第25話 パーティー結成と初めての依頼

あの後、レフさんに今後の宿での事について、相談した。


そしたら、今後のエキナの宿泊代は、

朝食とかの食事代だけで、食べる度に払ってくれればいいと言ってくれたので、

エキナの分の宿泊代は、払わずに済む事になった。


けれどそれでは申し訳なかったので、

もし欲しい材料とかあったら、優先的に取りに行くという条件で呑ませてもらった。


またエキナだが、彼女の過去について、特に帝国について、聴きたかったが、

まあいつかは話してくれるだろうと信じて、聞かなかった。


奴隷契約をしていると言っても、あまり強制的にはしたくないし、今日出会ったばっかりだからね。


また一応、冒険者として登録をして、パーティーを組んで欲しいとお願いして見たところ、意外とすんなり承諾してくれた。


彼女曰く、

「戦いなら、むしろ貢献できると思います...!」とおどおどしながらも、言った。

まあ最初からある程度戦える想定で、購入したから、ありがたい。


そしてその後、エキナと共に、冒険者ギルドに赴いた。


最初、建物の中に入った時に、

周囲からの視線をめっちゃ感じたが、誰一人として近づいて来なかった。

一応、エキナがいるっていうのは効果があったみたい。彼女が奴隷だからだろうか?

さっきスキル「気配把握」で俺を引き入れようとしていたパーティーも、俺を見た途端その場から離れていった。


これは、完璧俺が原因かな? けど、君らに対しては何もしてないんだけど?


一応登録がてら、この状況になった理由を受付のお姉さん聞いて見ると、

これもまた予想外な事だった。


「実は先程、元冒険者のサージェスさんが再びお越しになって、テルマサ様を無理に引き入れようとするなら、と牽制していかれたんです...。またギルマスも、そういう事をしたらランクを落とすと言われたので...。」


おおふ。だから、距離を置かれているのか。

まあこちらとしても、変なやつとか関わらなくて済むから助かるんだけどね。


けれど対応早いなと思っていたら、この理由もサージェスさん絡みだった。

以前サージェスさんが冒険者だった時、無理にでも引き入れようとする輩があとを絶たず、結構大きな争いに発展してしまったらしい。


それでけが人が相次ぎ、無関係な人物まで巻き込まれてしまったので、ギルドとしても対応せざるを得ない状態となったとの事。


距離を置いてくれるのなら、こちらとしては越したことはない。

多少、警戒等は楽になったな。


受付のお姉さんにお願いをして、エキナの冒険者登録の手続きをとってもらった。

そしたらあっさりとカードが作成された。ランクは最低のGランク。


彼女の場合、「奴隷である」事、「俺のパーティーメンバーとして登録」となるため、「俺自身メンバーを追加登録しても問題ないランクだった」事から、問答無用で、試験なしのスタートとなる。


また俺が試験をしたのは、俺自身が、冒険者自体初登録だったため。

まあ他人を守れる力があるなら、特に問題はなさそうだと判断されたのだろう。

実力主義である冒険者らしい価値観だ。


登録が終わり次第、依頼の掲示板を眺める。

受諾できるのは、俺のランクEと一個上のDまでだから、

そこらへんもなるべく早く受ける体制を整えたい。


けど今はエキナの実力を知りたいし、無理に戦いに駆り出させたくないから、様子見したいし、ランクFあたりの依頼が妥当かな。


「...ん?これは...。」


ふと、とある依頼が目にとまった。

内容は、「回復ポーションの素になるレクペラ草の収集」というもの。

まあ、初心者向けのよくあるものだが、なぜかランクF+と表記されていた。

プラス? これは、どういう事なんやろ?

受付のお姉さんに、とりあえず聞いて見る。


「これはですね。実は、レクペラ草自体がここ付近で収穫しにくくなっているんです。生息が確認されている場所が、以前より遠くに行かないといけなくっているんです。またその付近に生息するモンスターは、レベルが高くなるので、相場よりも高めに設定している分、ランクもFより少し高く設定しているんですよ。」


このパターンは結構あるらしく、度々冒険者が失敗した、高レベルのモンスターが出るようになった、素材自体入手が難しくなったなどで変わるらしい。

一応受ける事は出来るらしく、レクペラ草も簡単に回収できるらしい。


「エキナ、これで行こうか。」

「はい...。」


エキナは、相変わらずおどおどしつつも、頷く。

俺たちは、この依頼を受ける事にした。






アミカルの外に出て、レクペラ草が生えていると言われた場所に到着した。

そこは、俺が昨日降り立った穀倉地帯から北に行った森。


「トリネンの森」と呼ばれる場所で、変わった素材が取れやすい事からこの名前がついたらしい。


モンスターも平原と比べて、レベルは少し高くなるが、別に初心者でも取っ掛かりやすい場所らしい。

出てくるモンスターも特徴的なのは、ミニスパイダーという蜘蛛のモンスター。

それにゴブリン、グリーンウルフ、スライムと、

この前戦ったモンスターぐらいしか生息していないらしい。


特に問題はなさそうだが、気をつけて行くに越した事はない。

一応、ミニスパイダーは毒を持っているので、

アミカルで解毒のポーションを購入してから、出発している。


回復魔法が使えるっちゃあ使えるが、お金にも余裕があるし、

一応公にしない方がいいとグルーシィさんにも教えてもらったので、

このパターンをとらせてもらった。


道中は、「気配把握」を使ってモンスターとはあまり遭遇しないようにする。

俺はともかく、エキナは聞いて見ると、闘うのは久しぶりとの事らしく、

そのため、極力避ける。


ゆっくり、トリネンの森の指定された場所に行くと、すぐに見つかった。

群生地であったようで、辺り一辺に生い茂っている。


レクペラ草は、先が粒が大きく、三つぐらいの粒が実った稲穂のような草。

この粒の成分が、回復薬の材料になるという。


「エキナ。これが、レクペラ草だ。収集しようか。」

「は、はい...。」


一応、受付のお姉さんに教えてもらった通りに、採取する。

採取自体は、簡単で、あっという間に目的の量を集める事ができた。


もっと集めてもいいのだが、あまり多く回収しても他の人の仕事を奪うだけだし、

生態系を考えると、これ以上はよしておこうという事にした。


依頼達成かなと少し気を緩めた際、「気配把握」が引っかかった。


警戒をしつつ、ちょっと様子を見て見る。

モンスター一体と、数人の...冒険者かな?どうやら、追いかけられているみたい。

このまま行くと、俺たちがいる所に出くわす。


「エキナ、移動しようか...?」


「アイテムボックス」にレクペラ草を入れつつ、エキナの方を呼びかけて見る。

どうやら彼女も気づいたらしく、尻尾が立っており、体が震えている。

目もモンスターが居る方向に向けており、警戒しているのが分かった。


このままだと、まずいかもしれない。と思った矢先だった。


モンスターが、尚更スピードを上げてこちらに向かってくるのが分かった。

しかも先程の冒険者らしき人物たちを、これは...しがみ付いているのか?

冒険者たちが背にしがみついたまま、怒りに任せて移動しているみたいだ。


「エキナ!移動するよ!」


そう言って、エキナを咄嗟に抱える。

彼女は今だに警戒したまま、俺の話を上の空で聞いているみたいだ。

抱えられた状態であるのも、気づいていないみたいだ。


走って移動した瞬間、木がなぎ倒される。

後ろをチラッと見る。

そこにいたのは、大きなイノシシのようなモンスターだった。


「ブヒィいいいいいいい!!!」

「まあた、こういうパターンかよ!」


俺の前に、想定外のモンスターが、再び現れたのだった。

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