ディグ・アップ・トレジャー

音翔

第1話

 「声が聞こえる漫画?」


 とある私立高校。3階教室。

 男女が向かい合って昼食をとっていた。


 秋冷の候。

 窓際の席に座る2人のすぐ横には、黄蘗色きはだいろに染まりきったイチョウの木が、グラウンドに沿って植え連なっている。


 この学校の制服は、ジャケットの下に着る、セーターやカーディガンのみ唯一指定がなく、それ以外は、紺単色で極平凡だ。


 曲げわっぱの弁当箱に、数豊富で彩り良いおかず。

 ややオーバーサイズのベージュカーディガンで、萌え袖の男子生徒はひろ


 対して、昼食はカレーパン1個。

 グレーのセーターで、伸びきった袖から指先が覗いている女子生徒が漣華れんげ


 2人は高校入学時に出会ったので、付き合いは2年目になる。親友だ。


 話は冒頭に戻り。

 疑問符のつく声をあげたのは、大だった。


 「あ、実際に声が聞こえるわけじゃなくて」

 「それくらい絵に迫力があるって言うか、踊ってる様な……」


 「まぁた君は詩的な表現を……」


 呆れ顔の大は、豆腐と鶏肉のハンバーグを一口大に切り取り口へ運ぶ。大の特製、とろみのついた生姜入り和風ソースがかかっていて、白だしベースの優しい味わいに仕上がっている。


 「ネット検索は?」


 「それが、上手くいかなくて……」


 漣華の言う、「声が聞こえる漫画」とは、先日、家族の付き添いで、本の立ち読みが可能なリサイクルショップを訪れた際に読んだ漫画だそうだ。


 しかし、作品名や作家名どころか、あらすじでさえ記憶していない。


 というのも、暇つぶしの軽い気持ちで、漫画を適当に手に取り、パラパラと捲っては棚に戻してを繰り返していた時に見た、「見開きの1ページ」のみが、強烈に記憶に残っているという。


 半思考停止的にその行為を繰り返していた為、後になって、具体的には帰宅した後にジワジワと、その漫画への関心が湧いてきてしまった。


 しかし、その漫画を読もうにも、そのリサイクルショップは気楽に行ける距離でない。


 ネット検索も思うような結果を出せずにいた。


 「大くんは漫画よく読むでしょ?」


 「いや、俺が好きなの少女漫画だし」

 「どんなシーンだったのか聞かない限りは、力になれるか分かんないよ?」


 そこで、普段から好んで漫画を読んでいる大に助力を乞おうという結論に至ったのだ。


 「女の子が歌ってるの。で、音符がたくさん書いてあった」


 「音楽系かぁ……」

 「他には?」


 「ゴスロリ着てたよ」


 「絵柄の特徴は?」




 その後も「見開きの1ページ」の情報をできるだけ挙げていったが、検索エンジンを利用しても、これといったものは見つからず。

 昼休みの終わりを告げるチャイムがなった。


 「よし。漣華ちゃん。放課後空いてる?」


 「今日?空いてるよ」


 「一緒に本屋巡りしよっか」

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