第5話 再生するって何処から手をつける?

甲板上の騒ぎをよそに、俺は海岸を見ていた。


翌日には噴火は収まったが溶岩はまだまだ赤く蠢いている。


とてもじゃないが上陸出来そうにはない。


海に流れ出した溶岩で海岸線も大きく拡がり、次に噴火を起こしたら、陸地からかなり離れてしまうだろう。


「しようがないな、少し陸地を探ってみるか」


このままここにいてもしようがないと思った俺は、噴火の影響を受けていない場所を探そうと船を移動させることにした。


俺の後ろにはアマーテがついてくる。


初めて見るものばかりで最初は怖がっていたけれど、俺の後ろは安全だと思ったのか、片時も側を離れずについてくるようになったのだ。


コックピットから持ち出したタブレット型の操舵盤を操作して海岸線に沿って西方向へと舳先を向ける。


どうやら溶岩流の被害はそれほど広くはなく、西から北にと時計回りに10キロも進むと被害を全く受けていない場所へと出た。


「この辺り知ってる?」


「知らない」


頭をふるふると振り知らないと伝えるアマーテ。


高速で海を走るのが怖かったのか、腰が引けてるな。


どうやら彼らの生活範囲はものすごく狭くて、貝や魚が採れる僅かな入り江と、小動物が捕れる山裾が主だという。


そこに穴を掘った上に動物の皮を被せたテントのようなものをいくつも建てて、寄り添うように生活しているらしい。


もちろんその集落も、今となっては溶岩の下に埋もれてしまっているのだが。


とにかく今のままでは船内の食料も乏しく、すぐに底をついてしまうため、安全に上陸できる所が必要だった。


さらに北に向けて進むと、船を横付け出来そうな場所を見付けた。


海抜5メートルくらいの崖。甲板からタラップを下ろせばちょうど良いくらいの位置となる。


タブレットで調べると、うまい具合に崖下の水深は問題なさそうなので接岸した。



タラップを伸ばし上陸準備をするとタラップに向かって甲板のあちこちから皆が集まって来た。


だがタラップが完全に陸地に接岸しても誰も降りようとしない。


「ここは見知らぬ土地。危険な動物がいるかもしれないから怖い」


アマーテがボソリと呟くと皆がこくんこくんと頷いている。


タブレットを使って辺りを調べるが、生命の反応は無さそうだ。


大丈夫だよとアマーテを通じて皆に説明するが、怖がったまま動こうとしないな。


というわけで、俺が先頭に立って上陸することに。


俺の裾を掴んでいるのは……アマーテだな。腰が引けてるけど俺についてタラップを進む。


俺とアマーテがタラップを降りて上陸したのを見てグランパが降りてきた。


やっぱり腰は引けてるけどゆっくりとこちらへと向かって来るヨボヨボだからいつも腰は引けてるけど……


その姿を見て甲板で迷っている奴らも次々と上陸して来た。


そして全員が降りると、アマーテを含め皆が俺の前に並んで跪く。


「長よ〜〜」「「「長よ〜〜」」」


えっ何これ?


「皆が貴方様を長と認めているのです」


「長って!えっ、長ってアマーテのお父さんじゃないの?」


「あれはあの集落でのことです。この新しい集落では貴方様が長」


へっ?どういうこと?


「前の場所はわたしの古い祖先が初めて住んだそうです。だからお父さんが長だった。


そしてここは貴方様が初めて来た場所。だから貴方様が長なのです」


そんなわけで俺が長になったみたいだ。


引き受けたからには皆の生活環境を作らねばならない。


皆は何かやるべきことをせがんでいる仔犬の目で俺を見ている。


こいつらを上陸させたら俺は船に戻る予定だったのに、それも出来ないじゃないか!


「とりあえず、住む場所を作りましょうか」


まずは家族毎に別れてもらう。


それで家の大きさと必要な数を決めると、木の枝を使って地面を区画割りしていった。


「はい、ここはあなた達ね。こちらはあなた達。それでここはそこの君達………」


こんな感じで大まかに割り振ると、それぞれが別々に動き出し、テントを建てる準備を始めた。


俺は年寄りや女子供ばかりのグループを手伝う。


アマーテのグループも男手が足りてるようなので、アマーテは俺と一緒に手伝ってくれていた。


「長、穴は掘れますし、枝も拾ってきますが、肝心のテント部分になる動物が見当たりません」


そりゃそうだろな。まだ寒い時期、俺の星と同じなら皮を提供してくれるような動物は冬眠中だろう。


「それじゃ、これを使おう」


船に戻り、予備の帆を持ってくる。


宇宙船だから帆なんてほとんど使わないが、今みたいに海を走ることも稀にある。

そのために帆が備蓄品として置かれていたのだ。


帆布を各家毎に渡してそれぞれが建てた骨組みに掛けて紐で括っていく。


その作業を見ていた数人の男が俺の真似をしてまだ張れていない骨組みに次々と張っていってくれた。


お陰で、なんとか夜になる前には作業が終わりそうだな。






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