世界一のどうでもいい勇者!?

@rinngo514

第1話 勇者、第一歩で転ける

 時は遥か昔。人類は魔王の脅威に怯え、救世主を求めていた。

 その救世主こそ――俺だ。

 「勇者カズヤ!今こそ立ち上がり、魔王を倒す旅に出るのです!」

 大賢者が神妙な顔で言った。

 俺は胸を張り、剣を抜いた。

 「任せろ!俺が人類を救って――」

 その瞬間、剣がスポーンと抜けすぎて後ろにひっくり返り、顔から地面に突っ込んだ。

 「ぐべぇっ」

 大賢者は冷たい目で言った。

 「……第一歩から転ぶ勇者を、私は初めて見ました」

 それでも俺は立ち上がる。勇者だし。かっこよく見せたいし。

 だが、装備が問題だった。

 鎧はキラキラ光る最新式……と言いたいところだが、予算不足でレンタル品。

 なんと「3日間返却プラン」。旅が3日以上かかったら、延滞料金が発生する。

 「おい大賢者、魔王の城まで徒歩で何日だ?」

 「……2か月ですな」

 「破産確定じゃねーか!」

 さらに、仲間集めの話になった。

 大賢者が言うには、戦士・僧侶・魔法使いの3人を探せばバランスがいいらしい。

 だが俺が町で最初に声をかけたのは、八百屋のおっちゃんだった。

 「おっちゃん、剣とか興味ない?」

 「毎朝キャベツ切ってるから腕には自信あるぞ!」

 「よし、採用!」

 こうして八百屋のおっちゃんを仲間にし、俺とおっちゃんの2人パーティーが誕生した。

 ちなみに僧侶も探したが、教会にいたのは「募金箱泥棒で捕まった僧侶」だけだった。

 魔法使いを探そうとしたら、「魔法より株に投資してる」胡散臭いお兄さんが現れた。

 「勇者様、パーティーの将来より、この新興株の将来性に賭けませんか?」

 「黙れ、株魔導士!」

 かくして俺たちの旅は、まともな仲間を集める前からカオスに突入していくのであった。

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