第9話 部隊長、元勇者に助けられる。(他人視点)

Side 部隊長 サージェス


ご主人様たちを護衛している際に、賊に我々は襲われてしまった。

申し訳がないものの、今は賊の撃退に集中する。


賊は卑怯にも、モンスターを使役してきた。

しかも一部の賊やモンスターらは、どうも様子がおかしい。

まるで人形のようになっており、目の焦点があっていない。

しかも、どうもここらにいる賊やモンスターにしては


賊に襲われる想定はしていたものの、物の見事に後手に回ってしまった。

おそらく、ご主人様の家に敵対する者による仕業だ。

ご主人様やそのご家族は、ご本人達の性格とは裏腹に、恨みを買われ易い。

本当にあの人らはお優しい方なのに、なぜ嗾けてくるのか。

意図が分かりかねる。


「お前達、意地でもご主人様達を守るぞ!決死の覚悟で挑め!」


「「「「はっ!!」」」」


俺は味方を鼓舞し、先頭に立って賊どもに立ち向かう。


「ははは!行け!モンスターどもよ!奴らを殺せ!」


賊はモンスターに指示を出し、先に攻撃させる。...小癪な。

男なら、正々堂々と戦えってんだ。


モンスターは、スライム、ゴブリン、グリーンウルフといった、

この草原でよく見かけるモンスターだ。

どれも群れで来られると厄介だが、

一体とかだったら、そうそう大した事はないモンスターだ。

けれどモンスターらは素早く、こちらが攻撃しても中々当たらない。


しかも、どうもモンスターの攻撃が強化されているみたいだ。

スライムなんて燃やしたり、核を剣でついたりしたら倒せたのに、

素早くて、それすら出来ん。


しかも、スライムの粘液が部下の鎧に当たると、なんと鎧が溶けてしまった。

グリーンウルフも爪で攻撃してきたら、部下の剣が真っ二つにされた。

ゴブリンも握力が強化されているらしく、

攻撃してきたので避けたら、奴の棍棒に打ち付けられた地面にヒビが入ったのだ。

しかも大きなゴブリンに至っては、

小さめのクレーターが出来たりするなど、驚きの連続だった。


...どうも、おかしい。

普段は、こいつらに溶かされたり、傷をつけられるほど、俺たちは弱くはない。


数が減らない上に、こちらの体力は削られるどころか、

けが人が多数出て、手数が減る。

このままでは、勝ち目はない。


モンスターどもを操っているあの魔導師を、倒せればいいが、

モンスターや操られている他の賊によって守られており、近づけない。


どうにかして、ご主人様たちだけでも逃げられるようにしなければいけない。

そのように考え始めた瞬間、あの魔導師が杖を動かす。

そうしたら、賊が複数人で俺だけに攻撃してきた。


賊にしては、中々連携がいっているところか、

この実力なら、修錬を積んだ歴戦の戦士にも引けを取らない。

本当に何者なのだ、こいつら!


「ぐっ!?」


私は流石の攻撃に、身を崩され、

そして賊のハンマーで攻撃され、吹き飛ばされた。


「サージェス様!」


「来るな!お前達はを連れて逃げろ!

こいつらは俺たちの手に負えん!」


「しかし...」

「急げ!!」


私が少しでも引きつけて、王子や姫様たちが逃げられるように時間を稼ぐ!

もうこれは、本当に死ぬかもしれないな。


私は身を持ち直して、高らかに宣言した。


「私は、ジョイユー王国軍、第一陸軍部隊長!

名をサージェス=ジャスティンガー!!掛かってこい!卑しい賊どもめ!!」


私は、ここで死ぬかもしれない。

けれどそれでいい。

あの人たちに助けられて、本当に生きがいを感じさせ、優しさを教えてくれた。


あの人たちの為に死ねるなら、本望だ。

些か体力をかなり削られた私でも、なんとか役に立ってみせる!


「サージェス!!!!!」


姫様が、私を呼ぶ声がする。

申し訳ありません。

このような不甲斐ない兵士をお許しください。


私は立ち向かった。

だが、疲れ果てた今の私では傷をつけられなかった。

攻撃をしたら、賊にはひょいと避けられる。

しかも、横からゴブリンに腹を殴られ、再び吹き飛ばされた。


馬車に向かって吹き飛ばされた故、

クッションになってくれたが、もはや戦える力は残っていなかった。


「ぐう...、ここまでか...。」


だんだん、モンスターや賊どもが近づいて来る。

そして目の間に来た瞬間、あの魔導師も近づき、杖を俺に向ける。


「ひひひ。じゃあな、第一陸軍部隊長さん。お前には恨みはないが、死んでもらう!」


奴の杖が、赤く光る。トドメを指すつもりだ。


ああ、私は時間稼ぎもできないのか...。無念だ...。

目をつぶってしまった、次の瞬間だった。


ジャキーン!!


突然、まるで剣で切ったかのような音が聞こえた。


「なっ!?」


目を開くと、なんと奴の杖が真っ二つに切れた。

魔導師は、一旦後ろにジャンプし、警戒する。


一体何が起こっているんだと思っていた所に、彼は現れた。


目を見上げると、人が馬車の上に乗っていた。

黒いローブに、顔は見えないぐらいフードを深く被っている。


「大丈夫か?」


手には、光を伴った剣を持っており、

その佇まいは歴戦の戦士を感じさせる物々しい雰囲気、

...いや、まるで異質な雰囲気を醸し出していた。


彼は俺を一瞥した後、賊達に顔を向けた。

そしてこう言った。


「まあ、そこで見てろ。」


彼はそういうと、馬車から降り、少し間をおいて、剣を持ち直す。


「『あとは、任せろ』ってね。」


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