近隣住民の夜間観察記録抜粋
【令和六年度 伊佐鷺裏市役所 防犯推進課 調査報告書 No.B064-追補-09】
作成日:令和六年十一月十三日
作成者:伊佐鷺裏市役所 防犯推進課 臨時職員K
観察者:伊佐鷺裏市役所 防犯推進課 臨時職員K他三名
『前提条件』
令和六年十一月十日午後十時、三〇二号室は外部から確認したところ、廊下側の窓はないものの、玄関ドアの隙間からかすかに灯りが漏れていた。
周辺の他号室はすべて消灯状態であった。
また、午後九時五十五分ごろ、四〇一号室住人N氏が、続いて十時二十分ごろ、三○三号室住人Y氏が帰宅したことを目撃している。
その他の住人は不在もしくは非活動状態と推定される。
『観察記録抜粋』
午後十時十五分:
観察開始。周囲は静寂に包まれ、風はほとんど感じられない。
気温は平均的で、平常時のデータと一致。
観察員三名は初期チェックと機器の動作確認を行う。
午後十時三十分:
三〇二号室南側壁面に微かな揺らぎを確認。
影は明確な形を持たず、波打つように動く様子が暗視カメラに捕捉される。
観察員の一人が音響測定器で周囲の微弱なノイズを感知するが、原因特定には至らず。
午後十一時十七分:
温度計データに異変。
三〇二号室周辺の気温が約五度低下。
冷気の発生地点は特定困難だが、局所的に冷たい空気が漂うのを観察員全員が体感。
午後十一時二十分:
遠方より女性のすすり泣き声が聞こえ始める。
音は次第に大きくなり、約二分間継続。録音機器により音声データを取得。声の発生源は特定できず。
午後十一時三十五分:
廊下に不意の強風が吹き込む。
観察員三名は突風により身体の冷えを感じ、通常の気温より明らかに低く感じられると報告。
体感温度は著しく低下。
午後零時二十分:
不明な影が廊下奥に出現。
動きは遅く、人間の形状に類似するが明確な判別は不可。
暗視カメラで複数角度から撮影を試みるも、影は数十秒後に消失。
午後一時三十分:
断続的な女性の囁き声を録音。
内容は断片的で、「助けて」「帰れ」「消えろ」といった語句が明瞭に聞き取れる。
声の位置は三〇二号室近辺。
午後一時五十分:
全観察員に軽度のストレス反応が見られ、心理的負荷の蓄積を示唆。
休憩及び心身状態の確認を実施。
午前二時:
観察終了。
記録機材の再点検及びデータ保存完了。
全機材正常動作を確認。
『備考』
観察期間中に確認された異常な気象的現象及び音響現象は現状、科学的に説明が困難である。観察員の報告する体感温度の急激な低下や精神的ストレス反応は、心理的影響の可能性も考慮されるため、今後専門医師の心理評価も検討する必要がある。
以上、夜間監視結果報告とする。
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