第20話 俺氏、なぜかギルマスに出くわす。

「えっ...なんでいるんですか?グルーシィさん?」


王族の別邸に招待された俺、なぜかギルマスのグルーシィさんと合流。

しかも先とは違い、服も貴族の方が来ている様な、綺麗な水色のドレスを着ている。


「うむ?言っただろう。また後でなと。」


「いや言いましたけど...。まさかこの食事の席だとは思わないじゃないですか。本当になんでいるんですか?」


「ふふふ。なんでだと思う?」


少し、悪戯っぽい笑みを見せるグルーシィさん。

これは答えるまで、絡み続けてくるパターンだなこれ。じゃあ...。


「王子の側室とか?」

「ブフー!!」

「あはははははは!!」


もうすでに食堂にいた王子が盛大にむせ、グルーシィさんも大笑いする。

夫人も口元を押さえ、笑いを堪えており、ソレイユ姫はきょとんとしている。

どうやら違った様だ。


「テルマサ様、実は旦那とグルーシィは親戚で、そして私たちの学園での同級生でもありますの。」


夫人が、笑いを隠さずに言った。


え?この人ら、知り合いでしかも血縁あったの?

うーん。でも似てねえな。本当に親戚か?


学園っていうのは、王都にでもあるのかね?

また機会があれば、詳しく聞きたいが。


「せっかくこの街に来たんだし、仮とはいえギルドマスター就任祝いも兼ねて、一緒に食事でもどうかとお誘いしたのです。」


なるほど。そういうことか。

けれど、ということはグルーシャさんも貴族なんだろうか。


「あははははは!はあ...。うむ。君は別の意味でも規格外だな!」


「ていうか、なんで試合の時、知り合いだと言わなかったんですか?」


「うむ。勝負には必要あるまいし、変に言って情が入ってはいかんと思ってな!」


グルーシィさんのそう思われたくない気持ちもわかる。

まあ、妥当だが。


「取り敢えず、グルーシィさんの事は分かりました。けど、よくこの時間に間に合いましたね?」

「ああ!あまりにもゆっくりだったからな。走って追い越してしまった!」


おいおい。やっぱり、先にきていたのかよ。

まああの脚力から見て、考えられない事はないが。

けれど、ケラケラ笑ってる。本当に色々礼儀とかわかってんの?この人。


「テルマサ様、この人はいつもこんな感じなので気にしなくていいです。

それよりもう待たせている従者に失礼なので、食事を始めましょう?

ソレイユもお腹減っていますし。」

「うむ!そうだな!そうしよう!」


おい。いつもこれなんかい。


はあ。なんか一気に騒がしくなったな。

まあ俺にとっては、あんまり重苦しい状態になるよりかは、ありがたいが。




一人一緒に食事する者が増えた昼食会は、とても賑やかに始まった。


今回出てきたのは、どうやら前世のフランス料理のコース料理に似ている様で、美味しい物ばかりであった。


食欲を駆り立てるオードブル、つまり前菜では、カラフルな野菜サラダを、

メイン料理には、スープにキノコと玉ねぎのスープ、

ポワソン、魚料理には、アージョンシャークという鮫のキャビアのパスタ、

ソルベには、フレイズルージュという品種のイチゴのシャーベット、

肉を用いるヴィアンドには、ヴァジェビーフという牛のモンスターのステーキを頂く。


どれもとても美味しい。

これらの食事といい、先ほどの街中の露店でも見知った料理といい、

食事はあまり心配しなくてもいいだろう。

特に、前世は食にはうるさい日本人だからな。なんとかなりそうだ。



食事が終わった後、グルーシィさんに呼び出された。

どうやら俺の扱いについて、少し話しておきたいとの事。


メイドさんに連れられ、呼び出されたのは、彼女の使用している客室だった。

取り敢えず、最初にノックをする。


「テルマサか?」

「はい。そうです。」

「入ってくれ。」


部屋に入ると、グルーシィさんはもう着替えて、ギルドで会った格好をしていた。

椅子に座っており、俺も対面の席へ座る様に促されたので、座る事にした。


「もう着替えたんですね。」


「ああ。仕事が残っているからな。ギルドに戻らないといけないし。」


「大変ですね。皆さんとのお食事を夕飯とかにしてもらえば良かったのでは?」


「そう考えたが、少し仕事が立て込んでいてな。...君を呼び出した件について話そう。」


そう彼女は真剣な眼差しをして、机の上で手を組んだ。


「君のその桁外れな実力についてだ。実はもう君の事を詮索し始めているギルドのメンバーがいるっていったのは覚えているな?」


「...ええまあ。」


「君との試合が終わった直後、ほかの冒険者たちが、君の事についてやたらと聞いてきてな。個人情報の点から、何も言わなかったが、

私に傷をつけたとして、もうすごい実力者ではないのかとすでに思われている。」


あちゃー。もうそうなっているのか。

もしかして最初に、サージェスさんに紹介されたのがまずかったかな?


「...サージェスさんと一緒にきたのを見られたのが、問題だったみたいですね。」


「そうだな。私も堂々と対応してしまったのもある。つまり言いたいのは、君を無理矢理でも引き込もうとする輩が出てくるだろうと思う。」


はあ。そういう事かあ。

いずれは組んでみてもいいけど、別に今するメリットもないしな。

しかし、早すぎるなあ。当分実力を隠せると思っていたんだが。


「本当は君を守ってあげたいが、あの荒くれ者の集まる冒険者たちだ。抑えるのも限度がある。だが君はあまり情報を詮索されたくないのだろう?」


「ええ、まあ。」


「そこでだ。君はもしかしたらあまり気乗りしないだろうが、やはり奴隷を買い、それでパーティーを組む事を勧める。」


「ああ。なるほど。」


奴隷なら、奴隷紋によって、主人の命令を聞かないといけなくなる。


自分の情報を流さない様に命令し、

そしてパーティーを組む事で、他人を寄せ付けない様にするという事なのだろう。

だが、前世を思い出した今、奴隷というのには少し抵抗がある。


そこで、ちょっと詳しく聞いてみる事にする。


「俺、国外から来たのでこの国の奴隷制度をよくわかってないんですけど。どうなっているんですか?」


「うむ。そうだな。基本的には、奴隷は国に認められた奴隷商で買う。奴隷には犯罪奴隷、一般奴隷、特殊奴隷の三つに分類される。」


「犯罪奴隷は犯罪を犯した奴だっていうのはわかるんですけど、他の二つはどうなっているんですか?」


「うむ。一般奴隷は借金が返せなくなった奴とか、親に売られた奴隷の事を指す。特殊奴隷というのは、売られたのではあるが怪我がひどかったり、特殊な能力を持っているせいで、扱いが難しい奴隷を指す。だから戦えるのを前提にするなら、一般奴隷を勧める。」


ふむ、なるほど。やっとこの世界の奴隷制度を知る事が出来たぞ。

どうやらグルーシィさんの話では早めに奴隷を購入していた方がいいらしいな。


こうして、俺のドギマギした昼食会は、なんとか終わったのだった。




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