第21話 街を作ろう

「とうとうオークニ君も死んじゃったか。


彼は思った以上に頑張ったからな。教え子が死んだのは悲しいけど、この星の子達は寿命が短いから仕方無いことだな……」


やはり知っている者達が死んでしまうのは虚しいものだ。


この星に流れ着いて既に300年ほどになる。


別にこの星に文明を齎したいとかそんなエゴを持っている訳じゃない。


島流しに処させた時に全てに絶望していたし、後は死ぬのを待つだけのはずだった。


だが偶然この星に流れ着き、アマーテやスサノーと出会って、彼らの生活を少しサポートしたくなったのは気紛れというものだ。


彼らが死ぬとそれも面倒になって止めてしまっていた。


あの時オークニ君を拾わなければ、この星の住人に再びなにかをすることも無かっただろうな。


オークニ君と出会ってから、再び彼らに対する関心が戻ったようだ。


常にステルスドローンを飛ばして町の様子を見ている。


そう、例えるなら飼育している動物の観察って感じかな。


可愛がっていた小動物が死んじゃったみたいな……


でもオークニ君の頑張りで、この星にも文明みたいなものが出来つつあるし、もう少し観察してみようかと思う。


幸い彼の子供達も優秀そうだし、飽きずに見ていられそうだ。





俺の名はニントーク。偉大なる祖先スサノー様とその子孫でお爺ちゃんのオークニ様の血を引く選ばれた者だ。


「こらっ!ニントーク!またわけの分からないことばかり妄想してるんじゃない!


偉大だったのはスサノー様や父上であって、お前はまだ何も成していないではないか!


ご先祖様の威光とか血筋とかそんなものは関係無いんだ。ご先祖様に恥じないように生き、結果として後世の者に評価される者になるんだぞ!」


「お父さん、分かってるって。スサノー様は伝説の人だからよく分からないけど、僕もお爺ちゃんやお父さんの姿は見ているからね。


僕も頑張って2人みたいに尊敬される人になるのが夢なのさ」


「また生意気なことを言ってるわ。はいはい、頑張ってね。それよりニントーク、頼んでいたお使いは済んだの?」


「いけね!お母さん、忘れてた。直ぐに行ってくるよ」


山向こうにある集落とはお爺ちゃんの時代から親密に付き合うようになったそうだ。


集落間は綺麗に舗装された街道があり、迷うことなんてあり得ない。


昔この道がまだ無かった頃、オークニお爺ちゃんが道に迷って途方に暮れているとどこからか現れたジンミュート様に助けられ、そのまま様々な知恵を頂いたそうだ。


それが僕達の街の繁栄へと繋がっているんだって。お父さんに教えてもらったんだけどね。


僕も道に迷ったらジンミュート様が……ってこんな綺麗な街道があるんだから迷うわけないか。





「イザナーおじさん、こんにちは」

「やあニントーク君久しぶりだな」


イザナーおじさんはこの集落の長をしている。


イザナーおじさんのご先祖様は僕のご先祖様と兄弟だったんだってね。


「おじさん、これお父さんから預かった手紙だよ」


「ああ、すぐに読むから少し待ってくれるかい?」


「うん、いいよ」


側にあった手頃な高さの木の切り株に腰を下ろす。


そばにある本が目に入ったので手にとると、最近売り出し中の若手作家の小説であった。


「お待たせ…オークニ様はすごい発明家だったんだね。

君の集落からそれが送られて来た時は本当に驚いたものさ」


僕達には当たり前の印刷技術もほんの50年ほど前にオークニお爺ちゃんが発明したそうだ。


「それを見て思ったんだ。わたし達も新しい考え方を採り入れていかないとってね。

君のお父さんからの手紙には君達の集落とここを繋いで大きな街を作らないかってお誘いだ。

この街道沿いの土地も切り開いて人を増やし豊かな街を作りたいって書いてある。


わたし達も是非参加させて欲しい。

ここに認めてあるが、ニントーク君からも伝えてくれるかい」


「いいよ。小さい時オークニお爺ちゃんが言ってたんだ。街が大きくなり、人が増えることで、もっと豊かになる。お前達の世代で成し遂げて欲しいってね。


お父さんもそう考えているんだと思う。

おじさんありがとう。お父さんには必ず伝えるね」


翌週、お父さんとイザナーおじさんの会談で正式に2つの集落は合併することになった。


僕達の集落とイザナーおじさんの集落双方から街道沿いの土地を整地していき、3年後には完全に繋がる計画のようだ。


商店も何軒か建てるし病院や書店も増やしたいってお父さん達、子供みたいにはしゃいでいたっけ。


大きな集落とたくさんの住民。


オークニお爺ちゃんが作ろうとしていた『街』や『国』を僕達が受け継ぎたいと改めて思ったんだ。




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