第13話 防衛都市の家 2日目
7:00
ジリリリリ……
目覚ましが鳴って目を覚ます。
今日は9時から1丁目のケーキ屋で唯と会う約束だ。
クローゼットから服を取り出し、姿見でふさわしい服は何かを検討する。
おいおいデートじゃないんだぞ。わかってはいても心が浮立つのを抑えられない。
洗面台に向かって顔を洗って歯を磨いた。歯ブラシも歯磨き粉も新品だと気分がいい。
「いってきます」
誰もいない玄関に向かってそう言った。
1丁目は2ブロック先を右に曲がったところだ。
「おー朝早いな」
ジョギング中のアライさんに会うとそんな風に声を掛けられた。
「新井さんこそ早いですね」
「なんだお前デートか?」
「え、いや違いますよ(照)トダユイとケーキ屋の下見に行くだけです」
「はは…いいねえ!青春してるねえ!」
そう言うと新井さんはジョギングで遠ざかっていく。
AM 8:59
ケーキ屋の前にはすでに唯がいた。
「ごめん、待った?」
唯の姿が見えたことで、服選びに時間をかけたことを後悔した
「ううん、あーしも……じゃない私も今来たところ♪」
そう言う唯はいつにも増して輝いて見えた。
「じゃあ行こっか」
「うん♪」
そう言うと僕たちはケーキ屋に入った。
「わあ、綺麗!今日はどれを選んでもいいの?」
「ふふ、もちろんだよ。そのために今日は来たんだからね」
「じゃああたしあのダブルモンブランデラックススイートイチゴ乗せショートケーキをホールで♪」
「ほ、ホール!?そんなに食べて大丈夫なの?」
「何言ってるの(怒)、ちょっと食べたらラップして冷蔵庫に入れておくのよ!」
「あ、そ、そうだよね。」
「もう(怒)、私は食いしん坊キャラじゃないんだから!」
「1350円になりまーす」
帽子を目深に被った、どうやらガングロな店員さんに代金を告げられる。
「ふふ、ここはカードでお願いします」
「え!健太、カードなんて持ってるの?かっこいい♡」
「全然大したことはないよ」
店内備え付けのイートインコーナーでケーキを食べる。
「おいしー♡」
「それで、この後はどうする?3丁目のコンビニで新作スイーツが発売されたみたいだけど?」
「うーん……家に帰ってネトフリかな。韓流の『天地をつなぐ王家』の続き見たいし、健太も見る?」
「ああ、是非行こうかな唯が好きなドラマ僕もみたいし」
「ホント?うれしー!じゃあ行こっ☆」
唯がそう言うと僕たちは店をあとに……
「カーーット!!」
トダユイが突然大声を出した。
「おっけーおっけーここまででいいっしょ、あとはこれをインスタに挙げれば楽しい恋人ごっこを楽しんでいる、トダユイちゃんの完成ってわけよ」
「トダユイさん一瞬『あーし』って言ってましたけど……」
「そこは編集でなんとかすりゃあ、おっけー。あーしの編集技術なめんなし。んじゃねウスイ」
そう言うとトダユイは家に帰っていった。
「やれやれね。何なのこの恋愛ラブコメごっこは」
そう言うと店員役のカザキリが近づいてきた。
「俺は筋トレのついでだったから良かったけどよ……」
アライも近づいてきた。
「はー…俺なんてカメラマンだぜ。そこ変われよケンタ」
「あー…なんか彼女持ちは後で恨まれそうだから嫌って昨日言ってたよ」
「くそーなんで彼女持ちなの明かしたんだよーケンタ」
トモキが嘆いている。トモキよ、そこは自業自得だろう。と心の中で突っ込みを入れておいた。
13:00
カザキリに呼び出されて、2丁目にある図書館に僕とトモキはいた。
「さて、あなたたちを呼び出したのは他でもないわ。あの無常彩香を防衛に引っ張り出しなさい」
「え、でも無常ちゃん明らかに戦闘向きって感じじゃないぜ?」
「人手は多いに越したことはないわ。引きこもっている彼女をまずは外に連れ出してほしいの」
「ははーんなるほどね、それで俺ってわけか。要は千歳くん作戦だろう」
「は?どういうことトモキ」
「知らないのか?『健太くんは部屋のなか』だぜ」
「?僕は外にいるけど」
「そういうことだよな?風切?」
僕の質問を無視してトモキはカザキリに問いかける。
「著作権の関係もあるからYesともNoとも情報を開示できないわ。」
「ふーん。オッケーじゃあトダユイも呼ぶぜ」
「好きにしなさい」
カザキリがそう言うとトモキはトダユイに連絡を取り始めた。
15:00
僕たちは1丁目の無常の家の前にいた。
「あーし、ネクラ女の相手は苦手なんすよ。スクールカースト上位だったんで」
「だから、いいんだろうが。つっても今回は相手が女だから通用しないかもだけどよ」
そう言うとトモキは呼び鈴を押した。
ピンポーン
「……はい」
「よっす。同じ滞在者の佐藤智樹だけど、風切に頼まれて挨拶をしに来たんだ、よろしくね。折角だから話をしたいんだけどドアを開けてくれないかな?」
「……は?そんなこと言ってどうせ私を防衛に参加させたいだけでしょ?」
ムジョウの返事を聞くと、トモキがトダユイを促すようなポーズを取った。
「
トダユイは本当にトダユイか?と思えるような甘ったるい口調でそう言った。
「健太くんと一緒に?ほ、ほら出たわねリア充が。そういうリア充は皆、私の敵なのよ」
「あ、待って健太くんとはそういうのじゃなくて。ただ撮影で行っただけであって……」
「うるさい!もう話しかけないで。あなたたちは私の敵よ!」
ブツン
そう言うとインターフォンの接続が切れてしまった。
「あーん?これだからネクラは!あーし、ぶちぎれていいっすか?」
「どーどー。大丈夫、予定通りだから。これで千歳くん作戦フェーズ2に入れるわ。明日をお楽しみに」
「結局、今日は帰るってことだね。風切さんに怒られそうだけど」
「いや、大丈夫あいつもわかってるはずだから」
そう言うとトモキはどこからかラムネ瓶を取り出し、飲み始めた。
18:30
「少し早めに集まってもらったのは質問もしたかったからよ」
そう言うとカザキリはアナウンスボタンを押した。
「質問よ。
質問②:襲撃が行われるWAVEは決まった時間に発生する?」
少し待つと答えが返ってきた
「回答②:いいえ、襲撃は経過日数に応じてその回数と頻度が異なります」
「ありがとう。……まあ予想通りね。つまり19:00~23:00は一瞬たりとも気を抜く暇はなさそうね」
「そいつは残念だぜ」
「さて、今日は相手の出方が分かった以上フォーメーションを組むわ。まずは戸田唯あなたは時計台の前から動かないで。私たちが突破された時用の最終防衛ラインよ。念のため確認だけど、シールドは持ってきているわね?」
「うっす」
そう言うとトダユイは後ろ手に隠していた両手を高く掲げた。その両手には小柄なシールドが2つ付いていた。
「続いて、薄井健太と佐藤智樹。あなたたちは東側の防衛よ。東側に敵が出現したら真っ先に防衛にあたりなさい」
「はい」「おっす」
「最後に新井健。あなたは私と一緒に西側の防衛。ただし私は昨日と同じレベル1のヒューマロイドが出たら東側にも行くから。その時は付いてこないで」
「おう」
「今あるフォーメーションは仮の物よ。防衛を重ねて適切な配置があると判断したら変更するわ。それから無常が参加したらその場合もどこかしら変更するわ」
「あいつが来るとは思えねーけどな」
「もうすぐ19時よ。気を引き締めなさい」
19:00
ビービー
「WAVE1 3丁目南西にレベル1人型ヒューマロイドが2体出現。直ちに防衛に向かってください」
昨日と同じレベル1のヒューマロイドだ。カザキリからメッセージが届く。
私と新井健で防衛にあたる。その他人員は持ち場で待機。
そのあとは増援を要するような連絡も来なかった。
20:20
ビービー
「WAVE2 4丁目北東にレベル2犬型ヒューマロイドが1体出現。直ちに防衛に向かってください」
「来たぞ!犬型か。これは滞在2日目の再来かもな」
トモキがそう言ったあと僕たちは自転車で4丁目北東に向かった。
「いたな」
トモキが指さす先には昔の犬型ロボットを彷彿とさせる、目の周りがライダーメットのようになった銀色の大型犬のようなヒューマロイドがいた。
カザキリからは
レベル2も『モードオフ』にできるか試すから私も向かうわ。でも当てにしないで
とメッセージが来ていた。
「風切さんに頼りっぱなしじゃいけないからな行くぜ」
そう言うとトモキは犬型の前に躍り出た
「バウバウ」
犬が飛びかかってくると、トモキは手に持っているシールドを構える
ガンッ
するとシールドが、ぶつかったタイミングで発光した
「なるほど、衝撃を受けて発動するタイプか」
はじき返された犬は今度は爪でひっかいてこようとする
ガンッ
「なるほど、牙で耐久値10減少、爪で5減少ね」
どうやらシールドの内側に耐久値が表示されているらしい。
僕はその隙に犬型の裏に回り込み、暗殺セットに入っていたスタンガンを構える。
「へー…健太いい武器持ってんじゃん」
ヒューマロイドが電気で動いている以上スタンガンは有効なはずだ。
まずは弱設定でスタンガンを押し当てる。これは僕への反動を考慮したものだったが、犬型は多少動きを止めたものの停止には至らなかった。
犬型はこっちに狙いを変える。
爪攻撃を盾ではじき、耐久値5減少。これで残りは70。
「俺ゴム手は準備してきたのよね、健太スタンガンをパスだぜ」
そう言ったトモキにスタンガンをパスする。
「俺のナイフ捌きを見せようと思ったが、今日はこいつで仕舞だ」
僕が犬の攻撃を盾でいなしている中、トモキはおそらく"強"状態の電流がほとばしっているスタンガンを犬に押し当てる。
「きゃうん」
犬はしばらく膠着したのちその活動を停止させた。
「よし!これでここの防衛は完了だな」
20:50
少し遅れてカザキリが自転車でやってきた
「あなたたち、犬型を倒したのね」
「ああ、スタンガンで一発だったぜ」
「そう、これならレベル2はあなたたちに任せてもよさそうね」
「でも『モードオフ』試せないで残念でした」
「また機会はあるでしょう。私は持ち場に戻るわ」
22:30
ビービー
「WAVE3 1丁目北東にレベル1人型ヒューマロイドが2体、レベル2犬型ヒューマロイドが1体出現。直ちに防衛に向かってください」
「北東だね僕たちで向かおう」
1丁目北東方面に自転車で向かう。
カザキリからは、
====================
レベル1が混在しているから私も向かうわ
====================
とメッセージが来ていた。
ヒューマロイドがいる場所に辿り着いた。
「まずはカザキリさんを待とう、3体一度に相手は危険だ」
「おう」
しばらく待つとカザキリとアライも来て、さっそくカザキリが坂井の声で
「オペレーション、モードオフ!」
と言った。
人型は活動を停止したようだが犬型は依然動いていた。犬型がカザキリの方に向かっていく。
「バウバウ」
「ここは俺に任せろ!」
そう言うとアライは金属バットを構えて
「根性アターック!!」
そう言うと犬の頭にバットを振り下ろした。
犬の頭はひしゃげ、その活動を停止している。
「なんという馬鹿力……」
「これが筋トレの成果じゃ」
アライは見た目通り力がある。ということは覚えておこうと思った。
23:00
ピンポンパンポーン
「本日の敵勢力の進行が停止しました。防衛お疲れさまでした」
アナウンスが聞こえた。
「結局今回もあーしは出番なしって事っすね」
僕たちは万一の襲撃に備え、時計台の前に集まっていた。
「出番があったら大変よ。あなたは最終防衛ラインなんだから。そんなに出番が欲しいならいいわ明日は前線に配置しましょう」
「げ!だったら風切さんの方でお願いします」
モードオフの力を見たからだろう。
「検討するわ。さて、明日だけど佐藤智樹!いい加減、無常採香を説得しなさい。
それからシールドに関してだけれど、東西南北にそれぞれ倉庫のような場所を置いて一手に持ち出せるようにしておくわ。その時は手伝いなさい」
「武器庫ならぬ盾庫ってところか」
トモキが言った。
「それじゃあ各自、今日はもう休んで明日に備えなさい。もうわかってると思うけど日を追うごとに敵は強くなるわ」
そういうとカザキリは去っていった。
こうして2日目の防衛は完了した。そして翌日のムジョウの説得では思わぬ波乱を見せることになった。
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