第6話 時空が変わる

赤い服の女は文章がいっぱいになると、それだけ疑い深くなる。

枕の下、ベッドの下、ポケットの中の文章が寝ている間に無くなり、周りの人が盗ったのではないかと疑う。

子供時代のおぼろげな宗教観を小論文にして書くがそれを誰にも盗られないように、刑務所に入る人が普通、隠す場所に私も隠しておいた。

トイレの中でも、どこでも文章をつづっていたら「自慰ですか?」と言われ腹が立って「お前何様?」とキレて限りなく怒りの涙を流した。

子供時代のおぼろげな宗教観

子供時代、神社で手をぱちんとたたこう、ぱちんとたたこうと思ったがぱちんとたたくことが出来ず、

あるおじさんに手と手の間に空気を入れてそれをつぶすようにたたくんだよ、と

教えられていたらやっとぱちんとたたけた。

クリスマスイブに雪がほとんどなくどうやってサンタさんはトナカイに乗ってそりで来るんだろうと

不思議な思いがした。

小学校時代、同級生がじょやの鐘を鳴らしに行くんだと言っていて並んで鳴らすらしいのだが

その音を聴こうと窓を開け黙って聴いていたら遠くのほうでその音が鳴り響いていた。

その文章も無くなっていて、ここは恐ろしい場所だと思った。

日記をつけていたら無くされ、最終的に腕に書く。

日記を無くされたことにより、何日、何曜日が分かっていたのが分からなくなり、

ついに何年かも分からなくなり、誕生日の近くになった時、数えでも三十三歳、満でも三十三歳、

ただ三十三歳とだけ腕に書いておく。

今が実年齢三十二歳か三十三歳かで時空が変わる。

もし三十二歳なら世界各国で省エネを推進していて、電力のかからない国を目指している。

その代わり経済が廃れて建物が古く汚く夜は街が暗くなっている。

もし三十三歳なら省エネせず、地球温暖化になっているが、経済が発展していて夜にはネオンが光り輝いている。

どちらの時空がいいのか分からないが、この二つの時空では地球の寿命が何百年と違くなるのであろう。

それでも会いたい人に会えれば、それで時空なんてどうでもいいのが赤い服の女だった。

月見に一杯と言って、人間は地球で生命を終わらせるのが良いと思っていた。

赤い服の女の父が絶望のふちでみつけた玉川温泉近くの水でこれを飲んで生きようと決めた水を、

赤い服の女が地球最後の日に立ち会うのなら、大切な人たちとその水を飲んで

地球滅亡の時死んでいきたいと思っていた。

ところが人間という生物はどこまでも生き続けたい生き物なのだと思い直し、

昔と変わり宇宙開発をしたらいいと思うようになったのである。

グラン・トリノのおじいさんと言ったらグラン・トリノというアメ車でもなく、

クリント・イーストウッドの映画『グラン・トリノ』でもなく

グランだからグランドファザーのおじいさん、トリだから焼き鳥屋の、

つまり焼鳥屋のおじいさんの話しだと思っていたとぼけた女の人がいる。

本当はグラン・トリノのおじいさんとは映画の『グラン・トリノ』のおじいさんのように

頑固で年の離れた友人を持っているおじいさんで、その人の下で、

仲違いをしていた赤い服の女ととある先輩でアルバイトをしていた。

天文学者のグラン・トリノのおじいさんの天文台の場所を教えたため、

未来は大変なことになるのだがそれを止めようと三人で必死に時空を調節していた。

その自分の声を聞いて「あ、別の時空の私と会ってしまう。」と怖くなった。

外の雪が雪の結晶ではなく紙ふぶきのように見えて、

赤い服の女がロシアのマトリョーシカの一番奥の人形の中に鉱石と白い紙を入れたのが

原因だろうと思って母にマトリョーシカごと焼いてもらった。

ずいぶんのちに外を見ると雪の結晶も見えるようになっていた。

外に猫の雪像を作って雪の上にIt is a cat.と書いた後、

思い直してIt is snow.と書き直した。

仲違いした先輩とは別の先輩にお互い長生きできるか心配になって私は宇野千代さんの小論文を、

その先輩は自分と自分の恋愛相手を題材にした金さん銀さんの論文を書いた。

その先輩は同級生に「お前本当に金さん銀さんの論文を書くのか?よく書けるなぁ。あの人たちのんびり

しているように見えるけど激動の時代を過ごしてきた人たちだよ。」と驚かれた。

先輩に赤い服の女がそのうち会おうと言われたが「今私不細工だからなぁ。」と言ったら

「僕はかっこよくなりました。」と言われた。

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