第37話 クストーの受難2
ジンミュートの導きにより、なんとか新天地に辿り着いたクストー達。
300人はいたはずの民達は100人弱まで減っていた。
「クストー様、この岩場では食糧の継続的な調達が難しそうです」
「そうだな、たしかに動物を狩るにしても森まで片道2時間では大変な苦労だろう。
その上、水も未だ精水器を頼らねばならない。
これでは長期的な街作りは難しいな。
よし、探索隊を派遣して街作りに相応しい場所を探そう」
早く安心して住める場所を見付けなきゃいけないからな。
探検隊には漁師や猟師、大工、農民、地質学者など様々な専門家を集めて結成した。
目的はもちろん安全な住宅地だが、それ以外にも食糧の確保や水資源の豊富さ、鉄鉱石や石炭などの鉱物資源の有無なども必要事項だった。
探検隊は3隊作り、それぞれ別の地域へと送った。
早急に見付ける必要があるからだが、それが間違いの始まりだったのかもしれない。
3隊の内1隊は帰って来なかった。
そして後2隊は死人や怪我人、病人となった隊員を連れて帰ってくることになったのだ。
「なにがあったのだ?」
「はい、我等はここから東に向かいました。
砂漠や岩山をいくつも越えて進むと巨大な森が現れました。
食糧となるものがあるやも…と思い、森に入ることにしました。
それが間違いであったことはすぐに分かったのです」
お茶を口に含んだ彼は話しを続ける。
「木の上からは見たこともない大きな蛇が襲ってくるし、大きな薮蚊が常にたかって来ました。
そしてしばらくするとひとりふたりと高熱にうなされ出したのです。
悪いことは続きます。病人を支えながら撤退する途中、見たこともない巨大な動物が細い木々を倒しながら我等な突っ込んで来たのです。
なんとか全滅は避けられましたが、動けなかった者達は……ううっ………」
「分かった、説明はもうよい。不幸はあったがよく戻って来てくれた。しばらくゆっくりと身体を休めて欲しい」
戻って来た2隊の隊長から聞き取った説明はどちらも凄惨極まるものであったのだ。
「おそらく帰って来なかった1隊も同様だったのでしょう」
副長として長年俺を支えてくれているシーピーが悲痛な顔で話し掛けてきた。
「そうだな、しかし困ったものだ。
これでは新しい土地を見付けることすら叶わないではないか」
「そうですな。児の近くには広大な砂漠が広がっており、人が住むには適しておりません。しかも報告を受けた感じではその先にも期待は出来ぬかと」
「だが、ジンミュート様のお告げがあり、実際にこの地が見付かった。
きっとどこかに住み良い場所があるはずなのだ」
「では、私達がもう一度探して参ります」
戻って来たばかりの探検隊長2人が進言してきた。
「私達は途中で撤退して参りましたが、あの奥に楽園があったのかもしれません。もう一度我等にチャンスを下さい!」
「分かった。君達の勇気には感謝する。今は体調を整えて万全な状態になったならお願いしようと思う。ありがとう」
「「はっ!」」
隊長達の強い使命感を目の当たりにして目頭が熱くなるのだった。
数日間、思わぬ事態が起きたのだ。
全滅したと思われていた1隊の隊員1人が戻って来たのだ。
「大丈夫か!?」
「皆が!皆が捕まっています!すぐに戻らなければ……」
それだけ言うと彼は力尽き倒れた。
「介抱を。気が付いて落ち着いたら教えて欲しい」
医師に頼んだ後、緊急会議を召集した。
「戻って来た隊員の話しでは、他の隊員達は何者かに囚われているらしい。
すぐに兵士を徴兵し、彼の回復後に奪還すべきだと思うが如何か?」
「意義はありません。原住民がいたことには驚きを隠せませんが、もしそのような暴徒がいるのであれば、ここにも危険がおよぶ恐れがあるやもしれません。
早期に鎮圧すべきでしょう」
「同感です」
「同感です」
「では決を取る。鎮圧隊の結成と鎮圧の実施に賛成の者は挙手を」
「全会一致で鎮圧隊の派遣を実施することとする。
規模や期間については彼の回復を待ってききとりをした結果決めたいと想う。以上だ」
3日後、隊員からの聞き取りが終わり、正式に鎮圧しが結成されることとなった。
人数は兵士を中心に30人。
武器は火薬弾とパチンコや弓矢、ボーガンなどの飛び道具と鉄剣や鉄槍などの近接武器を持たせることになった。
そして更に2日経ち、鎮圧隊が出発したのだった。
そして3日後、チン隊の内3人が戻って来た。
「無事鎮圧に成功しました」
「ご苦労様。状況はどうだ?」
「はっ!鎮圧に成功しました。こちらの被害は軽微です」
「頑張ってくれたな。向こうの状況を詳しく教えて欲しい」
「はっ!鎮圧したのはこちらの原住民内でも特に暴徒として猛威をふるっていたようです。
我々が倒したことで、平和的な原住民からは好意を寄せられております。
他の隊員達は向こうの原住民達と今後の話を進めておりまして、至急クストー様にもお越し頂きたく思います」
「分かった。すぐに行こう。
シーピー!後を頼んだ」
「承知致しました」
俺は隊員達の1人を連れて原住民達の元へと向かったのだった。
「クストー様、ようございましたな」
「ああ、双方にメリットがある提案だったので助かったぞ。
あちらは武力を求めているし、こちらが要望する安住の地も砂漠のオアシスを提供されることとなった。
経済的な…まああくまで原始的な物々交換だが…それでも食糧の確保は問題無さそうだ」
こうしてクストー達もようやく安住の地を得ることが出来たのだ。
「いやぁ、どうなるかと思ったよ。ずいぶん人数は減ってしまったが、なんとか大丈夫そうだ。
これて無事だった船は全て安住の地を得たわけだ。
これからはそれぞれが文明を育ててくれるのを願うだけだな」
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