匹合わせた登場もなかなかじゃない?』


『ランガお兄ちゃん、可愛いしカッコいいなの!!』


『確かに良い感じですね。ですが最後が我々と同じです』


『俺もそれが気になったんだよな。どうせなら違う方が良くないか?』


『そうぷーね。何が良いぷー?』


『スマイル隊?』


『ふわもこーず?』


『ふわもこラブリーズ?』


 全員で考え始める。これ、俺必要か? 俺、1度もアドバイスしてないけど。みんな自分たちで考えて解決するのにさぁ。まぁ、俺に可愛いを聞くのもあれなんだけど。


『なんか違う』

 

『ですわね』


『あっ! この前、この絵本買ったぷー。ヒーローのお話の絵本ぷー。この中のあやかしはこれだったぷー。ぼくたちもこれにするぷー!! 『5匹合わせてふわもこヒーローズ!!』ぷー!!』


『あっ!! それ良いね!!』


『ヒーローだもんな!』


『良いじゃない。それにしましょう!』


『なぁなぁなんだな。今度はこの前戦わなかった、オレたちが行くけどなんだな。その後戦う時は、5匹でやってみたらなんだな。せっかく考えたから、やらないのもったいないんだな』


『ボクやりたいくま!!』


『ぼくもぷー!!』


 どんどんいろんなことが決まって行く。戦闘のことは、俺に相談して欲しいんだけど? それにその時その時で、戦闘に行くメンバーは変わるんだから、5匹で行けるかまだ分からないだろう。


 と、ここまで盛り上がっていたみんなだったけど。ここで、不満を表すふたり組が現れた。ユキとルーナだのちびちびコンビだ。


 ルーナはランガをお兄ちゃんと慕っているけれど、歳の近い姉弟って感じで、良くユキと2匹で一緒にいるんだよ。しかも2匹とも、サイズが小さいところも同じだし。だからちびちびコンビって呼ばれている。


『ユキくんも、それやりたい。みんなで一緒にやるやつ。みんなばっかりずるい。ね、ルーナ』


『うん。あたりたちもやりたいなの。お兄ちゃん、お姉ちゃんたちばっかり、可愛いけどずるいなの』


『なら、私とやる? えーと、私とユキとルーナとセレナとカーピ。ちょうど5匹でしょう?』


『そうですわね。カーピは戦わないけれど、でもいつも私たちを元気にしてくれる、ヒーローですわ。一緒にやらないとダメですわ』


『でしょう? だからみんなで考えようよ』


『ユキくんやれる!? やったー!!』


『みんなで可愛いなのぉ!!』


『ぼくもやるぅ? わかったぁ』

 

 はぁ、これでまた明日から、あーだこーだと長い話し合いが始まるのか……。なんてそんな事を考えている時だった。


「ただいまぁ!」


「え? 父さん?」


『パパ帰ってきた!?』


『お仕事早く終わったのかなぷー?』


『そうかもくま!! ねぇねぇ、ボクたちの5匹の見てもらうくま!!』


『そうなんだな!! 見てもらうんだな!!』


 わあぁぁぁっ!! とみんなが玄関へ走って行く。何だ? みんなの言う通り、本当に今日は早く仕事が終わったのか? いつも遅くなることばかりで、早いことはほとんどないのに。


 父さんも母さんも、結び手として協会に所属している。そして結び手の中では、トップクラスの結び手だから、いろいろやることがあって。なかなか時間通りに、家に帰ってくることがないんだ。


 特に父さんは月に1度、早く帰れたら良い方で。それでも1時間早く帰れるだけだし。今は14時。今までこんなに早く帰ってきたことなんてあったか? もしかして何かあった? 怪我をしたとか、もしかして母さんに何かあったとか!?


 俺も慌てて玄関へ行く。するとニコニコとヒーローの話しをしているクルルたちの姿と。その話しをニコニコ聞いている父さんの姿が。あんなにニコニコしてるなら、怪我とか、何か問題があったんじゃないのかな? 俺は父さんに声をかける。


「父さんお帰り」


「ああ、ただいま」


「どうしたの、こんなに早く帰ってきて。何かあった?」


「いや、ちょっとな」


 ちょっとって、やっぱり何かあったのか? 


「もしかして怪我したの!? それとも母さんに何かあった!? こんなに早く帰ってきてるんだから、ちょっとじゃなくて、大変なことがあったんじゃないの?」


「ああ、違う違う。そんな大問題は起きてないから心配するな。ゲートも開かれてないしな」


「それじゃあ何が……」


「ちょっと面倒な話しを聞いてきたもんだから、和也が早く帰してくれたんだよ」


「面倒な話し? もしかして他の場所へ移動になったとか?」


「まさか、それはないさ。俺は引っ越しが面倒だから移動はしないって言ってあるからな。まぁ、何かあれば手伝いには行くが、引っ越しはしない。と、話しは後でしてやるから。父さんまだ、お昼ご飯を食べてないんだよ。先に食べさせてくれ」


 そう言い、クルルたちにも後でヒーローショーを見るからって言うと、サッサと自分の部屋へ行き。普段着に着替えると、カップラーメンを作り食べ始めた。


 本当に大した問題は起きてないのか? あれだけ落ち着いてるもんな。本当に面倒な話しを聞いてきただけ? 


 俺はリビングに戻ったけど、ダイニングでカップラーメンを食べている父さんを、チラチラと見てしまう。って、昼からビール飲むのかよ。しかもコップに注いだの、一気飲みしてるし。あんなに幸せそうな顔。これは本当に心配しなくて良いやつっぽいなか?


『優希、見てぷー!!』


『練習くま!!』


「ああ、今見るよ!」


 俺は少しホッとして、クルルたちの練習を見始める。父さんは、問題がある時は絶対にお酒を飲まないからな。


 となると、その面倒な話しだけど。一体どんな話しを聞いてきたんだろう? 移動じゃないって言ったし、もしかして母さんが、また高い武器をまた壊したとか? それでクレームが入った?

 

 それとも俺のことで何か言われたかな? 怒られるようなことはしてないはずだけど。それにそれなら、すぐその場で怒ってるよな?


 じゃあ、父さんが何かやらかした? まぁ、そんなことがあったら、ビールを飲んで、ぷはぁー! と声を出して、笑顔になんてならないだろし。


『優希、ちゃんと見てぷー!!』


『今、見てなかったなんだな!!』


「あ、ああ。悪い悪い」


 気になりながら、クルルたちの練習を見ること約20分。父さんがこっちへ来ると、昼寝をしてくると、自分の部屋へ行こうとして。慌ててなんの話しだったのか、教えてくれないのかって聞いたら、昼寝の後で話すと言い、サッサと自分の部屋に行っちゃったんだよ。


 何だよ、こっちは気になって仕方ないのに。そう思いながら、待った俺。ところがだ、結局話しを聞けたのは、まさかのクルルたちが寝静まってからだった。

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