前世を思い出した俺。今度も新しい体で、別の異世界を旅をする。
MANKIND
第一部 前世を思い出した!やるぜ、もう一度、転生じゃーー!!
第1話 俺氏、思い出し、決意する。
「はあ、はあ、はあ...。」
今現在、深夜なのにも関わらず、俺は、外を真っ暗な中走っている。
故郷から、遠くに逃げるように。
決して、人殺しなど、悪い事をしたわけじゃない。
それにも関わらず、俺は生まれ育った村から逃げるように、走っていた。
信じきれなかった。
せっかく勇者として、世界を平和にしたにも関わらず、
待っていたのは残酷な現実だった。
恋仲になっていた、幼なじみがもう一人の親友と不倫をしていた。
帰ってきた際、見てしまったのだ。二人が行為に至っている所に。
両親には、手紙を書き残し、村を出てきた。
折角、勇者である自分の帰還の宴会を開いてくれる約束だったのに。
それを反故にしてしまった事。そして、遠く離れた所に行く事を書き綴って。
今でもそのシーンを思い出すと、吐き気がする。
もう何もかも、自分には残されていないような、そのような感覚があった。
そのような時だった。
「うっ!?」
突然、激しい頭痛が起こった。
まるで、頭をハンマーに叩きつけられたようだった。
「頭が、痛い...。」
もう立ち上がれなくなる程、痛みが激しくなり、その場に蹲ってしまった。
しかも、何かが頭の中に流れてくるような感覚に陥る。
気を失っているのか、それとも意識はあるのか分からない。
「一体、なんなんだよ!?うぐ...。」
吐き気を催し、森の中だが、その場で出してしまう。
一瞬、落ち着いた瞬間、それが見えた。
別の世界の記憶。
自然の多い田舎に生まれ、育てられて来た記憶。
父親と喧嘩をしながらも、翌日には何もなかったかのように一緒に遊ぶ姿。
母親らしき人物と一緒にどの服を買うのか楽しむ姿。
姉と一緒に映画を楽しむ姿。
その地域のソウルフードであり、好物だった
地元を出て、大都会の大学に通った姿。
友人ができ、それを楽しみつつ、大都会の荒波に飲まれた姿。
そして、今と同じように卒業した後、人間関係に疲れ、地元に帰って休んでいた姿。
「そうか...思い出した。」
俺の前世は、日本の香川で生まれた。
名を、一之瀬輝政(イチノセテルマサ)という人間だったのだと。
そして今と同様、他人に傷つけられ、そしてすぐに過労死で死んだ者だと。
何故、このタイミングで思い出せたのか。
おそらく、先程の
この世界でも金銭的にも、愛情的にも親に恵まれたが、
村はそこまで裕福ではなかった。
力や魔力が同年代に比べると、遥かに高かった為、
村を出て冒険者となり、実力をつけた。
実力をつけて行くうちに、段々を認められ、
その結果、勇者パーティーの一員として起用され、魔王を討伐した。
地位と名誉を得たものの、村を出る時に幼じみと約束した。
「いつか帰ってきた時、結婚しようね!」
その約束を果たす為、国王の要請を丁重に断り、村に帰ってきた。
けれど、裏切られた。
「まさか、ああいう形で裏切られるとはな...。はは、情けねえ話だ。」
定期的に手紙でやり取りはしていたが、いつからか送っても返事が来なくなった。
おそらくその時から、不倫はしていたのだろう。
なぜ今まで気づいて来なかったのか。勘付く事は出来たはずだ。
一応、これでも婚約はしていたのだがな。
「これからどうしようか...。」
今後の方針を考えるついでに、俺の前世での記憶と、今の現状を整理する事にした。
木の上に移動した俺は、まず頭を回転させる。
「ええと確か…。」
まずこちらの世界で俺は、「リューク」という名前を名付けられた。
先程も言った通り、前世では、過労死が原因で死亡。
都会で人に裏切られ、それに疲れて実家に帰ったものの、
帰ってきた翌日に死んでしまったみたいだ。
最後に、家族のそばで死ねたのはよかったかもしれない。
だが両親には、悲しませてしまっただろう。申し訳ないな。
因みに、前世の全ての記憶は思い出してはいない。
思い出すのには、まだ時間がかかるのだろう。
まあ、焦らず行きたい。
そして、この世界で生を受けた後だ。
周りよりも剣も、魔法も使えた俺は次第に冒険者を目指すようになった。
両親も、周りの大人達も、幼なじみ達もその夢を叶える為に、手伝ってくれた。
なきなしの資金を、両親はかき集めて、俺を村の外へ送り出してくれた。
村のみんなも行ってらっしゃいと、手を降ってくれていたのを今でも思い出す。
その後、街に出た俺は冒険者業を生業として生きていく。
実績を積み上げて、いつしか巨大な敵に打ち勝ち、煌く姿だったとの事から、「煌克(こうこく)のリューク」と呼ばれるようになった。
恥ずかしいけどね。
そのように呼ばれ始めた頃に、勇者パーティーとしてスカウトされる。
魔王を倒し平和になり、国王が姫を俺に嫁がせるとか、貴族の地位を与えるとか、
名を馳せた勇者によくあった話が持ち上がったが、俺はそれらを全て断った。
約束を守るために。
で、今に至ると。
「少なくとも、国王の色んな提案を拒否した以上、もう王国には戻れないし...。
しかも、村にも戻りにくいからなあ。かと言って、勇者の称号の事考えると、他国に行くのも難しいしなあ。」
実際、村は国境に近いものの、俺が勇者として祭り上げられた王国領に属している。
また他国が武力として、俺を取り入れようとする可能性がある以上、
他国に実質亡命するのも難しい。
「まあ最悪、冒険者として登録し直せばいいかな。」
もう考えても埒が明かない。だから!
「...もう、他人に縛られるのはごめんだな。
今度は人生を楽しく生きよう!ここから第二、いや第三の人生の始まりだ!」
そう俺は、固く決意し、森を出たのだった。
その日は、明るい満月の日だった。
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