声に恋す

ゆ〜

好きなところ

「ねえ、琴!最近推しVのさー、歌みたがさ、レベルアップしてんだよね……」

「うんうん」

「がなりめっちゃすごかったよなっ!」

「うんうん」

「この前のあれなんかさー?声がさ、!」

「うんうん」

「マジで尊くて、今度一緒にカラオケ行きたいな――」

「うんうん」


まさかなんだよな、

まさかここまでハマってくれるとは思わなかったな。

てか私以上に沼ってんだよな。ひかる

もっと私のことについて聞いてくれればいいのに。

複雑な気持ちだし何があったのかぶっちゃけわかんないんだよな、うん。



さかのぼって4ヶ月前。

私に彼氏(名前:輝)ができました。おめでとうございます(?)


彼氏になっての初デートでお互いの好き嫌いが合わないことが発覚。

(とりあえずもう少し相手のことを知ってみよう)


2ヶ月前に行った推しのコラボカフェ。

その時、事前に推しについてどんな人か布教。

(多分ここまでは良かったんだよな)


Today....

何が起こった?

沼ったことはわかったが、カフェのときは

「これ、引いたけど誰?」

「それ私の最推しぃぃ!!!」

「そうだっけ。琴が好きならいいよ、あげる」

ってくらいに無関心だったのに、この2ヶ月で一体何が?

今まであんなに私の話聞いてくれてたのに……

これは理由聞きたい、いやそこまで聞くと

「古参がっ!マウントとってんじゃねぇ!!」

って思われる?

いや、でも気になるし……

Vズルいし……


「――琴?聞いてる?あ、話つまらなかった……?」

「あ、ううん!!ちょっとぼーっとしちゃってただけ!」


あちゃー。やっちゃったな。


「……朝から疲れちゃったよな、ごめん」

「違うよ!!大丈夫だから!元気だからさっ!」

「なら、もうそろそろお店出よっか」


周囲には楽しそうに会話するカップル達。

こんな推しの会話なんかしてる人なんて誰もいないだろう。

グラスに汗をかいてきたクリームソーダも、もうレトロな可愛いさをなくしてる。


「お会計してきたよ〜」


可愛くないものは写真を撮ろうなんて思わない。


「ありがとう」


店を出て夕焼けに馴染む町を歩く。


沈黙。


もう、いいや。


「あのさ、輝」

「ん?」

「なんでいきなりそんなにハマったの?」

「え?」

「無関心だったのにさ、いきなりその話ばっか」

「琴に紹介されたから」

「どゆこと?」


え。


「琴が、『好き』って。声が良いんだよって言ってたからさ。俺もハマれば、Vの話だけじゃなくて、俺の話ももっとしてくれるかなぁ、って……。あ、いや、ハマってない訳じゃ――」

「……」

「あれ、琴の顔、真っ赤」

「こ、これはっ、夕日に当たってるからで……」

「もしかして推しにやきもち妬いてた?」


そう。


「違うし」

「そっぽ向かないでくださーい」

「いや、別に」

「さてはさっき俺の話聞いてなかったなぁー?カラオケ行きたいって言ったやつ」

「尊いから曲一緒に歌いたいって話……?」

「そのちょっと前!」

「……ん」

「あのVの声、似てるから。俺の好きな人に」


好きな、人?


「んぇ!?!?」

「ほらね、ちゃんと聞いてなかったでしょ?」


耳っ――


「耳元でささやくなっ――」

「だからまた、俺と一緒にデートしてね」

「……はぃ」

「よろしいっ」

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