第4話
羽田に降り立ったアンノウンの元へ送られた哀れな...もとい、勇敢な警察官2名の乗るパトカーが危機管理センターのディスプレイに映し出されている。
「...反応がありませんね」
「もう3分以上になりますか? このまま反応がなければ、一度彼らを撤退させましょう」
永瀬と糸井が乗ったパトカーがアンノウンの手前で停止してから3分以上が経過し、その間危機管理センター内は時間が止まったかのような静寂が訪れていた。
誰もが固唾を飲んで見守る中、閣僚たちはなにも反応もないことを訝しみ始めた時だった。
「...!! まさか降りるのか!?」
「危険です! すぐに止めさせましょう!」
パトカーのドアが開いて永瀬が降りようとしているのが見えた時、閣僚たちは焦ったように永瀬を戻すべく動き始める。
「いや、待て! あれを見ろ! 」
「まさか、アンノウンが反応した!?」
「...頼むぞぉ、頼むから死なないでくれ...!」
パトカーから降りた永瀬に反応したのか、アンノウンの小型機のハッチのような部分が開くのが映し出される。
完全に開ききった後、階段のようなものが出てくる。それが展開されるのとほぼ同時に、中からアンノウンが姿を現す。
「...人、なのか?」
「いや、違う。あれはロボット...か?」
「少なくとも人の形をした何かなのは確かですね」
ディスプレイに映し出されたアンノウンは、メタリックな人型をしていた。そして筒状の何かを持っている。
「何か持ってないか?」
「筒...ですかね?」
「SFなら、レーザーだかビームだかの剣になるやつだな」
「だとしたらあの警官まずいですよ! 早く戻さないと!」
「いや、殺されるならとっくにあの巨大ロボットに殺られてますよ」
それを見た閣僚たちがアンノウンああでもないこうでもないと騒ぎ立てる中、ディスプレイの中のアンノウンは永瀬に近づいていく。
そして永瀬の目の前に着くと、持っていた筒状の何かを永瀬に手渡す。
永瀬は渡されるがままに受け取るが、アンノウンは渡すだけ渡したらすぐに小型機へと戻って行ってしまう。
ディスプレイの中の永瀬はアンノウンに対して、手を伸ばしながら何か話しかけているようだが、アンノウンはそのまま小型機に乗り込んでしまう。
「...普通に渡したな」
「えぇ、渡しただけですね」
「あの警官は引き止めていたようだが...」
小型機のハッチが閉まり巨大人型ロボットと小型機は、まるで重力が無いかのようにふわりと浮き上がり、降下してきた艦隊の方向へ飛び去ってしまった。
あまりにもあっけないファーストコンタクトに、ディスプレイの中の永瀬も、危機管理センターの面々も唖然とした様子のまま少しの間固まってしまっていた。
「...はっ!こうしてはいられない、すぐにあの警官と渡されたものを回収させろ!」
「あの筒、どうしますか? まさか爆弾などでは無いと思いますが...」
「いや、わからんよ。奴らあまりにもあっさり帰っていったからな。巻き込まれないうちに、と考えていたのかもしれん」
アンノウンがあまりにもあっさりと帰っていったために、渡されたあの筒が危険なものなのでは?という考えが広がる中、ディスプレイの中の永瀬はその筒を開封していた。それもあまりにも自然に。
その様子を見ていた者たちは、その自然な動きに、「あ、あけたな...。え?あけた!?」と、ワンテンポ遅れた反応を見せ、その反応を見た閣僚たちは、さらに遅れて状況を把握する。
「あぁ〜...。あけましたか...」
「爆弾、ではないようですね」
「あいつは誰だ! 一体どこの怖いもの知らずだ!」
「とりあえず危険はなさそうで安心しました。彼を回収し、詳しい説明を聞きましょう」
この後回収された永瀬が、上司から勝手にパトカーから降りたことや、無闇に筒を開封した事をこっぴどく叱られたのは言うまでもない。
......
............
――――――
――同時刻 秋葉原――
「アルス様、親書は無事日本へ渡ったそうです」
「そうか、これでひとまず第1段階は終わりだな。あとはどんな反応が帰ってくるかだが...。まぁ今はこちらを楽しむとしよう」
エリオから報告を受けたアルスは、普段の見た目からあまり変わらない外見だった。唯一異なるのは、特徴的なエルフ耳が地球人の耳に偽装されていることか。
ホログラムでガッツリ変装するつもりだったアルスたちだが、とある理由から最低限地球人に合わせただけであとは普段とほぼ変わらない見た目になっている。
その理由というのが、現在アルスたちがいる場所にある。
「さすがに前世の記憶にあるアキバとは違うな。事細かに覚えている訳では無いが、技術の進歩は見て取れる」
「ここは我々の外見でもあまり目立たないですね。むしろ我々よりも派手な方々が居るくらいです」
「何しろここはオタクの聖地、今の俺たちもコスプレしているようにしか見えんさ」
そう、この秋葉原という場所において、多少髪の色が日本人離れしていても、コスプレなどで派手な見た目の人が沢山いる。
現に、なにかのコスプレ集団だと思ってスマホを向けてくるものがチラホラいる。
「アルス様、この後はどちらへ?」
「あぁー考えていなかったな...。取り敢えずアキバならこの外見も紛れると思って来てはみたが、あるのは20年以上前の記憶だしなぁ。...よし、ここは思い切って聞いてみよう!」
「しかしアルス様、あまり現地の者と関係を持つのは宜しくないのでは? 正式な訪問の前に日本にいたとなると、外交上問題があるかと」
「問題ない。その時はシラを切る。どうせ似たような見た目のキャラなんてどっかにはいるんだし、いくらでも誤魔化せるはずだ。...お、あの人にするか。スミマセン!」
そしてアルスは、たまたま目が合ったという理由だけで正面から歩いてきた1人の女性に声をかける。
気休めだと思いつつ、カタコトの日本語風で...。
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