第11話 デートが余る …って、はぁ?

 月曜日が始まった。

 土曜の夜から今朝方まで、執拗に詰問して来る母とユカリ

「お兄ちゃん、ホントに大丈夫ね?

 変なお手付きはしてないよね?」

「あらあら、親御さんへのご挨拶はどうしましょう…。」

 知らぬ間に、僕とアカリの関係が盛大に盛られている。

「アカリとは、何も起きてないよ。」

 告白はしたけど…

「わぁ~『アカリ…』だって。

 お兄ちゃん、確認するけど、ホントに大丈夫?」

「これは、お父さんにも早急に帰ってもらわないといけないわねぇ。」

 土曜の夜からず~っとこの調子…。


「あ~、もぉ。

 行ってきます!」

 白い長ラン正装の襟を正し玄関ドアを開く僕。

「あ~、待って!

 お兄ちゃ~ん!」

 ユカリも玄関ドアに降りてきた。


「「行ってきまぁ~す!」」

「行ってらっしゃい!」

 母は幸せそうな笑顔で僕らを送り出した。


 ーサダノブ sideー

「よぉ、サダノブぅ。

 元気にしてたかぁ?」

「ああ、主将おやぶん、お疲れ様です!」

 部室に行く途中、部長に声をかけられる。

 二人揃って歩き始める。

「ところで、土曜日は『お楽しみ』だったようだなぁ?」

 お楽しみの言葉が、ヤケに低音でゾクゾクする。

「ハ、ハイィ!おかげさまで。」

「彼女を帰宅するまで送り届けた事は褒めてやる。」

 何だか怪しい雰囲気。

 部室に到着しドアを見ると、まがまがしい妖気も漏れ出している。

「しか~し、腕を組んで歩くなど、何と破廉恥ハレンチ!」

 ズゴゴゴという効果音が聞こえてきそうな感じで部室のドアが開き、中には先輩方が悪い笑顔で待機している。

「連行!!」

「「「「イーッ!」」」」

 部長の激に答え、僕を担ぎ上げる先輩方。

「え~~~~っ!」


 そして、僕は愉しい拷問の時間に招かれるのでした…って、何でぇ?


 ーユカリ sideー

 ここは図書室、そして現在、委員会活動の真っ最中なんだけど…

 アカリ先輩の言動がオカシイっ!


 まぁ、先週から一変して垢抜けた感じは…良しとしましょう。

「ん~。

 ふふ、うふふ。

 へ、えへへ。」

 先程からず~~~っとこの調子。


「あ、あのぉ、アカリ先輩…。」

「どうしました、ユカリ♪」

 わぁ~~~、『ユカリ』呼びになってるぅ~~~!

 先週までは『ユカリさん』呼ばわりだったのに…よく聞けば音符まで着いてるぅ~~~!


(ヤバイ、これは絶対何かやらかしている!

 帰ったら、兄貴の首根っこ締め上げてでも白状させる!)

 私は強く心に誓った!


 ー母 sideー

「あ、お父さん?私です。

 お仕事中ごめんなさいね?お時間大丈夫?

 実はね、サダノブに彼女が出来ちゃって…


 え、ユカリの事?

 違う違う、普通に同級生の彼女が出来たのよ。


 え、サダノブは男子校ですって?

 知ってるわよ!これでも、あの子の母親ですよ。

 あ、同級生に引っかかたのね…ごめんなさい。

 大丈夫、ちゃんとした女の子よ。

 一度話したことあるでしょ、渡辺道場の御令嬢『アカリ』ちゃん。

 そうそう、気立てが良くて器量もいい子。


 え?サダノブには勿体ない?

 そうねぇ、ちょぉ~と手に余るかもしれないわね。

 でも、貴方の子よ。

 貴方だって、私を持て余し気味だったでしょ?

 アカリちゃんは賢そうだし、ユカリともウマが合いそう。

 ええ、私も楽しみにしているわ…初孫ってかわいいようだし。


 は?お手付きしているか?ですって?

 そ、そうねぇ、多分無いとは思いたいんだけど…貴方の子だから、やりかねないわね。


 うん、分かった。

 来週末には帰宅予定ね。

 先方への挨拶準備も済ませておくわ。


 うん、それじゃ♪」

 したり顔で母は電話を切った。

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