グランドマスター 『ゲームの力で成り上がれ!』

エスケー

プロローグ

 ある日、この世界に突如として顕現した『ドア』それは木製、鉄製、石造り、あるいは光そのもので構成されたものなど、形状も材質も大きさも千差万別で、都市の一角に静かに佇むものもあれば、荒野に異様な存在感を放つものもあった。だが、その多様性の裏に、ただ一つだけ揺るがぬ共通項がある。


 『ドア』の向こう側には、我々の知る世界とは根本から法則の異なる、別なる世界が広がっているという事実。魔物が多くいる世界中ダンジョンや未知の世界文化が広がっている新たな惑星、重力の向きすら一定ではない空間、文明が神話と融合した領域、あるいは終焉の静寂に支配された荒廃世界、様々である。


『ドア』は何の前触れもなく現れ、理由も目的も語らない。ただ静かに、こちら側とあちら側を隔てる境界として存在し続ける事である。


人類はやがて、『ドア』を通じてこちらへ侵出してくる異界の存在を総称して『魔物』と呼ぶようになった。


 それらは理性を持たぬ獣じみた個体から、明確な意思と戦略を携えた存在に至るまで多岐にわたり、その多様性は人類の生物学的常識を容易く逸脱していた。


 さらに厄介なのは、『ドア』を放置した場合に発生する“ブレイク”現象である。


 臨界を迎えた『ドア』は構造的均衡を失い、境界そのものが崩壊する。すると異界との接続は恒常化し、制御不能の裂け目へと変貌する。そこから溢れ出すのは、単体の魔物ではない。軍勢であり、生態系であり、時に世界そのものの断片である。


 都市は一夜にして異界の環境へと書き換えられ、重力や大気組成すら変質する事例も確認された。だが、忘れてはならない事実がある。


 『ドア』の向こうが、必ずしも未開の魔境であるとは限らないということだ。

 高度な文明を築き、言語と法を持ち、交渉という概念を理解する種族が存在する可能性も否定できない。


 それでも、ブレイクは等しく脅威である。


人類は『ドア』に対する有効な対処法を持たなかった。


 解析は進まず、封鎖も破壊も叶わず、ただ境界の向こうから押し寄せる異界の脅威に蹂躙されるのみ。軍事力は通用せず、科学は理を掴みきれない。文明は徐々に疲弊し、世界は静かに絶望へと傾いていった。


 だが、その深淵の只中に、微かな兆しが灯る。


 ある夜、地球全土を包み込むかのように、淡くも神秘的な光の輪が天穹に浮かび上がった。それは人工衛星でも自然現象でもない。理論では説明不能の、荘厳なる現象だった。


 そしてその光が消えた後、人類の中に“変異”が確認される。


 肉体に刻まれた紋様。

 魂と共鳴する異能。

 常識を超越した力の顕現。


 彼らはやがて『紋章者ハンター』と呼ばれるようになる。


 それは選ばれし者の証か、あるいは世界そのものが生み出した対抗機構か。理由は未だ解明されていない。だが確かなことがある。


 『紋章者ハンター』だけが『魔物』と真正面から渡り合う力を持っていた。


 誰もが憧憬し、同時に畏怖した存在がいる。


 混沌に沈みかけた社会をいち早く束ね上げ、崩壊寸前であった世界秩序を再構築した者たち。


 『グランドマスター』


 その称号を冠する者は、世界にわずか4名のみ。数ではない。到達の困難さが、その希少を物語る。


 彼らは単なる最強ではない。戦闘能力は言うに及ばず、知略、統率、精神的支柱としての資質あらゆる面において極致へ至った存在。『ドア』に干渉し、『ブレイク』を単独で鎮圧し、時に異界文明とすら対等に交渉する、人類の切り札。


 その名は神話のごとく語られ、伝説のごとく畏れられる。子どもは夢に描き、戦士は到達不能の頂として仰ぎ見る。


 そしてこれは、無力と嘲られ、未熟と退けられながらも、一歩ずつ刃を研ぎ、血と汗を代償に力を積み上げ、仲間との絆を礎にして高みへと挑む、ひとりの少年の物語である。


♢♢♢


 俺の名前は『 神楽かぐら天城あまぎ』現在9歳の男であり、自称喧嘩最強の男だ。そんな俺には天使のような四人の彼女がいた。


 一人目隣にいる金髪ギャル、星野ほしの 瑞希みずき明るく元気な性格で、何事にも遠慮が無く、正義感が強い。その上、見た目も派手で目立つ存在だ。


 二人目は茶髪のツインテールを腰まで伸ばした少女『天羽 苺あもう いちご』彼女はどこからどう見ても完璧だった。ふわりと揺れる腰まで伸びたツインテール、ぱっちりとした瞳、それに加えて、どこか親しみやすい笑顔。胸がとにかく大きい、いや、それを超えて、目立つ。


 三人目『姫乃ひめの かすみ

背中まで伸びる黒髪は艶やかに整えられ、清らかな立ち居振る舞いには凛とした品が漂う。超がつくほどのお嬢様だ。


 そして、最後に四人目『氷室ひむろ すい』美しい水色の髪に青い目、スラリとした体型。


 こんな美少女を常に引き連れている俺は、当然のように嫉妬の視線を向けられる。


 だが、そんなもの慣れっこだ。向かってくる連中は、すべて返り討ちにしてきた。ちなみにこの世界では『一夫多妻』も『一妻多夫』も認めらてるし同性婚も認められている。多様な社会だ。故に俺が四人の彼女を持つのは不思議では無いのだ。


 今日もまた、因縁をつけてきた男たちを倒したところだった。俺には紋章がある。ただし、今はまだ覚醒していない。存在しているのは確かだが、俺の覚醒は人よりも遅いらしい。


 だからこそ、俺は紋章の力を借りることなく、常に敵を打ち破ってきた。


「雑魚が!」


 啖呵を切りつつも、俺の身体は傷だらけだった。息も荒い。だが倒れるわけにはいかない。

 彼女達の前だ情けない姿を見せる訳には行かないからな。


「さすがぁ〜♡ 私の恋人はやっぱり強くないとね!私を守れるくらいには、ね?」


 苺が瞳を輝かせて言う。彼女は強い男が好きだった。


「……美味い」


 喧嘩に興味無さそうな水ちゃんは、俺が作ったクッキーを頬張っている。俺は意外にも料理が得意で、まぁ、親が居ないからだけど。よく彼女に焼き菓子を渡す。水は食べることが好きで、ポケットにはいつも甘いものを忍ばせているのだ。


「正々堂々と仰っておきながら、最初から隠していた蛇を解き放つなんて。はしたないですけれど……嫌いではありませんわ。」


 かすみ恍惚な笑みを浮かべた。喧嘩は下品だと嫌う彼女だが、好意を寄せる相手にはとことん甘い。


「やば〜♡ さっすが!そういう悪い男とか、強い男ってさぁ……だい〜すきなんだけど?」


 瑞希はにやりと笑った。彼女は悪い男が好きだった。血に塗れた俺の姿を見ても眉一つ動かさず、むしろ愉快そうに拍手してみせる。


 俺は幸せだった。

 苺が笑って、水がクッキーを齧り、霞が小言を言いながらも寄り添ってくれて、瑞希が悪戯っぽく笑っている。そんな四人の彼女が、俺の隣にいてくれる。こんな時間が大好きだった。


 いつまでも続けばいいな、と俺はずっと思っていた。



 ある日、俺は引っ越すことになった。

 行き先は遠い場所で、もう簡単には戻れない距離だった。見送りに来てくれたみんなは泣いていた。俺だって本当は泣きたかった。

 けれど、弱いところを見せるわけにはいかない。


「寂しい……」


 水ちゃんが小さな体を俺にぎゅっと預ける。思わず、俺はその頭をそっと撫でた。


「大丈夫だ、すぐまた会える」

「馬鹿馬鹿!なんで引っ越すのよ!」


 瑞希が俺の肩を叩いた、その目は泣いている。


「ごめん……」

「私、恋人作るからね! いいんだよね!  引越すのやめるなら許すけど!」


 泣きながら叫ぶ瑞希に、思わず目頭が熱くなる。


「おやめなさない、瑞希さん。天城さん、絶対に悪い女には引っかからないでくださいね。貴方の価値が下がりますから」


 霞が少しあざとく笑うように口をはさむ。けれど分かる彼女も寂しがってることに。


「もちろんだよ。俺は見る目あるからな」


 俺は苺の方に目を向けた、ずっとスカートの丈を掴んでいた。


「苺……?」

「嘘つき……私の傍に居るって言ったのに!」

「居るよ!ずっと居るつもりだ。再開が出来たら絶対にお前の事を奪いに行くから」

「私に彼氏がいても?」

「あぁ……」

「私の夫がいても?」

「もちろん」

「最低……だけど、待ってる。あまちゃん!」


 苺は俺に抱きついてキスをした。


「あぁ、ずるい!」

「あらあら……はしたないけど……羨ましい」

「苺……ずる」

「早い者勝ちだもん!」


 と、俺の前で騒ぐ可愛い彼女達だった、だけど俺は知らないこの先のこと地獄が待っているなんて。


♢♢♢


親父と母さんは離婚した。

それと同時に、俺の名前も変わった。


『夜桜 天城』


ずっと母さんの姓を名乗っていた。

親父が反社だったせいで、余計な因縁に巻き込まれないようにと。


だが、親父に引き取られた今、俺は親父と同じ名を背負うことになった。


夜桜 天城。


その名前は、守るために捨てられたはずのもの。そして今は俺が背負うものだ。







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