第21話 モブキャラ、先輩達と戦う

「ちょっと!? 入学がかかってるのに自ら追い込んでどうするのよ!!」

「逆に生き残ればアピールできるだろ? 普通にやってもつまらんしちょうどいい」

「ああもう勝手になさい!! わたくしは一切助けませんわよ!!」


 最初から一人でやるつもりだ。

 圧倒的不利。でも勝ち残れば圧倒的チャンス。

 リスクとリターンが入り混じったこの状況を俺は楽しく感じていた。


「はははははは!! お前は先輩達を甘く見ているな!?」

「甘く見てないですよ。本気で縛りを乗り越えてこそ、俺の価値が証明されるのでね?」

「その心意気、僕がへし折って見せよう!!」


 好戦的な先輩が俺に襲い掛かる。

 名前は……知らん。多分モブだ。


「槍か。という事は炎か風?」

「残念!! 僕のは少し特殊でね!!」

「ほぉ、中々面白い」


 突き出してきた槍からは闇の魔力。

 それがズズズ……と不気味な音と共に槍へ絡みつき、巨大化させていく。

 槍というかドリルだな。


 ドガァ!!


「いい手品でしたよ」

「なっ!? これを受け止めて……!?」


 俺相手には火力不足。

 魔力充填で筋力を超強化させ、ナイフの刃で巨大なドリルを受け止めた。


「”一撃剛破”!!」

「ぐあああああああああああああ!!」


 その返しに強力なガントレットの一撃をぶちかます。

 ドォオオオオオオン!!という轟音と共にモブ先輩は吹き飛ばされ、講堂の壁に激突した。


「レンがやられた!? あいつはBクラスだぞ!?」

「どうやらただ者ではないらしい」

「ふぅん、面白い候補生がいたのね」


 そんな名前だったのか。

 ちなみに今喋っているヤツらも誰かは知らん。


「おおおおおおっ!!」


 と、感心してる間に次の刺客が襲い掛かる。

 今度は同じ候補生か?


「攻撃が甘い。やはりチュートリアル段階ではまだまだか」

「何をごちゃごちゃと!! 一斉にかかれば倒せるぞ!!」

「やってやろうぜ!!」


 このバトロワはアピールの場。

 だから他の候補生より自分が優れていると、他人を蹴落とそうとするヤツも全然いる。

 

 優しさなんてない。

 倒すか倒されるかだ。


(ま、バトロワらしくて面白いけど!!)


 この殺伐とした雰囲気が何よりもいい。

 戦っているという感覚をダイレクトに感じる事ができる。


「「「うおおおおおおおおおおおおお!!」」」


 候補生達の一斉突撃。

 

 動かない?

 動けない?

 動かなくていいんだ。

 

 俺には小さなアレがあるから。


「”散弾”ッ!!」

「がっ!?」

「ぐぉっ!!」


 ビュビュビュンッ!!


 新兵器のクラッシュビーンズを候補生達に向かって思いっきり投げる。

 小さな弾が候補生達の腕や足を貫き、次々と戦闘不能へと追い込んだ。


「どうしたどうした!? 俺はまだ本気じゃないぞ!!」

「つ、強すぎる……!!」

「こいつ本当に候補生かよ!?」


 俺をアピールするには足りないな!!

 もっと強い奴を連れてこい!!


 アピールも兼ねて、俺はわざとらしく大声をあげた。


「”氷結槍”!!」

「きゃあああああああああああ!?」

「上級生だろうと誰だろうと、わたくしの敵ではありませんわ!!」

「これが”氷結姫”の実力……舐めすぎてた……」


 一方のレアもなんだかんだ勝っている。

 先輩達の猛攻に対して自慢の氷魔法で次々とKOしていく。


「大好きだぞー!! レアー!!」

「こんな所でノロけないでくださいっ!! 集中できませんわ!!」

「またまた照れちゃって」

「うーるーさーいっ!! まとめて凍らせますわよ!?」


 強いなぁ。

 元のポテンシャルに加えて原作よりもイキイキしてるから、リラックスして戦いに挑めている。


 この段階で上級生を圧倒できるとは。

 俺が知っているレアより格段に強い。


「おっ」


 戦いながら辺りを見回している時。

 ある意味ヒロインより目に入る存在が近くを通った。


「よぉライト。がんばれよー」

「え? あ、ありがとう……何で俺の名前を……?」


 ライト・ブレイブ。

 このゲームの主人公だ。


 今回は剣か。魔法も炎とシンプル王道。

 主人公はキャラメイク次第で固有武器や魔法をいくらでもいじれる。


 彼はこの世界でどんなルートを辿るのだろうか。


「”閃光斬”」

「っとぉ!!」


 キィン!!

 ライトの未来について考えていた時。

 後ろから高速の剣が振り下ろされた。


「ジャニス先生……アンタもいたのか」

「ほぉ、私の名前を知っているとは。少しは有名になりましたかね?」

「先生方の名前は個人的に覚えていてね」


 確かBクラスの先生だったかな?

 原作だとほぼ必ずといって目にする存在。

 だってBクラスは大抵のルートで通るから。


 実力もそれなりに強かったなー。一年の後期試験での実技は特にそう。

 詰みポイントではないけど、油断してたら負けるレベルの相手。


 少なくとも序盤で戦う相手ではない。


「我々も全ての生徒を受け入れるワケにはいきませんのでね……世間知らずの子は間引かせてもらいますよ」

「世間を知らなくても己の実力は知ってるつもりだぜ?」

「なら、私に見せてください」


 ブゥンと奇妙な音と共に消える。

 左か? それとも右?

 ジャニス先生はあの魔法があるから、感覚便りの戦法が少しやりづらい。


 ……後ろ!!


「っ!! 分身だったか」

「隙あり」

「ぐっ……!!」


 ズバッ!!


 光で作られた分身に見事引っかかってしまい、返しに両腕を剣で斬られる。

 外してしまった。

 この分身、立ち姿が本物とほぼ同じで見破るのが難しいんだよなー。


 原作よりむずくね?

 やっぱ強いや。


「今の一瞬で両腕を……やっぱ先生は一味違うな」

「そこから出た方がよいのでは? いつまで自分を苦しめるつもりですか」

「まだ余裕だからな。ほーら、口も動く」

「……愚かですね」


 だけど一度言った事は取り消さない。

 強いのは事実だが、負ける相手だとは少しも思っていない。


「力がなくなっていますね。やはり貴方はグランヴァルに相応しくない……」

「っ……」


 キィン!! ガァン!! ギギギ!!

 刃同士がぶつかり合う。

 互角のように見えるが、俺の両腕は斬られたばかり。


 斬り合うたびに傷口から血が噴き出していく。


(魔力充填までもう少し……ジャニス先生の行動パターンも読めた……)


 動きがわかれば対処できる。

 ジャニス先生は何度か見ればギミックに気付ける敵キャラだ。


「終わりです」


 俺の隙だらけの胸元めがけて、ジャニス先生の剣が振り下ろされようとした時。 


「不良生徒は口も塞ぐべきだな」

「はい?」

「”口も動く”と最初に忠告したぜ? ふぅっ!!」

「なっ!?」


 俺は口の中に隠していたクラッシュビーンズを勢いよく吹き出した。

 勿論、魔力充填した状態で。


 意外な場所からの攻撃に流石のジャニス先生も対処しきれず、右肩をクラッシュビーンズに貫かれた。


「中々の不意打ち……ですが致命傷は避けて……」

「とどめは今からだ」

「っ!? そのナイフはなんですか!?」


 同時に準備していた魔力充填の光剣をジャニス先生に向ける。


「”一刀両断”!!」

「ガッ……!!」


 僅かな隙を逃さず、俺はジャニス先生へと光剣を振り抜いた。


「まさか……私が候補生に……」

「世間知らずはアンタの方だったみたいだな」

「悔しいですが、認めざるを得ない……」


 胸元から腹部まで大きく負傷し立ち上がることができない。

 悔しそうな声と共に彼は地面に倒れて気絶した。


「ジャニス先生!?」

「おいおい、先生が負けるのかよ!?」

「中々いねーぞ!? 先生が候補生に負けるなんてよぉ!?」


 アピールは順調みたいだな。

 この調子でどんどん敵を倒していこう。


「ぐぁああああああああ!!」

「ふん……アタシの敵ではないね」

「お、いたじゃん」


 候補生達が倒されて人が減っていた時。

 少し遠くの方で俺が狙っているあの子を見つけた。


(レアとは違うタイプの美人だ……)


 紫髪のロングヘアー。

 キリッとした顔立ちに高い身長。

 足も凄く長くてモデルみたいだ。


 レアがアイドルっぽい感じなら、彼女はお姉さんかな?

 結論、どっちも可愛い。


 よーし、早速声をかけよう。


「……しまった」


 やばい、大事な事を忘れてた。


「どうしたのよ?」

「さっき俺が狙っている子を見つけた」

「それで?」

「〇から出られないせいで会いに行けない」

「バカじゃないの?」


 アピールのための行動が自分を苦しめるとは。

 例のあの子に近づくことばかり考えていて、身近な問題に気付くことができていない。


(話しかけることがこんなにも難しいとはな……)


 ま、クラス分けが決まってから改めて話すとしよう。

 俺も彼女も、入学は確定するだろうし。






「ほほぉ、今年は面白いヤツらが多いのぉ」



◇◇◇


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